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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第二話
92/206

2-1 弱虫

一ヵ月あけました。申し訳ございません。おそらくですが、さらに遅くなる可能性も……ならないように努力します。

 次の日。五月二十五日水曜日。

 俺は、いつも通りに学校へ行く途中に危なく轢かれそうになったやつを助け、お礼を言われながらも適当にいなしてたら、時間ギリギリになった。

 朝から災難だなぁと思いながら席に着き午後の授業の準備を机に入れていたら、いつきが話しかけてきた。

「おはよう、つとむ。今日もギリギリだったけど、また巻き込まれた?」

「よう。・・・・ああ。事故りそうになっていた奴を助けただけだよ」

「さらりと言ってるけど、結構大変だからね? ……ところで、昨日のこと知ってるかい?」

「なんだ?」

 俺が興味を持ったのが嬉しかったのか、いつきは解説者の様に詳しく説明しようとしてくれたが、

「って、ホームルームが始まるよ。続きはお昼休みでもいいかい?」

 ホームルームが始まりそうだったのでいつきは会話を切り上げた。昼休みか……

「すまん。昼は無理だ。昨日メールが着てな」

 俺がそう断ると、急にいつきはいじけた。

「ふんだ。そうやって僕の事を蔑ろにするんだね、君は。いつもそうだよ。君はいつも一人で巻き込まれて一人で解決する。僕が役に立ったのはあの一回だけ」

 どうしていじけるのか分からなかったが、先生が来たので考えることを止めた。

「じゃ、ホームルーム始めるぞー。出席は……ん? おい、誰か如月の奴知らないか?」

 早速ホームルームは始めた先生だったが、一つだけ空席だったのに違和感を覚え、すぐさま俺達に呼びかけた。てか、如月って誰?

 同じクラスのくせに名前を覚えていない俺は、誰の事なのかと首をひねって考えていた。

 それを見たいつきは俺に小声で説明してくれた。

「如月洋司君。うちのクラスで、この学年のホープ。小学生から子役でテレビに出演していて、主役なんて当たり前なんだ。ただ…………」

「ただ?」

 最後の方で言葉を濁したので、俺は訊いた。

 少し逡巡したようだが、いつきは答えてくれた。

「ヘタレって言うか、ビビリって言うか。ともかく、気が弱いんだよ」

 ん? そんなような奴、昨日あった気がするな。つぅかもしかして。

「昨日雑魚にボコボコにされた奴か? 顔は腫れまくって服はボロボロに破れ、目が恐怖で埋め尽くされた奴」

「会ったの? ていうか、良くそんな状況で平然と観察できたね?」

 呆れながら言ういつきに、俺は何も言わずに前を向いた。

 返事をするのが面倒だというのもあったが、「まぁいい。じゃ、今日も頑張れよ~」と先生が言っていたからだ。

 あ~あ。今日も面倒な一日が始まるぜ。

 そう思いながら、俺はため息をついて席を立った。




 午前中の授業は、指定されたコースのマラソンだった。学園からスタートして一周するルートなのだが、割と短い。早く終わらせて他の事をやらせたいからなのだろう。

 で、俺達の学年の男子は、今その真っ最中で、俺はというと、

「ダリィ。先公を追い抜かしちゃ駄目だとか、相当ダリィ」

「良くそんなやる気ない、走っているかどうか分からないフォームでついてこれるよな」

「流石っす、アニキ!」

 先公の後ろについている先頭集団の中にいた。ダリィってマジで。

 このままだと先公ぶち抜いて一人で学園へ戻りそうなので、俺はちらっと後ろを向いた。

 後ろの奴らはそれなりについて来ているものの、俺らより百メートル近く遅れていた。

「先公抜きたい」

「抜いたら戻れるのか?」

「ルートぐらい覚えてるし、最悪近道使ったりして戻る」

「ま、これくらいのマラソンなら合宿中より楽っすね」

「そうなのか?」

「そういや来てなかったんだな」

 合宿のマラソンでも先導者ぶち抜いて一人で戻ってきそうだなぁ、なんて思いながら、俺は少しマシなフォームにして走った。

 そのまま走りながら、俺は訊いた。

「なぁ、如月洋司って知ってるか?」

 その言葉に呆れながら、甲斐たちは説明してくれた。

「知ってるも何も、男子の間じゃ有名だぞ。いや、女子の間でもか。確か、演技はピカイチなホープと噂されている」

「アニキと同じクラスっすよ。デビュー作は『しがらみの校舎』。そこで主役に次ぐ役で出演したんす」

「ふ~ん。俺、テレビより読書派だったし芸能関係の雑誌買わないから知らない」

「お前んち、テレビないのか」

「あるぜ。ただ、見る気が無いだけだ。てか、嫌いだから見ないだけなんだがな」

「「は?」」

 二人は、マラソン中だというのに口をあけっぱなしだった。おい。酸欠になるぞ、おまえら。

 そして、すぐに口を閉じることに成功した甲斐はこう言った。

「お前、幾らなんでも毛嫌いし過ぎだろ…………」

 そうでもない気がするんだがなぁ、なんて思いながら走っていたら、急に先生が立ち止まった。

 そのせいで、俺達も急に立ち止まざるを得なかった。

「どうしたんだよ、先生」

 急に立ち止ってこけそうになった俺は、先生にそう訊いた(甲斐は普通に立ち止り、慎は見事に顔面からこけた)。

 俺の質問に、先公は少し困惑した感じで答えた。

「あ、ああ。あれを見てみろ」

 そう言って指を指した方向を見た俺達は、それぞれ驚きなどの反応を示した。

「おい、どうしてあいつがこんな所に?」「しかもなんだか様子がおかしいぞ」等々。

 対する俺達は、

「あれ? 昨日の奴じゃねぇか。こんな所で何してるんだ?」

「なんか気落ちしてますね」

「俺達の事、全く気にしていないようだな」

 こんな感じ。全く。なんだかこっちまで暗くなる。

 と、ここで先生は大声で言った。

「おい如月!! どうしてお前はこんな所にいるんだ!?」

 その声を聴いた如月は、ハッと顔を上げて俺たちの事を見た後、そのまま走り去ってしまった。

 逃げ足だけは速いよな。なんて考えながら、俺はこう呟いた。

「弱虫、だな」

 この声は、突然逃げた如月に対して声を上げている奴らでかき消された様で、誰も聞いてはいなかっただろう。


 ただ、俺の事を甲斐は見ていた。


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