祭
この部屋に籠城していても仕方がないので、とりあえず会話に主語がないやつに渋々ついていくことにした。
建物の構造はドアや窓、柱の位置まで僕の住んでいた建物とほとんど変わりがない。変化があるのは窓枠やカーテン等一部の飾りが多少御洒落になっている事くらいだ。
それにしてもここの住民は綺麗好きなようで、廊下や窓辺に埃が見当たらない。ポカリの部屋とは大違いだ。
あいつの部屋は人間が住める環境じゃなかったからな。
小綺麗な建物を出て正面の小道を左へ歩く。
会話に主語がない奴、長ったらしいので略してKYと呼ぼう。こいつは終始無言だ、小道を何度か曲がる際うんともすんとも言わないので、僕は毎回道を行き過ぎてしまう。
そうしてルートを飛び出すこと数回。着いたのは開けた広場のようなところだった。
様々な出店が並びテーブルを囲んで馬鹿騒ぎをするもの、射的や輪投げなどの店で遊ぶもの、浴衣を着ているもの、あそこには金魚すくい、そこには綿あめ屋さん。
その広場で催されていたのは祭りだった。
「42番だ!!」
その賑やかな会場で一際目立っている人物が一人、会場のど真ん中に一つだけある円柱型でライトが下から照らしあげているだけの舞台でそいつは叫んだ。
多くの人がそいつに注目する。中には手拍子をするものが出始めそれが波紋のように広がっていく、その瞬間この会場は彼のものとなった。それほどに彼は認知されているというのだろうか。大勢の人が面白い芸を期待する。
しかし彼が選択した物は最悪だった。
「というのは冗談でぇ~スペシャルゲストの登場だ!!我らの救世主不死身~~!!」
ライトスポットが移動し僕を照らすと会場の舞台に注目していた大勢の人達の注目は僕に移った。
ぞわぞわっと会場全体が動く様にギョッとする。異様な静けさが空気を冷やす。
KYのやつはいつの間にかはけていた。
ああ!もうどうにでもなれ!
「元気ですかーー!!!!」
「「「「オーーーイェーーーイ!!!!」」」」
空気の振動で会場が揺れたような気がした。
なんだこいつらノリ良すぎないか!?
「盛り上がってますかーーー!!!!」
「「「「オーーーイェーーーイ!!!!」」」」
「絶対勝つぞーーー!!!!」
「「「「オオオオォーーーー!!!!」」」」
「一緒に戦ってくれるかなーーー!!!!」
「「「「いいともおおぉぉーーーー!!!!」」」」
もう何言ってんだか自分でもわからなくなってきた...。
勝って何にだよ。
「管理者にだ」
「え?」
心読まれた?




