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目覚めたらそこは

 目が覚めて初めて、私は寝ていたことに気がついた。

 体は布団に包まれて、柔らかいベッドの上。

 見慣れない天井を眺めながら、ぼんやりと思う。

 …あれ?ここ何処?

 ゆっくりと視線を巡らせば、窓から差し込む朝日が室内を照らし出した。

 青系で統一された部屋は生活感に満ち溢れ、机の上も本棚もごっちゃごちゃ。訝しみながら身を起こせば、フローリングの床に放置されてる服、雑誌、ペットボトル…。

 ――なにこれ汚なっっ!

 じゃなくて。

 え、ちょっと待って。ここは何処??

 私、なんで寝てんの??

 目に入る景色にまるで見覚えが無い。

 混乱する頭で、私は必死に記憶を手繰った。

 昨日も学校に行ったのは覚えてる。学校が終ったらすぐ下校した。大事な約束があったから。

 1人で学校を出て、待ち合わせ場所に向かって……。


 ――思い出せるのはそこまでだった。

 

 冷や汗が肌に滲む。混乱の中、私はふと自分の体の違和感に気付いた。

 布団を握るごつごつした大きな手。ゆっくりと開いてグーとパーと繰り返せば、ちゃんと思い通りに反応する――けど、違う。私の手、コレジャナイ!!

 動転しながら、私は自分の体を覆っていた布団を勢いよく引っ剥がした。


 なにこれ!!!


 私は見覚えの無い灰色のスウェットに身をつつんでいた。

 いや、そんなことはいい。

 視界に入ったズボンの裾から覗く予想外に太い足が、私に明らかな異常を知らせる。なにこの体は?なにこのスネ毛風なものは?!

 私はとっさに、片足を抱え込むようにして覗きこんだ。


『――うわぁ!!!』

「――きゃぁぁぁぁ!!!」


 突然背後から上がった絶叫に、私は悲鳴をあげつつ跳び退いた。

 あまりの驚きと恐怖でベッドの下に転がり落ちるようにして避難する。落ちていたペットボトルを潰しちゃったけど、構ってられない。私はベッドの陰に隠れるようにして、恐る恐る声の正体と向き合った。


『…俺…俺が居る』


 そこにはいつから居たのか、男の人が立って…。――いや、”浮いて”いた。


 ひぃぃぃぃー!!

 おーばーけー!

 

 内心では絶叫したが、実際声にはならなかった。ただ口をはくはくと動かすのが精いっぱい。

 男の人はたぶん私と同じ歳くらいだろう、格好は寝間着と思えるスウェット上下で、髪は寝起き風にぼさぼさ。その顔には、私に負けず劣らずの驚きと恐怖を張り付けている。

 そして真っ直ぐこちらを指差す手も、顔も、体も、全部うっすらと透けている。

 口を開けたまま声にならず、私は目の前の信じられない存在を凝視した。

 やばい、どうしよう。

 知ってる。

 私、この人知ってる。


『――なんだこれ!!俺がふたり居るーー!!』


 ストーカー、――”加瀬純一郎”じゃん!!

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