願い
「「え」」
2人分の間抜けな声が室内に響いた。
「まさかお前も知らなかったの」
「全く知らなかった...」
夜になればちんぷんかんぷんな話も飛び出してくるかもと構えてはいたが、予想以上にこんがらがった話でもう...誰かに一から説明をお願いしたいところだ。
「じゃあ一から説明するぞ、よく聞けよ」
そういいながら彼女、いや彼は正座していた足を胡坐に直した。
背中に走る悪寒をポーカーフェイスでごまかしつつ、僕は頷く。
「俺は吸収されて復活したわけだ、それで1日スパンで人格が入れ替わるようになった、さっき記憶共有云々言ったけどあれは嘘だ、実際一方的にこっちに流れ込んできてるだけで、向こうにはすずめのなみだほどもながれてねえ、最後に、もう察していると思うが、俺が死んだ理由を知っているのは、俺の記憶が残っているからだ。以上!」
彼が話を終えるとあたりに沈黙が流れた。
え、質問するどころか最後まで息つく暇がなかった。なんでこの人、一呼吸で全部しゃべるかな?さっきまで普通に説明してましたよね?
「なるほど」
隣では戦闘馬鹿がうんうんとうなずいていた。とりあえずこいつは置いておこう。
目線を戻し口を開く。
「一日スパンで人格が入れ替わるってどういう」
「それはね、寝て起きたら人格が変わるってことよ」
彼は何を思ったか中身がばれる前の女性っぽい口様に戻した。見ず知らずの者が彼女を見たら、印象はとてもいいだろう、何せ容姿は整っている。
しかし中身を知ってる僕にとっては、なんか嫌なものがある。ゆえに僕はとっさに口を動かした。
「その口様やめてくれ、色々とくる」
そう抗議すると、何を勘違いをしているのか、彼女はニヤニヤと笑みを浮かべ、前かがみになったと思うと顔を接触するぎりぎりまで近づけてきた。
「へぇ~あたしが色々来るんだ~」
超至近距離。クソ近い、その勘違いはほんとにやめてほしい。
隣の馬鹿に助けを求めるべく視線をやると、そこにもニヤニヤした顔があった。まじでぶん殴りたくなってくる。そのノリやめろや。
流石に耐え難い苦痛だったが、僕のポーカーフェイスが般若になる前に彼女は顔をひっこめて言った。
「でもだめだ、だれがどれだけ好きになろうとも、妹は断固として絶対誰にも渡さない」
勘違いも甚だしいし、貰うつもりも全くないのだが妹について聞きたいことはある。
「なあ、なんで姉貴が、姉貴なんだ?妹から分かれたなら妹が姉貴なんじゃないのか?」
確認しようと思ったことをポカリが勝手に聞いてくれた。
理解していたのか。実は僕が思っているほど脳筋ではないのかもしれない。
彼はポカリの質問に顔をうつ向かせて答えた。
「俺はな末っ子だったんだ」
え?
「兄が4人末っ子の俺の下には妹どころか弟すらいなかった」
彼が顔を上げると薄暗い中でもわかるほどに目には涙がたまっていた。
「俺は妹のお兄ちゃんになりだかっだ」
「だから俺が姉貴なんだ、分かるだろ?まあなれだのはお兄ちゃんじゃなくお姉ちゃんなんだけどな」
彼は涙を流していた。きっと今までため込んでいた思いがあふれてきたのだろう。
「...よかっだなぁ!あねぎっ!」
「おう、ありがどう!!」
彼らは涙を滝のように垂れ流していた。きっと涙が涙を呼び感動の連鎖が起こったのだろう。
きっといい話だ。だからここは僕もはっきり言おう。
何だこの茶番
「あねぎぃぃ!!」
「あ、てめぇ抱き着くんじゃねぇ!やめろ!。妹の体が穢れる!!」




