失踪
僕の脳天を大きな衝撃が襲った。
「いっ!?」
体を起こしつつ頭があった所を見ると、まっすぐに伸びた足があった。人の頭を足蹴にしておいて、その足の持ち主は能天気に寝ている。
窓の外から射す月明かりが部屋にぼんやりとした明かりをもたらしている中、頭に与えられた物理的ダメージを堪えつつ、意識が落ちる前の事を思い出す。
たしか、ポカリと飯に行ったあと、夜まで酒でも飲もうと誘われて...!
慌ててベッドを確認したが、そこにはすでに、人らしき影は無かった。
「おい早く起きろ!」
慌てて声をかけると、ポカリは気だるそうにのそのそと伸縮した後、大きなあくびをした。
「ん、もう朝かぁ」
「もう真夜中だ!」
「え、ああそうか思い出した」
こいつにしては思い出すのが早かったな。でも僕たちが起きるのが遅すぎた。今更ながら、軽い気持ちで酒盛りを行った事に後悔の念を抱く。
床には空になった瓶が無造作に転がっている。
「焦るなよ」
僕の焦りを鎮めたいのかポカリが切りだした。
「俺に心当たりがある」
ポカリの言葉は予想外だった。焦るなと言い出した時は、また根拠無しかと思ったが、その心当たりも最もな意見だった。いやこんな簡単なことが、頭にそれが浮かばなかったのは、きっと焦っていたからだ。本来こんな事、誰にでも考え付く、というか一番最初に疑わなきゃいけない場所だろう。
地上から続く階段を降りきる。細い通路を突き当りには、真ん中が拳の形に凹んだ扉がある。はずだったのだが、その金属の板の姿は無かった。
やはりポカリの心当たりは、間違いではなかったわけだ。
隣にいる本人に目を向けると、彼はまっすぐ入り口の向こうを直視している。僕もその目線の先をを見る。
直後の事だ、タンッタンッと、音がしたかと思えば、何か大きなものが僕の右頬をかすめ、ものすごい速さで、隣にいるポカリにぶち当たった。
ドッッ!!と鈍い音がする。体の反応が追い付かず、目線だけを先に隣に戻した。ポカリの姿は無い。音はおそらく壁に衝突したものだ。体を捻りできるだけ早く振り向こうとするが、体の反応が遅い、どうにか状況を確認しようと目線だけを先に泳がせる。
僕の視界にはかすかに2つの影を捉えたが、そこまでだ。
音の爆弾が僕たちが襲う。
「てめぇぇぇ!!人の妹に何手出そうとしてんだぁぁぁ!!!」
その咆哮は僕の足の力を奪うのに十分だった。




