2-2 菅さん
どうぞ
「やっぱり、お前か。本当によく巻き込まれるな、いろんなものに。呪われてんのか?」
「うっせぇよ、菅さん。あんたが呼ばれたんなら、俺がいるってことぐらいわかるだろ?」
「まぁな」
タバコを吸いながら笑う菅さん。ちなみに犯人は、俺の背負い投げで気絶してパトカーに連行された時に気が付いた。よかったぜ。死んだのかと思った。
さてと、菅さんについて説明しなきゃな。名前は菅本信吾。職業は、この流れからわかるように、警察官。俺といつきが巻き込まれた事件で世話になって以来、俺が巻き込まれた事件の時には必ず来る。俺と菅さんは、その原因はいつきだとにらんでいる。
「しっかし、お前、凄いな」
いきなり菅さんがこうつぶやいた。
「あ? 何がだよ?」
当然俺は分からないのでそう返したら、
「なにがって、お前が捕まえたひったくり犯、指名手配されてたやつだぜ。なかなかシッポをださねぇから、どこに居るのか分からなかったんだぜ」
と説明してくれた。ふ~ん、結構すごいやつだったんだな。と捕まったやつに対してちょっとだけ賞賛をしていたら、
「さてと、これからはいつも通りのやつだな。じゃ、行くぞ」
菅さんが手招きしてきた。俺も慣れているので、
「自転車で行くから先に行っててくれ。あ、学校には遅刻するって言ってあるから」
いつもの文句を伝える。
「やっぱり慣れてんなぁ~」
「慣れる必要はないと思うんだが」
「まぁ、そうだがな」
そんな言葉を交わして菅さんはパトカーで、俺は自転車で警察署に向かった。
ところ変わって、学校では、
「八神―。……ん? 八神は欠席か?」
「あ、先生。八神君は自転車のタイヤがパンクしたとかで、学校に遅れるそうです」
「そういえば、あいつは隣町から来ているんだったな。分かった。え~と、次は、安井」
「はい!」
そんな感じで点呼が進んでいた。
「学園長、おはようございます」
「おはよう、諸君」
「それにしても、少し遅かったようですが、何をしていらしたんですか?」
「ちょっとした練習をしていたんじゃ。まぁ、その練習で危うく死にそうになったがの」
「な、なんてことしていたんですか!! そんなことなさらないでください!!」
「いいではないか。それに、そのおかげで改善点が見つかったしのぅ。」
「……?」
「そういえば訊きたいことがあるんじゃが、八神つとむはこの学園にいたかのぅ?」
「ええ、いますよ。教師達からはだいぶ評判が悪いようですが」
「ほほう。なるほどのぅ。……才能とは意外と誰にも気付かれないものじゃな。」
「学園長、何か言いましたか?」
「なんでもないわい。……さて、今日も一日、頑張るかのぅ」
そう言って、学園長と呼ばれた老人――鯨井朱雀――はいつものように仕事を始めた。
「久し振りだなぁ~、ここに来るの」
俺は警察署を見上げながらそうつぶやいた。ああ、シンド。自転車であそこから地元の警察署まで軽く二キロぐらい走ったぜ。と、息を整えていたら菅さんが、
「ほらっ、さっさと来いよ。調書つくれねぇだろ」
言ってきた。分かってるよ、全く。そうつぶやきながら、俺は警察署の中に入った。
「これで、全部だな」
「ああ」
「登校中にひったくり犯が向かってきたので、返り討ちにした、と。いつもとかわんねぇなぁ、おい」
「別にいいだろ」
「・・・・・・・・いいぜ。もう終わったからな、さっさと学校に行けよ」
「分かってるよ」
俺は席を立って帰ろうとしたんだが、そこに一人の刑事が来て、
「野郎、証拠は挙がっているのになかなか他の件を認めません」
菅さんに耳打ちしたのが聞こえた。往生際が悪いなそいつ、と思いながら関係ないので帰ろうとしたら、
「そうか。……おい、つとむ。」
菅さんが呼び止めた。俺はその後の言葉が予想でたので、
「断る」
「いいじゃねぇか、俺とお前の仲だろ?」
「ふざけんな!!それぐらい自分で口をわらせろ!!」
そう反論したら、
「…やってくれたら、お前さんのせいで被った被害に、目をつむってやるぜ」
なんて言ってきた。
それに俺はものすごく心当たりがある。畜生、こんなところで使いやがって。
「てめぇ、そりゃぁ、脅しっていうんじゃねぇのか?」
「で、やるのか?やらないのか?」
「・・・いいぜ、やってやるよ。そのかわり、次からこんなこと俺にさせるんじゃねぇぞ」
「分かってるよ。じゃ、よろしくな」
結果的に俺は了承し、菅さんは俺を取調室に入れた。菅さんに報告した刑事は、『なんで一般人にやらすんですか!?』と言っていたが、菅さんと俺は気にせずに入った。
「なんで一般人に手伝わせるんですか!?」
「ああ、お前はまだここに来て間もないから知らないんだな」
「何がですか?」
「あいつ――菅さんと一緒にいた少年は、事件解決にすごく貢献しているからな、この署じゃ結構な有名人なんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。それと、この町はヤクザや不良グループがほかの町より多いだろ?」
「そうですね。なんだか雰囲気としてはどこもかしこも一色触発、って感じがしますからね」
「でも、その割にはそいつらの犯罪件数が少ないだろ?」
「確かにそうですね。ですが、それと何が関係しているんですか?」
「まとめているのはあの少年だ。この町のヤクザや不良グループは、あの少年がいるからこの町では犯罪を起こさないんだ。いや、他の町でも起こせないかな?彼はそういう騒ぎに敏感のようだからね」
「・・・・・・・・・」
「という訳だ。この町が平和なのは、ひとえにあの少年の力があるからだろうな」
「す、凄いですね」
「ああ、全くだ」
では