南極大陸観測所 ~凍結保存解除~
あー会話が無いんじゃ~
「おい、ドアが開かん。ハンマー持ってこい」
ドリルじゃなくてハンマーを選択する辺り、バンはよっぽど力業が好きな人間らしい。しかも、20キロの重量を持つハンマーを片手でブン回して、ドアごと氷を砕き飛ばした。これ、建物大丈夫かと少なからず思ってしまった迅だった。
さて、長期間に渡って封鎖されていたためか、機能を失っているためか、ほとんどが氷漬けになっていた。
ここからどうやって物資を持ち出すのか、という疑問に関して、こういう解答だった。
「熱伝導用のエンジンナイフを使う。特務隊装備のバックパックに常設されている奴だ。結構使うから、武器類は腰にホルダーごと付けとけ」
とのこと。武器用のホルダーには、武器を凝縮保存しているカプセルがあり、それを起動して使えるようにする。ホルダーには10個のカプセルを収納できる。
例えば、サリーは銃撃が得意なため、ライフル、ハンドガン、ランチャーなどが多い。近接用にナイフも二本ほどある。
対してバンはナイフや剣、ナックルグローブなどが多い。一応襲撃用にハンドガンがあるようだ。
迅は、結局色々な武器を詰めてきた。ナイフとハンドガンそれぞれ二本、剣一本、槍一本、ライフル一本、ナックルグローブを一セットの合計九個。最後の一個を決めかねていたが、エンジンナイフという重要アイテムがあった。迅はこれを最後の一個としてカプセルを収納した。
さてここからが問題だ。中には貴重な物資もあるので、丁寧に発掘していかなければならない。スーツの体温維持機能である程度寒さは無いものの、それでも多少感じるため、作業は慎重に行わなければ命取りとなる。主にトレーニング量が三倍にされるので辛い。
バンとサリーは目的物資の回収、迅は探索ということになる。目的エリアから外れなければ問題ないらしい。ヘットギアに付いているマイクで、遠くにいても会話できるので、離れても問題はない。
第一棟、第二棟が探索対象なので、それ以外に行くことにするが、あまり離れると疲れるので、近場にする。
休館に足を踏み入れた迅はつい息を止めた。氷柱が奇跡のように芸術的に並んでいた。
科学技術の発達が生んだ都市化によって、自然に触れることは
少なかったが、人の力を己の輝きに利用する自然の意思をこの目で見て、心打たれた。これを見ただけで、この探索は迅にとっても有意義だったと言える。
さて、ヘットギアのライトで前方を照らしながら奥へ行ってみる。すると、一番奥に管理室があった。
エンジンナイフで氷を溶かして無理矢理こじ開けると、そこには巨大カプセルがあった。
制御パネルがあったが、動いている。この極寒で、まだ動いている装置があるなんて、と驚きつつ、動かしてみると……。
『凍結保管システムの、解除コードを確認。培養液の破棄及び、試験体の起動を開始、完了。カプセルを解放します』
妙なアナウンスと共にカプセルから煙が飛び出る。かなりの高熱なので、恐らく培養液とやらを蒸発させたのだ。
そして、カプセルが開かれると、そこにいたのは……、腕に機械を着けた、着ぐるみだった。
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