1-4 なんか来た
バイトが終わり、俺は自転車をこいで家へと帰ることにした。
あのあと、マスターが「たかあき町で一番強い奴って、一体どれくらい強い奴なんだ?」と俺に訊いてきたので、親父の武勇伝(知っている限り)を教え、感想として「それ本当に人間か?」と驚き呆れられた。そりゃそうだろうな。俺も息子じゃ無けりゃ信じていない。
普通に自転車を走らせ、たかあき町に入り、そのまま家へと帰ろうとしたが、交差点を曲がろうとしたときに反対側から「がっ!」「ぐわぁー!!」「な、なんだあー!!?」などと悲鳴にも似た声がしたので、仕方なく声のしたほうへ行った。
「・・・・・・はぁ。やっぱりこいつらか」
「おうつとむ。なんだ? このカスの集まりの知り合いか?」
俺が来たときには、六十人は既に地面に伏していた。どうやら、最後のほうの断末魔の時に通りかかったらしい。
俺は最初の質問に、心外だと首を横に振りながら答えた。
「いや。忠告しただけだ。わざわざ他県から遠征しに来たとか言っていたがな」
「俺たちの町もなめられたものっすね。どうします?」
「俺に訊くな。お前らのグループで好きにしろ。ただ一つだけ言うなら、殺すなよ」
「「「「了解した」」」
明日こいつら生きてこの町出られてるかなぁと返り討ちにあった烏合の衆の冥福を祈りながら、俺はその場を離れた。返り討ちにしたグループは、「じゃ、こいつらどうする!?」「パシリにもならねぇだろ? こんな、一発殴っただけで血反吐はいて道路に倒れこむ奴らなんて」「かといって手下にする気もさらさらねぇしな」「じゃ、捨ててくるってのは?」「「「「賛成!」」」」とか言っていた。
俺は自転車をこぎながら、遠征しに来るってことは誰かが唆したってことだよな、一体誰が唆したんだろうか、と思った。ま、詳しいことは魚屋のオッチャンにでも訊けばいいか。
「あ~今日も疲れた。・・・・・しかし、あのボロボロの奴、一体誰だったんだ? クラスの奴にいたような気がするが……いかんせん憶えてないからなぁ」
俺は自室のベッドに倒れこんで天井を見上げながらそう呟いた。
家に帰った俺は、茜に「おかえり~!!」と言われながらのタックルを受け、両親は日本酒を飲みながら「お。いつもより少し遅い感じがしたが、なにかあったのか?」「何もないわけないじゃない。つとむなんだから」と心配されているんだか、からかわれているんだか判らない言葉を受け、風呂に入り、家族と今日あった出来事を少し話して自室へ戻り、明日の準備をして今の状態となっている。
ま、あいつは今どうでもいいか。そう結論付けた俺は、暇だからケイタイを手に取り画面を開いた。
そしたら、着信だけで六件、メールでは十件も来ていた。
驚いた俺は一つ一つ確認しようと思ったが、最初の二件を確認しただけで他の奴全部同じだろうなぁと直感した。ま、一応確認したが、着ていたものは全部一緒だった。
俺はケイタイと睨めっこをしてからため息をつき、こう呟いた。
「たくっ。白鷺に光かよ。どうしてあいつらはタイミングを合わせられてるんだ?」
仕方がないのでメールを読んでみたが、内容が似ていた。
『件名:あの……
明日のお昼、屋上に来てくれませんか? 話したいことがあるんです。光』
『件名:すみませんが
明日の放課後に林の中にある憩いの場に来てくれませんか? お願いしたいことがありますので。白鷺』
まぁた何か厄介事か……ハァ。
アドレスを知ってる理由は押しに押されて……




