腕
朝に浴びる日の光は悪くない。
夜のひんやりとした空気とは正反対だが、まあ、どちらを好むかはその時の気分次第で、今は日の光を欲しているというわけだ。
きっと夜になればひんやりとした空気を欲するのだろうなと考えながら歩を進める。
風はほとんどないが熱くはない。
日は射しているがギラギラとはしていない。
かといって寒いというわけではない。朝の気温と太陽の光がちょうどよいバランスを保っている。
僕が感じている朝はまさにそんな感じだ。
夜とはまた違った暖かい静けさがある。
あいつらがいないのが少し寂しい。
「そろそろか」
目的地に近づいてきたので少し気を引き締める。
僕が向かっているのは家からまっすぐ東に歩いた場所、壁のふもとだ。
目的はおそらく喧嘩。
朝起きるとポカリの手紙の隣にきれいな四つ折りが施された見慣れない紙が増えていた。
きれいな四つ折りにされた紙を開くと几帳面そうな字で東の壁で待つと書いてあった。
宛名は不死身、差出人は、
「.....ティアラ」
プリンのおっさんである。
いちいち見た目と行動が一致していない。
名は体を表すという事がないとは言わないが彼はちょっと違うんじゃないだろうか、まあ中身が名を表している気がするが.....
字体からタイマンなど想像できないが、だまされちゃいけない。本体はごついおっさんなのだ。
おそらく昨日の事を終わらせたいのだろう。
できる事なら話し合いで済ませたい。
また頭をペシャンコにされるのは御免だ。
壁のふもとについた。
壁にはコケがへばりついていて所々緑になっている。
周りの木々はそこまで密集していない、林のような感じだ。
地面は腐葉土なのか少しフカフカしていて少し丈の大きい雑草もちらほらしている。
「間違えたか?」
おっさんはいなかった。
東の壁で待つとしか書いていなかったもんだから家から東かと思ったのだけれど....
....んー
言い出しっぺが遅刻しているのだろうか?
周りを見渡してみるがおっさんは影も形もない。
「しばらくしても来なかったら流して帰ろうか」
コケを気にせず壁に背中を預ける。
こすれてコケの残骸がパラパラと落ちた。
それにしてもなぜこんなところに呼び出したりしたのだろうか。
それが今回一番の疑問だ。
話だけならその辺の店でもいいだろう。
喧嘩であっても人の目が届くところで毎日誰かがやっている。さながら壁内一のポピュラーなスポーツだ。
しかし人目が届くところでは乱入者がいたりいなかったりする。
やっぱりおっさんはタイマンを希望してるということか。
....ならなぜいないのだろう。
「探しに行くか」
ちょっとした反動をつけて壁にかかっている体重を起こす。
「!!?」
起こせなかった。
音もなく壁から生えてきた2本の腕に不死身はがっちりとホールドされ、抵抗むなしく壁の中にズウッと飲み込まれた。




