プリンのおっさん
読み終えた手紙をテーブルに置き外に出た。
夜の空気は少し冷たいけれど気持ちがいいものだ。
月がぼんやりとした青白い光を地上に落とす。
薄暗い世界独特の静かな空気が流れる中、何やらにぎやかな声が聞こえてきた。
酒場で宴会でも開いているのだろうか。
声の方向に何気なく歩を進めながら手紙の内容を思い出す。
僕の回復力が異常だとか、シエルが攫われた、だとか長ったらしく書かれていたが、結局の所汚い字で書かれた文章には別れの意味が込められていた。
自分は攫われたシエルを助けに行くから僕はゆっくり休んでいてくれという事だ。
そして問題なのが最後の言葉。
≪じゃあな。≫
「本当に助ける気あるのかよ....こういう時は≪またな≫だろうが!!」
光がちりばめられた無限とも思える空間に叫び声が吸い込まれる。
ポカリの覚悟を感じるとともに自分への情けなさが溢れて、体のいたる所から今にも零れだしそうだ。
額を地面にこすりつけ、星を殴りつける。
口を開くと思いがあふれだしてしまう気がして歯がギリギリと音を出すほどに噛みしめる。
唸るようにも聞こえる叫びを押さえた声が出る。
傍から見たら異常な光景だろう、関わったらやばいと思うに違いない。
しかし彼は声をかけてきた。
「おい...不死身だよな....」
体を起こすと、スキンヘッドのおっさんが、プリンとスプーンが乗った皿を片手にこちらを見下ろしていた。
僕はプリンのおっさんに話があると言われ、半ば無理やり店に連れてこられた。
店は僕がいた所からそう遠くなかった。
というか目と鼻の先にあった。
いつの間にかすぐ近くまで来ていたようだ。
店の名前は酒場カオス。
一見、忠二病全開のネーミングだが、店主は高校生の時に忠二病を卒業済みだ。
実はこの店なんでもかんでも売っている。
酒場と名がついてはいるが酒・主食・デザートから工具・観葉植物・雑貨なんて物も売っている。
まさにカオスだ。
そんな自由な店風が幅広い客に受け、ここ半年で規模が拡大し今では誰もが知る人気の店となった。
ゆえに朝から晩までにぎやかだ。
おっさんも昼あたりから今まで楽しく飲んでいたところ、雄叫びが聞こえたから見に行ってみたら僕が転がっていたらしい。




