第一話 正義乙女の入場
「学力」。古来から魔術や超能力等と呼ばれていたこれが、「学力」と呼ばれるようになるのは20世紀前半になってからだ。科学の発展の著しいこの時代、列強諸国は植民地の拡大に尽力し、それと並行してこの能力の研究に力を注いだ。科学の発展により解明出来ない謎が無くなっていく中、最後に残った大きな謎に科学者達は子供のような興奮を、国々の上層部は兵器転用への大きな期待を持ってこの解明に双方は力をいれた。
それぞれの異なる思想が混ざり合い、研究は異様ともいえる速度で進んだ。その結果、この能力は脳内に蓄積された知識を脳内に存在する「学力因子」と反応させることにより、因子の適正と合致する知識に基づいた超常現象をするとわかった。その発見により知識、学力を力に変える能力「学力」と名付けられた。
「学力」の研究はどんどん進み、「学力」の能力者、通称「学者」の数は増加の一途を辿り。国々の思想どうり、「学力」の兵器転用は現実的になっていった。
初めて、「学者」が戦場に現れたのは第二次世界大戦の時だ。「学者」達は身に付けた「学力」を用いて各地の戦場に血の雨を降らせていった。その被害の規模は計り知れず、広島・長崎に原子爆弾投下による死傷者数が第二次世界大戦の各戦闘域ごとの死傷者ランキングで5位に終わり、他上位の4つの戦場はすべて「学者」によって行われている。
つまり核兵器よりも悲惨な状況が「学者」によって4つも作られたのだ。
大戦後、この状況に世界各国は「学力」を使用する能力者通称「学者」の保護を行うとして管理を開始した。世界は理解したのだ、我々は開けてはいけない禁断の箱を開けてしまっただと。
太平洋沖の日本本土から400キロ。強大なギガフロートが幾重にも連結し、強大なビル群がいくつも建てられ、縦にも横にも強大な人工島。
ここは国立菅原学園。世界各国の保護管理の一環として定められた制度の一つとして、国々は「学者」の保護管理及び「学力」の研究のため、国ごとに建造された「学園」の一つだ。
学力の発現は人によって違い、1歳から発現する者もいれば7,80代で発現す者もいる。発現したものは誰であろうと3年間の学園に在籍して一定数の単位を取る必要があり、国際法でも定まっていることだ。
そんな老若男女が在籍する特殊な場所だとしても、ここは学校だ。朝くらいは普通の学校みたいな清々しさの漂う場所であっていいはずなのに、とてもそんな雰囲気は感じられない場所がとある一角に生まれていた。
「また「焔男の仕業かよ。これで何件目だ。」
「今月に入って5件目ですね。すべての犯行を含めると10件になります。」
「くそ野郎が、こんなに殺して何が楽しんだ。」
悪態を吐く二人の学生の胸には、銀色の翼を広げた鷲の図が描かれた「風紀委員会」のエンブレムが鈍い光を放っていた。「風紀委員」はこの学校の治安維持を目的に学生によって運営される少人数精鋭の武装組織だ。武装の使用と所持が認められており校内で絶大な権力をもつが、「風紀委員会」に所属するには人格・能力・適正等を審査する多くの審査に合格する必要があり、さらに違法使用が認められた場合は一般生徒よりも重罪となる。
そんな二人が顔をしかめつつ見るのは一つの路地裏。そこには7つの人の死体、いや人型の炭と言ったほうがいいだろう。最早、誰が誰なのか判別が無理ほどに焼かれており、あたりには焦げ臭い嫌な臭いが漂っていて、側面の壁には”I am flame man ” の英文が黒く描かれている。
”私は焔男”と書かれた英文のある現場は3か月の間に10件も発生しており、死者の数は19人にも及んだ。
書かれた英文から「焔男事件」と呼称されたこの事件は「風紀委員会」の主体で捜査が進められているが、あまり捜査は順調ではない。犯行現場が深夜の人気のない場所であることや現場の証拠ごと犯人に燃やされていることもあり、犯人に繋がる情報が一切ないのが現状だ。
一応、焔を発生させることの可能な「学力」を保有する「学者」全員「風紀委員会」のメンバーによるに監視を付けているが全員のアリバイを証明するだけだった。
「目撃情報・遺留品は無く。分かったのは、遺体の傷から犯人の獲物は刃物であり身長が180cmであるという情報のみ。そして炎熱系統の「学力因子」の「課題」を持たずに炎熱を操る「学力」を使うことか・・・。」
「在籍している学生には月に一度の「学力因子」の適正学域、通称「課題」の検査が義務付けされています。隠しているとは考えづらいですね。」
「だとすると。密航してきたテロリストといったところかぁ?それだとこの残忍な手口に疑問が残るんだよなぁ?」
この行き詰まり気味の状況に「風紀委員会」の精鋭たちも頭を抱えそうであった。エリート集団である彼らはこの3か月、激務に次ぐ激務をこなしたことでその疲労はピークに達していた。一つは「焔男事件」の調査、もう一つはある新メンバーの教育によってだった。
ゴシャッ!バキ!バコン!!
凄惨な殺人現場に、今度は似つかわしくない破砕音が英文の書かれた壁側からなり始めた。
「おい・・・これって、まさか・・。」
「ええ、恐らく、彼女ですね・・・。」
グシャッ!シーン・・・・。ドガシャーン!!!
一瞬の静寂の後、英文の書かれた壁は粉々に砕け散った。その光景を見て二人はこれから書くであろう始末書の束を幻視し、顔は土器色に変えつつ砂埃の舞う風景を見つめた。そこには彼等の想像したとおりの彼女の姿があった。
長い亜麻色の髪に低い身長、整った顔立ちに青い瞳、胸には「風紀委員会」のバッチが初々しい光を放ちながらつけられている。その青い瞳には一点の曇りすら無く、見るものは彼女を品のある子猫のようにあるだろう。
「遅れました!高等部一年「風紀委員会」所属。真田・k・クラリス!ただいまをもって現場に現着いたしました!!」
この三か月でついた二つ名は「建物壊し(ビル・クラッシャー)」。
純真かつ脳筋のため、毎度毎度やりすぎる「風紀委員会」の問題児。
「おぉ!先輩方!遅れて申し訳ありません!ひったくりを見かけたのでそれを捕まえていたら遅れてしまいました!勿論、ビルに逃げ込んだひったくりは撲滅しましたのでもう大丈夫です!さぁ!改めて実況検分を
始めましょう!」
後に「絶対正義」と謡われる英雄の初めて事件調査は
「こ・・・こ・この大馬鹿野郎がああああああああ!」
「みぎゃああああああああ!」
先輩の説教から始まった。
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