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アイドルッ!  作者: 末吉
第三幕・第一話~ふざけた話と納得できる話~
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1-1 呼び出された訳

活動報告通りに更新です。



 俺はその貼り紙を見て「ハァ!?」と驚いた後、そのまま少し固まった。具体的に言うと、口を少し開いた状態で固まってしまった。てか、固まらないとおかしいだろ、普通。

 俺何もしてないんだぜ!? なのにどうして爺さんのところなんざ行かなきゃいけねぇんだ! ふざけるな!!

 固まったままそう思ったが、いつまでもこうなってるのも空しいし、なにより至急ぽかったからそのまま校長室へ向かうことにした。

 授業がもうすぐ始まりそうだと思ったが、気にしても仕方がないしあっちが呼んでるから何とかなるだろうと思った。


 ドバン!!

「ドアぐらい静かに開けろ!!」

「うっせ。授業の遅刻はどうなるんだ、爺さんよ?」

「来たか。お主の性格だったら来るだろうとは思っておったが、もしかして怒っとるか?」

「当たり前だ。どうして張り紙に俺の名前を堂々と書いてるんだよ。んなの、放送で呼んだり先生使って呼んだりすればいいじゃねぇか。・・・・・・・ていうか、最初の質問思いっきり無視された気がするんだが」

「ちゃんと答えるわい」

 校長室のドアを思いっきり乱暴に開けたことを注意されたが無視し、目標(爺さん)に訊いた。にもかかわらず爺さんが的外れなことを言ってきたので、キレそうになる精神を抑え再度質問した。今度はちゃんと答えてくれるようだ。

 これで答えなかったら壁の一枚ぐらい壊してただろうなぁと冷静になりながらソファに座り、爺さんの答えを待った。

「お主の遅刻なら問題はない。事前にわしが言っといたからの。で、どうして張り紙に書いたのかというと、お主じゃったら放送でも先生を使っても無視してそのまま帰りそうじゃからじゃな」

 その答えを聴いた俺は何か納得がいかないと思いながら、ため息をついて訊いた。

「……で? 一体何の用だ? 出演依頼なら却下。それ以外で俺にとって不利益でしかないのも却下。それを踏まえてもう一度訊く。何の用だ?」

「その口のきき方はなんだ!」

「まぁ、良いではないか。前からそうじゃったし……で、要件じゃったな」

 秘書(仮)を制止させてから、爺さんは切り出した。

「お主を呼んだのは来月に行われるテストについてではない。お主が嫌がっている出演依頼の事じゃ」

「ざけんな! わざわざ呼んどいてそれだけの事かよ! どうしてやらなくちゃいけねぇんだよ!?」

「それもこの学園に入った定めと思え。普通に大学へ進学するという進路も良いが、それでもこの学園に入った以上一度は通らねばならぬ道じゃ」

「だからどうした。こちとら忙しいんだ。テレビの出演依頼なんて願い下げだし、あっちだって俺のような奴快く思わないだろ。どうしてそこまで俺をテレビに出させたいんだ? んなことしたら間違いなくイメージダウンだろうに」

 そう俺が言うと、爺さんは黙ってしまった。ほれ見ろ。爺さんだって分かってたじゃないか。出演を勧めるんじゃねぇ。

 そのまま黙ってしまったので、俺は鼻を鳴らして背を向け、校長室を出た。

 本当に。なんであんなこと言いやがる、あのクソジジイ。


 つとむが去って行った後。

「いいのですか? 他の生徒から見れば、あの男だけ特別扱いになりますよ?」

 つとむを怒鳴った彼が学園長に率直に問い質す。彼も理解していた。彼――八神つとむの言動や態度はテレビ出演で若輩者では絶対にやってはいけないものだという事を。

 その言葉を受けて、学園長は顎に手を置いて考える仕草をしながら答えた。

「確かにの。あやつをいい加減テレビに出演させなければいけないんじゃが……本人の言い分も理解できるし、なによりあそこまで拒絶反応が出とると無下に誘えんしのぉ。さらに、理由がはっきりしている分意志も強いことも影響しとる。まったく、本当にたいした問題児じゃ」

「褒めてる場合ではございません。態度はこの際目を瞑るとして、いい加減彼にも仕事をさせるべきかと思います。意外と彼にも依頼が来ていますし」

「すでに十件は越えておるんじゃったか? しかもそれの三割が主役で、六割が不良やヤクザの役。残りの一割がバラエティ。まったく、どこから仕事をもってくるのか。いや。あやつの場合はどこかで広まった末に、この結果になったのじゃろう。ほっほっほ。本人とは与り知らぬところでなっとるようじゃが、ここは気長に待つとしようかの」

「ですが」

「無理じゃよ。あやつの意思を変えようとするなら、それ相応の『何か』が無いと駄目だというのは薄々分かっておったじゃろう。まぁ、いずれあるじゃろうな。あやつが意思を変える時が。いや、意思を変えずとも丁度いいのがあるやもしれぬ」

「?」

 学園長の言い方に彼は首を傾げたが、全く分からなかった。しかしそれもそのはず。

 学園長は彼に隠すようにその資料を置いていたからだ。


『鯨井朱雀様へ ~八月に行われる映画撮影について~


 この度撮影するフィクション映画『光は誰を導くのか』について、以下のご要望を承諾します。


一、貴校の生徒である八神つとむを主演として使う(キャストはこれ以外存在しない)

二、舞台は許可を取ったレイシャルノ公国とし、台本は無しとする

三、ただし、最初のハイジャック事件のくだりはいれる

四、出演料はレートの通りとする(ただし、旅費などは負担しない)

五、撮影は本人に気付かれないようにし、また、悟られないようにする

六、何かしらのアクシデントが起きた場合でも、我々は関知をしない


 これ以外にも何かあるのでしたら、前もって連絡してください。


 株式会社コントラスト映制社長 琴坂(ことさか)(ちかい)


 撮影もちょうど夏休みと言うし、本人にはいい経験になるじゃろと密かに思ったりした。

伏線ばらまいて回収を考えないと大変な目にあいますよ(自虐)

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