無知
プリンのおっさんはなにやら3人のうち茶色の顎鬚を生やした男と話をしている。
車の横では黒髪で軽いパーマのかかった少女と、金色の髪を束ねるようにして後ろで結んでいる男がぐったりと青い顔をした黒髪ツインテールの少女の看病をしている。
どうやら僕に怒鳴り声をかけたのは3人の男のうち短髪で首もとに大きな傷がある男のようだ。
彼だけが僕を見ている。
僕も彼だけを見る。
そんな睨めっこ状態。
僕のきょとんとした表情に対して、彼は完全なる真顔だ。
もしかして怒ってるのか?
まあ確かに自分のことガン見しつつスルーされたら怒るかもだけれど...。
彼の額にこころなしか青白い線が見える気がする。
にらめっこもそう長くは続かなかった。
彼が眉間にシワが寄る。
「お前何ガン飛ばしてんだ、殺すぞ早くしろや」
早くしなければ僕は殺されてしまうらしい。
一体何を早くすればいいのだろう。
思考は冷静だけれど足は今にも折れそうだ。
いまポカリがいればなと思う。でもそんなわけにもいかないここにポカリはいないのだ。
知り合いならプリンのおっさんがいるが昨日期待しないだとかなんとか言われた時の雰囲気が残ってる気がして頼りたくない。
ならここは自分でどうにかしなければならない。
全身がぶるぶると振動している。勇気を出しても彼のような威圧感がある人間は苦手なのだ。
雀の涙ほどの勇気を振り絞り言い返す。
「...ま、まずあんたは誰なんだ。なんで僕をこ、こんな所につれてて来た」
僕が噛みながらそういうと彼は眉間のしわを深めあからさまに不機嫌な顔になった。
そしてズウッと僕のすぐ前まで歩いて来ると僕の顔に顔面を近づけてくる。
顔が近い!!目が逝っちゃってるって!!助けてポカリ~~~!!
そんな僕の心の叫びは無情にも誰にも届かない。
「は?。全部あいつに聞いてるだろうが」
彼は近い顔でそういうと一人の男を指さした。
その指がさしている人物はプリンのおっさんこと本名ティアラである。
プリんのおっさんは彼が指をさされているのに気が付くと茶色い顎髭を生やした男との話を中断し僕らの方によって来た。
彼の顔が僕から離れる。
「ああ、もう来たのか早かったな。じゃあ行くか」
プリンのおっさんは近くで僕の事を確認すると周りに撤収の指示を出した。
周りの人たちもそれに従い車の荷台に乗り込み始める。
しかし僕に怒鳴った男は車に乗り込もうとしない。
「おいティアラ」
ティアラはどすの聞いた低い声で彼の言葉を遮る。
「ティアラはやめろ。」
「お、おう悪かった...なあプリンお前こいつに何も言ってないのか?」
「どういうことだ。」
「こいつさっきから何も知らないみたいな顔してとぼけてんだよ」
「ああ...そうかそうか忘れてた。」
ティアラは僕の方に向き直った。
僕の方にぽんと手を置く。
「んじゃあ後でな」
ティアラはそう言うと腕を軽く振りかぶり僕の腹をぶん殴った。
みぞおちを中心に衝撃が走り意識が遠のく。
膝をつきそのまま倒れる。
彼のおいおいという飽きれたような声の後ティアラに無言で体を担がれ意識が途切れた。




