姉妹
「ごめんなさい」
僕と目を合わせると彼女は頭を下げた。
僕は事故に巻き込まれたのだ。バス中で気が付いたとき記憶も無くて、事故に巻き込まれて...その結果僕は今ここにいて...。
別に謝罪を期待していたわけではない。
してもらいたいとも思ってなかった。
でも自分が被害者だという認識は一応ある。だから僕は加害者からの一言がほしかったのだ。
でも何か、思ってたものとは違った。素直に謝罪された。加害者の口から出るのは、もっと違う言葉、もっと言い訳に近い言葉だと思っていた。
だから僕にはその一言、≪ごめんなさい≫が加害者からの一言に、少し違和感を感じた。
僕の違和感は的中することになる。彼女の言葉にはまだ続きがあった。
「運転手を殺ったのは、私の妹のシフォルです。君を巻き込んでしまった事を姉としてお詫びします。」
きっと今僕の顔は、目が点になり口がぽかんと開いて、とても間抜けな感じに仕上がっているはずだ。
妹?姉?いったいどういう事?
「え、っと、じゃああなたが殺したわけではないんですか」
「いいえ、あたしが殺りました」
彼女は僕の目をまっすぐ見て、真剣な顔をしながら支離滅裂な事を言い放った。
ますます、分からない。殺したのは妹だけれど、あたしが殺った?それをそのまま解釈すると...。
同じ運転手を二度殺したのかよ...
「この体にはあたしと妹、2つの人格が宿っています。妹が犯した事なら、同じ肉体に宿るあたしも同罪です。そもそもあたしという人格は、運転手を殺った後に妹から派生したので、どちらにしても同じことなんです。」
彼女は真剣な顔を崩さず話しているが、内心どうなのだろうか。同罪とか言っている割に、殺るとか罪とか簡単に口にしているのを見ると、罪悪感なんてなさそうに見える。
「まあ何となくはわかりましたけど、そもそもなんでそんなことしたんですか」
なんでそんなことをした。この話を聞かされたものならば当然の疑問だろう、意味もなしに人を殺す奴なんて僕は知らない、いたとしたらそいつは、人がその辺に転がっている石ころと同じにみえているのではないだろうか。
「それは分かりません。さっきも言いましたがあたしという人格が派生したのは、殺人を犯した後の事、この体が生き返った時です。あたしと妹は記憶を共有してはいますが、彼女はここに来るまでの記憶の大半を失っています。」
彼女はポンポンと衝撃の事実を放ってきた。驚くべきことが多すぎて心臓の動きが狂いそうになる。そんな心不全の嵐の中、彼女の発言におかしな部分があるのを僕は見逃さなかった。
「一ついいですか、あなたが妹さんと記憶を共有していて、妹さんが記憶を失っているのは分かりました。ここまではいいですが、なぜ殺人の後に生まれたあなたが、運転手が妹に殺された事を知っているんですか」
彼女は僕の言葉を聞くと、苦い顔をして笑った。
「あーあばれちゃったか。痛いとこつかれたな。まあこうなったら話すしかなくなるだろうから、先に自己紹介させてくれ」
彼女はやってしまった感を大いに出しつつ自己紹介宣言をした。
「俺はこの体に殺された運転手だ」




