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帰還と開戦と

 「さて、帰るか」

「うす。ていうか隊長、大丈夫なんですか?その腕」

バンは先程の激しい動きで腕が折れた。ので運転はサリーと迅となる。


 「心配いらん。軍にはメディカルカプセルがある。しかもクラウン自ら改良した最新版だ。一度入るとチェック上の問題が無くなるまで内からも中からも開けられないし、破壊も不可能な代物だ」

「それってリスクの方が高いんじゃ」

「回復力は保証付きだ。何しろパーツさえあれば、動かなかった脚が動かせるようになったんだからな。これが所謂、軍には障害者がいませんよ、って奴のトリックだ」

なるほどわからん。迅にはわからん。

「学生から上がったばかりの迅にはイマイチ難しかったかな。まぁ、どんな傷でも大体治せるってことさね」


 帰り道、基地が近づいて来たからか、気温は徐々に上がってきた。

「ふぅ、やっぱり暖かいなぁ基地周辺は」

「環境に悪い設備ばっかりだしねぇ」

「それって良いんですかね」

基地に入ると、クラウンが待っていた。


 「お帰り諸君。さぁ着ぐるみとやらを出して貰おうか」

「そう急かすなクラウン。その前に荷物を全て下ろしてからな」

荷物を全て出して、特務隊の工房に着ぐるみを寝かせる。クラウンが早速弄り始めた。


 「フムフム……ここがこう……で、繋がって……これが、動く……そこで回って……回路が……ここまで繋がって…」


 一通りの解析が終了したところで、戻ってきたクラウンが……

「あぁ。コイツは面白いよ。着ぐるみ自体は装備のようだが、どうやらあらゆる形状に分子レベルから変えられるらしい。ここの腕の装置を……こう」

そういって装置のボタンを押すと、狸になった。今度は着ぐるみではなく真面目に獣の狸に。


 「おぉ。こんなの、地球軍の装備には無いよな。開発者はすげぇな」

「南極に保存されたということは何か意味があるはずだ。開発者は江原光介で間違いはないはずだ。ここに、江原研究会のモルモットに付けられる腕輪があるからね」

「ていうか、装備ってことは中に人がいるってことですか」


 「その通り。人っていうか、ブレインロイドだけどね。しっかり人の形で作られている。皮膚からなにまで人間そのままだが……残念ながら、中身はれっきとしたロボットだね」

「クラウン。コイツはもしかして旧式じゃないか?」

「正解。最旧式だよ。初期型と言っても間違いない。誰にも構造が分からなくて、江原以外には作れない物だと言われているし、こんなところでお目にかかれるとは……」


 江原の発明として、ブレインロイド最旧式というものがある。これは所謂、人工知能が組まれたロボットである。ただ人工知能が組まれただけでなく、見た目や動きまでが人間そのものであり、一人の感情も持つ。生殖以外なら、食事も睡眠も意味のある行為としてできるのだ。

 しかし究極たる、ブレインロイド最旧式はどの開発者にも再現できなかった。それができたのは、やはり江原光介だったのだ。しかし誰にも解析ができなければ何の役にも立たない。そこで所謂新型のブレインロイドが作られた。江原のそれには劣るが、中々出来の良いロボットだったので、それが一般的に普及した。最旧式は一般公開はされなかったので、新型の方が表に出たと言う。おそらく軍の中にも最旧式を知っている人間は少ないのではないだろうか。


 「コイツはそそられるなぁ。設計図からは分からなかったけど、実物を見ると違うなぁ。よーし早速解析ーー」


ドォォォン


突如爆発が起こった。かなり強い震動がした。


 「隊長! 地球軍の一部が反乱を始めたそうです!」

「反乱? おいどういうことだ!」

「分かりません、でも設備がどんどん破壊されています!」


すると、報告に来た軍人が流れ弾に当たったようで、倒れてしまった。


 「どうやらマジのようだね……。ソイツはカプセルに突っ込んどきな!」

「迅、お前はここに……」

「バン。ようやく見つけたぞ。やはり工房にいたか」


後ろに現れたのは第一部隊隊長だった。


 「まさかお前が首謀者とはな。何が目的だ」

「首謀者ではないさ。この軍に反乱をしているのは目的も見ている物も違う部隊だよ。それぞれが同調し合ってグループごとに反乱を起こした。それだけさ」

「充分複雑だよど阿呆。反乱を起こして何になる? 敵に集中攻撃の隙を与えるだけだぞ?」

「その敵に同調した者もいるのさ。それに軍の内部のことまでは把握できまいよ」


第一部隊隊長、敵は持っている銃をバンに向ける。そして引き金を引こうとしてーー


「隊長、危ない!」

バンなら防げた。自衛の術はあると分かっていた。しかし、銃を見た瞬間、身体は動いていた。


 引き金を引かれた銃から連射された弾丸は迅を蜂の巣にしてしまった。左目も撃ち抜かれた。


「迅! おい! 不味い、脳までやられたか……」

「グフッ」


最早瀕死である。バンは即座にハンドガンを取り出して敵の銃を撃って弾いた。

「グッ、貴様!」

バンはその隙にハンドガンを棄てて、迅を担いで走り出して、メディカルカプセルの元へ向かった。


 バンは迅をカプセルに放り込んで言い放つ。

「良いか迅。お前がこれから何年後に目覚めるか分からないが、目覚めたら必ず俺達のところへ戻って来い。そして、必ず共に戦うぞ!」

「追い付いたぞ……。させるものか。いくらメディカルカプセルでも、銃弾には耐えられまい。それに貴様腕が折れているようだが?」

「生憎、コイツは一般的なものとは耐久性が違うんでなぁ。それにお前ごとき腕一本、いや腕が無くても倒せらぁ!」


 迅が薄れ行く意識の中で聞いた言葉はここで途切れている。

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