プロローグ 2
少女の笑顔には覚えがあるが、思い出せないのだ。記憶が所々すっ飛んでいる。明らかにおかしい、僕はなぜバスに乗っているのだろう?
わからない尽くしだが、わからない物はしょうがない。まずはあの笑顔だ、見覚えがあるなら何かヒントになるかもしれない。
まあもう一度確認してみよう。
「・・・・」
表現としては笑いではなく、にやけに近い表情だ。
インパクトとしては、後ろのばあさんには劣るが、中々に恐ろしい。
「ヵ・・ぃ」ボソッ
にやけが顔から消え悲しそうな顔になった。見ようによっては滴る水滴が涙のようにも見えるが、はっきりわからない。
少女は、つり革から手を放し、ポケットから何かを取り出すと運転手の元に歩いた。距離にして1~2歩だ。
表情は悲しい顔のままだ。
ドスッ
鈍い音がした
ニチャッっと生々しい音が聞こえ、赤い液体がフロントガラスに吹き付けられた。
運転手は力なく、ハンドルにもたれ掛かるが、重みでハンドルは左に切られ運転手は横倒れになった。
僕は瞼を閉じる暇がなかった。いや閉じる暇はあったのだろう、体感にしては一瞬の出来事だろうが数秒の時は流れていた。しかし僕は瞼を閉じることができなかった。
目には笑顔になった少女と、白いガードレールが、赤く染まったントガラス越しに、見えた。




