ガラスのハート
「そうだな、まあこんなもんだろ!」
プリンはすっきりとした顔で言う。
気に入らない相手を思うがままに蹴散らしたのだから気持ちがいいに違いない。
先ほどの鬼の形相とは打って変わってとてもにこやかだ。
それと比べてKYの方はそこそこ機嫌が悪そうに見える。原因は見え見えだ。
「ったく...どう収集つけるんだ。転がってる二人先行隊だろお前責任とれ」
「おーそうかちょうどよかった。そのために呼んだんだ」
「は?お前サンドバックに使うからって話じゃんか」
「あれは嘘だ。ああ言えば動くだろおまえ」
「...後で覚えてろよ」
そう低い声で言うと横目で僕の事を見てくる。
完全に獲物を狙う目、KYは恐ろしいことに僕の事を本気でサンドバックにするつもりだったようだ。
だから無口だったのか?関係がない気がする。獲物と極力会話を避ける。そういったポリシーやらを持っているものと解釈しておこう。
「てなわけだ。不死身俺とお前先行隊な」
KYの脅しを軽くスルーし、プリンは、割と重要な事をサラッと言う。
前振りがない事で理解が遅れた僕よりも先にKYが動いた。
「まて!責任とれとは言ったけどお前が行くことないだろ!お前が先行隊で行ったら誰が全体の指揮をとる?」
「お前がとれ。できるだろ?」
「できるできないの問題じゃない、皆が納得するか!」
そういうとKYはそっぽを向く。絶対にやらないぞという意思表示かと思いきやその口元はゆるゆるである。
実のところKYは満更でもないのだ。全ての指揮を任される。それは大変なことだと理解した上で、自分もいつかは、と憧れを抱くものであった。
KYは憧れの立場の人間に絶対と言ってほしかったのだ。言ってもらえるのは時間の問題だとそう思っていた。
しかし待っていれどもそんな言葉はかけてもらえない。
「まずしないな」
ジョークでも言うようにプリンはヘラヘラしながらそう言う。
KYは「えっ?」と振り向く。≪何変な冗談言ってるんだ?悪いジョークはやめてくれ≫と顔で語っている。
きっと彼の心には深いヒビが入ったことだろうがこのままでは終わらない。
「絶対みんな納得しないな!」
KYの頭の上の≪?≫を間違った方向に解釈したのか、よりはっきりとした一撃を加えた。
絶対の使われ方が真逆だったなんて想定外だろうKYの心はもうズタボロだ。
その目からはすでに何かが抜け落ちたようにも見える。
そして誰も聞いていないのにプリンは具体的なみんなが納得しないであろう理由を述べ始めた。




