2-2 殺陣
お久しぶりです。短いですが
マラソンが終わり、それから殺陣の練習をした。
殺陣とは、良く時代劇とかの最後の方でやるあの戦闘シーン。知っているとは思うが、吹っ飛ぶ時、実は刀に触れていない。触れそうで触れない時に、やられ役が盛大に吹っ飛んでいる。
拳の方は、実際に触れたりするやつもあるそうだ。俺は見た事が無いから知らない。
……話を戻すか。
なぜ殺陣の練習なのかというと、来月に行われる期末テストに使われるドラマのほとんどが殺陣になっているからだ。ああ、面倒だぜ。
で、今俺は一人。殺陣の練習? やらなくても出来るし、やったとしても相手が怪我するからやりたくない。
校庭で一人、みんな頑張ってるなぁと思いながら傍観していたら、先公が近くまで来てこう訊いてきた。
「お前はやらないのか?」
当然、訊くことはそんな事だろうと思っていた。
……てか、あんた。練習している生徒に注意とかにしろよ。下手すると捻挫とかありえるからな。
俺は、そんな事を思いながら少し雲がかかっている空を見ながら答えた。
「どうせ一人余るんだから、別に構わないだろ。それに、俺はこれくらい出来るからいい」
ただ事実を言ったのだが、先公は少し驚いていた。
先公も俺に慣れてきたのかな? なんて思って言葉の続きを待ったら、少し間を空いてから訊いてきた。
「お前、本当にできるのか?」
少し面倒なことになったのに今更気付いた俺だが、前言撤回なんてやりたくなかったので、頷いた。
「じゃ、そこに立ってろ。俺が殴るから」
どうやら、俺の了承なしに事が進んだようだ。先公が少し離れた。
あ~、面倒なんだよなぁ、こういう事。ま、適当に終わらせますか。
そう考えた俺は、自然体で直立不動になってみた。もちろん、相手の動きはちゃんと見ている。喧嘩の基本だ。
「いくぞっ!」
そう言った先公は、俺に向かって走り出し、上半身は左にひねっていた。
先公が走り出した時に構えた俺は、相手側の動きで殴る時のモーションを予想し、そこから考えられるやられ方を考えていた。
「くらえ!!」
そう言って先公は、俺の予想通りに勢いをつけた状態で俺の腹を殴ってきた。
「ぐっ!」
とか言いつつ、もう少しで腹に届くところで俺は後ろに跳んで腰から地面に着いた。
久し振りにやられ役なんてやったなぁと思った俺は、そのまま空を眺めていた。綺麗だな。
そしたらすぐに先公が俺に近寄って、顔を覗き込んでからこう言った。
「確かにできるな。しかも完璧に。いったいどこで身に付けたんだ?」
邪魔だよ。驚いてる顔しか見えねぇだろうが。
なんて思い、地面から起き上がって背中に付いた土を払いながら言った。
「教えねぇよ。どこで覚えたのなんか、な」
そう言ったら先公は怒ってきたが気にせず、歩いて休めそうな場所へ移動しようとしたのだが視線をすごく感じたので、俺は振り返って睨みを利かせてからこう言った。
「テメェら。何見てんだよ?」
俺の声と目つきが怖かったのだろう(そう感じるようにした)、俺のことを見ていたやつらは全員視線を外し、普通に練習を再開させた。
全く。どうして俺のことを見てくるんだ? 俺に一体何を期待しているんだ?
あ~親父にどうやって勝とうかなぁと、暇になったので考えていたら、先公が「集合!!」と叫んだので、何か忘れてる気がするなんて思いながら、俺は集合場所へ向かった。
何て思ったが、すぐさま氷解した。まぁ、更衣室で着替えて携帯を見たときに光から『昼休みに屋上ですからね!!』というメールが来ていたからだ。時間を見たら、午前七時。早いな、おい。
しかも美夏からも来ていて、『放課後、忘れないでくださいね?』とあった。
ここまで念を押されたら行かない訳にはいかないよなぁと思った俺は、しかたなく慎達に「悪い。昼は売店にするわ」と言って、着替え終わったその足でそのまま売店へ向かった。
しかし、話したいことってなんだろうな? 俺にとって嫌なものでなければいいんだが……
「うわ。混んでんなぁここ。でもどうすっか。昼食買わないと死ねる」
売店の前に着いた俺は、下手をすれば学食より混雑してるであろう店の前で、そんなことをつぶやいていた。
ここの学食は一階。売店も一階。
ただ、学食と購買は反対側にある。これは、混雑を別けるためとそれぞれの利益を妨害しないという二つの理由で、こうなっているらしい。
どうやって昼食にありつこうかなぁと思いながら少し考えたが、すぐに答えが出た。
人ごみなんて普通に歩いていけばいけるか。
そう考えた俺は、押し合いへしあいの中をいつも通りに歩き出して人を避け、そのまま売店の前へ向かった。
貯金まだ大丈夫かなぁと心配しながら抜いていき、売店の前まで来たので、「安いパン三つ」と頼み、「三百円ね」と言われたので金を払って袋を貰い、人混みの流れとは逆方向へ歩いて行った。




