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正悪大戦  作者: 鶴田亀吉
3/5

第二話 正義乙女と腹黒道化のホームルーム

難産でした

多分次も遅れそう。

大学生は忙しい。



『なぁ、俺はこの前お前になんて言ったけ?』

『はい!ものは壊すな!考えて動け!と先輩はおっしゃっておりました!』

『ほう、それで午前中の間だけでビルを5つも崩壊させたのは、どういう理由だ?』

『はい!悪を征伐するには致し方ないかと思いまして、仕方なく!』

『成程なぁ~そりゃあしょうがねぇなぁ‥‥とでも思うか!!この馬鹿野郎がああああああ!!!』

『いぎゃあああああああああああああああああ!!!!!』











菅原学園高等部校舎・1-4教室。

朝から先輩方のありがたいお説教という名の鉄拳制裁を顔面に喰らい、顔面が風船のように膨れていたが、クラリスはいつもと変わらず授業に出ていた。


「だ、大丈夫ですか、クラリスさん。」

「むぅ、大丈夫です!これは先輩方の愛の鉄拳の証!未熟な私は甘んじて受け入れるべきなのです!次こそは必ず建物を壊さずに犯人を捕まえ、先輩の愛に報うのです!」

(((((また同じこと言ってる・・・・・)))))


担任の心配する声に元気に溌溂に返事をするクラリス。

このクラスにとって最早この状況は見慣れた光景だった。

彼女が「風紀委員会」に所属してからの検挙数はこの三か月で確かに増えた。しかしながらそれ以上に建物への被害は検挙数以上に途轍もなくに増えた。怪我人は彼女自身が犯人を追いつつ、ビルを粉砕しつつ逃げ遅れた者を救出しているため皆無だが。山になった請求書に「風紀委員会」のメンバーが頭を抱えたのは聞かずとも分かることだろう。

新しくクラスメイトになった当初は、その可憐な姿とに淡い妄想を抱くクラスメイトが続出したが、どんどん積み重なっていくそんな逸話に淡い妄想は粉々に砕け散る結果となった。


(またなんか壊したのかよ、これで何個目だよ。)

(ビル五件だってよ。これで今月12件目だな。)

(もはや被害がゴジラ並みだな。)

「ん?何故こちらをみているのだ?・・・・は!もしや私に相談するような困ったことが・・・・」

「「いえ!一切!微塵もございません!!!」」

「?あ、ああ。それならよいが。」

 

このクラスにおいて最早彼女は危険生物と同じように近づくながクラスメイトの基本スタンスとであり、幸か不幸か、性格的に他人を疑わない彼女はそのことには気が付いてはいない様子であった。例外を除いては。


「はは!相変わらず精力的だね。クラリスさんは。」

「無論だ!日々、「悪」の撲滅の為に行動してこそ!「風紀委員会」のメンバーといえるのだぞ!坂下!」


唯一の例外、坂下 昇。どこにでもいそうな極普通な容姿をした高校生。成績・運動神経等全てが平凡な、ある意味この学園においては強烈な個性を持つ彼は彼女にも何故だが普通に話し掛ける。


ただ、時折激薬並みの毒舌が口から洩れるが


「でも、建物壊しまくって人に迷惑掛けてるクラリスさんも「悪」だよね。」

「・・・・・・・・・・・・・・え。」

(((((((((言っちゃったあああああああああああ))))))


その、あまりに「正論だけど、絶対言えない」にど真ん中すぎる返事に教室の空気は瞬間で固まった。クラスメイト達や担任はクラリスの反応を気にして、クラリスは初めて気づいた自分の「悪」行に、昇は自分の吐いた毒によって固まったこのクラスの空気に理解が追い付かずに、彼らの行動はまるで別々のことを考えていながら、シンクロのように息の合っていた。


固まった空気も、やがては動きだすものだ。最初に動いたのはクラリスだった。彼女は徐に上着から愛用の銃を取り出し、自身の脳天に突き付けた。彼女の行動にクラスメイト、唯一の例外である昇でさえ顔ムンクの顔のようにして同じことを思ったのだ。『『やばい、(俺・私)達死ぬ』』と。


彼女の持っているのは9m拳銃型鉛筆削り式文具武装「クラビット」、学者が自身の「学力」を効率良く使用するために作られた「文具武装ペン・アーム」の中でも多くの国と地域で使用されている傑作文具武装ペン・アーム。この拳銃は特殊金属性の弾丸を装填する事で学力を充填、放出する事が可能。そしてクラスメイト達はクラリスが自身の「学力」を充填している風景を何度も見ていた。そう、あの拳銃の中には彼女の「学力」が入っているのだ。ビルをも崩壊させるヤバい能力が。


つまり。


今ここで彼女が拳銃自殺をした場合。


辺りの彼らはどうなるのだろう?


簡単だ。


肉片すら残さずに塵となる。



「・・・・死んで償います。」

「「「「「「やめろぉ!」」」」」」



彼等のHRホームルームは、命を掛けた自殺者確保から始まったのだった。













所変わって地下二階、第一実技室。

何とかクラリスから拳銃を取り上げ、命を長らえた1-4のメンバーは実技の授業の為にこの部屋に来ていた。

少しばかり疲れた顔をしながらも、彼らの顔にはやる気が満ちていて、授業に対する本気度が伺える。


彼等の中にはまだこの島に来て3年未満の者もいれば。3年以上もこの島で暮らしている者と色々と混じっている。確かに三年間で単位を全て取れれば「学園」に残る必要は法律的には全く無い。しかしながら多くの生徒が卒業資格を所得したとしても更に2年間の在籍延長が可能な制度、又はそれ以上の延長を申請して長期間在籍を希望する。

なぜならば、長期間在籍するほどに将来の道が開けるからだ。7・8年在籍した卒業生の多くが大企業や行政機関等に好待遇で就職でき、将来を約束されたと同じ意味となる。そのため、多くの物が長期間の在籍を目標に日々、努力している。しかしその将来の道は恐ろしく狭い道だ。二年以上の在籍には学園側に「在籍したことによって生じる何らかのメリット」を示す必要である。ここでのメリットとは「ほかには存在しない特異的な「学力」」である。そういったメリットを生み出し、7・8年在籍できる生徒はごく一部の人間だけなのが現実だ。


「よし、それでは、授業を始める。其々「課題テーマ」ごとに分かれて「教本技能テキストアーツの練習を始めろ。」


実技担当の教師の合図の元、全員が「課題テーマ」ごとに分かれ、「教本技能テキストアーツを放ち始めた。

「学力因子」には人それぞれに異なる適正、「課題テーマ」が存在する。自身の「課題テーマ」を把握したら、「課題テーマ」ごとに存在する基本的な「学力」を学ぶ。これらを教科書通りという意味を込めて「教本技能テキストアーツ」と呼び、殆どの「学者」が使用できる。そのあとさらに訓練を重ね各々の固有の能力を作ったりする、これを自らの適正、「課題テーマ」に対して訓練・研究を行い身に付ける技能であることから「研究技能リサーチアーツ」と呼ぶ。

この「研究技能リサーチアーツ」を身に付けることは「学園」への長期間在籍の前提条件とされ、学生の多くが「研究技能リサーチアーツ」の開発に全力を注いでいる。


「いいか!全員が「研究技能リサーチアーツ」の開発を目標としているだろう。その為にも「教本技能テキストアーツ」を疎かにしてはならん!「学力」は自身が蓄積させた知識を現実への出力装置である課題テーマを用いて現実に干渉するものだ。その一連の行為に必要なのは想像力!干渉したことにより現実がどの様に変化するのかを把握してそれを明確に脳内に想像するのがとても重要なのだ。教本技能テキストアーツは比較的想像のしやすい技能であり。想像力を身に付けるのに最適だ!さらに!同じ「課題テーマ」の「教本技能テキストアーツでも人によって若干のズレが存在する!このずれこそ「研究技能リサーチアーツ」の開発のカギとなる要素だ。さあ!鍛え、見つけるのだ!」


教師の話をバックサウンドに各々は「課題テーマ」ごとの「教本技能テキストアーツの練習に精を出す。

一方クラリスはと言うと。


「ヴヴ!ヴヴ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!ヴヴ!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!(あぁ!離せ!離してくれええええ!私みたいなウジ虫以下の存在にか生きる意味ないんだ!頼む!死なせてくれええええ!)」


雁字搦めにされ、椅子に固定されていた。

拳銃を奪われた後も自殺を図ろうとする彼女を身の安全からクラス総出でなんとか雁字搦めにするのに成功。教室に放置するのも危ないような気がした彼らは、彼女を縛り付けた椅子ごと教室から持ってきたのだ。

縛られ、口には猿轡をされながらもジタバタと抵抗し、奇声を挙げ続けるクラリスにクラスメイト達は気が散り、授業に集中できない。


(おい、誰か黙らせろよ)

(いやだよ、そう言うお前が行け!)

(お前、俺に死ねってか!)

(い、いや~死にはしないんじゃ、いや死ぬか?)


授業に集中したいクラスメイト達の小声や無言の擦り付けが始まり、やがてその全ての矛先は元凶である昇へ向いた。

突き刺さる視線に溜息を吐きだしつつも、少なからずも責任を感じてるのか、クラリスの方に近づいていき彼女の猿轡を外した。


「ぷは、さ、坂下。わ、私はなんてことを・・・、もう死んで詫びるしか。」

「大丈夫、大丈夫。確かに「悪」いことしちゃったかもしれないけど、「正」しいこともいっぱいしたんでしょ。」

「・・・・うん」

「だったらこれから気を付けて、「正」しいことを一つでも多くすれば挽回できるはずさ。」

「・・・・そうなのか?」

「うん。出来る。」

「・・・・・そうだ。そうだな!これから挽回すればいいんだ!よし!やるぞ~!やってやるんだ~!!!!」


復活したクラリスは自身を縛る縄を強引に引き千切り、練習をする気だろう、自身の「課題テーマ」の練習場所に一目散に向かっていった。途中でクラスメイトを轢いたりと、いつもの彼女らしく他人を巻き込みつつ己を路を爆走し始めた。


「・・・・キモ」


そんな背中に向けて放たれた昇の小さな言葉は誰にも聞かれることも無く、風の中に消えていった。






































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