シミ
ここは壁の内側。
少年は布団の中で穏やかに目を覚ました。
目に入ったのは天井、壁、小さな窓から入ってくる光。
起きたら目の前が自室の天井だという事に彼は特別驚かない。脳筋達と多くの時間を過ごしていた彼にとって、気絶して自室に運ばれることは、そう珍しいイベントではないのだ。
そうして目が覚めると「...ああ、またか」と小さくため息をこぼし天井のシミを一つ二つと数える。
そうすると気分が落ち着く一種のルーティーンだろうか。
いつしかこれが、気絶から目覚めた時の儀式のようなものになっていた。
今回もいつもと同じだ。小さなシミから大きなシミまで一つずつ数える。
天井のシミは全部で45個。時々一、二個増えることはあったけれど一度たりともその数が減ったことはない。
「..39...40...41...あれ?」
彼は布団を引っぺがし上半身を起こした。
周囲を見渡す。よく見ると色々違う。机の上にあるはずの手紙はないし窓枠の色も変わっている。そして天井のシミの数が42個...。
「ここ...どこだよ....」
同じようで微妙に違う、まるで自室のドッペルゲンガーを見ているような感覚に頭を抱える。
僕は壁の外に放り出されて腹を殴られ気絶し、その後ここに運ばれたのだろう。
しかし窓から外を見るとそのそびえ立ち方から、壁の内側にいることがわかる。しかし僕の住んでいた所とは街並みや雰囲気がまるで違っていた。
まさかとは思っていたが...
窓から外の情報を得ようとガラスにへばりついていると、背後にあるドアからゴンッと音がした。
ビクッと音に驚きドアに視線を注ぐとドアのノブがガチャガチャと震えだした。
普通に怖い!!
やがてガチャガチャは収まりドアが外側に開く。
額に500円玉程度の赤い円を作り部屋に入ってきたのは、会話に主語がない短髪で首元に大きな傷がある男だった。
男は僕を見るやすぐ近くまで近づいてきた。
「早くしろ、もう始まる」
また主語がない...。




