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アイドルッ!  作者: 末吉
第二幕・エピローグ
80/205

エピローグ6

過去最長です。なお、第三幕の更新時期は未定です。閑話を書こうと思います。

 次の日(二十三日・月曜日)。いつきが帰ったのを確認した俺は、服を買いに行くことにした。買いに行った場所は、商店街にある服屋だ。他にもあるが、そこの方が近いから。


「久し振りだな、ここ来るの」

「おう、つとむ! なんだ久し振りだな!! なんか買って行くか?」

「昼間から八百屋のオッチャンと将棋してるんじゃねぇよ。仕事しろ」

「手厳しいねぇ「王手だ」・・・って待てよ! そこかよ~!!」


 俺が商店街のアーケードの前で立って感慨深く思い出していると、肉屋と八百屋のオッチャンが店の前で将棋をしていた。客がいるっていうのに、もう普通に。

 俺が来たのは歩いて二十分くらいにあるこの町唯一の商店街。名をたかあき商店街。別名『副業者の集う商店街』。

 どうしてこんな別名がついているのかというと、この商店街で店を出している奴ら全員、何かしらの副業を持っている。例えば、肉屋のオッチャンは探偵だったり、八百屋のオッチャンは紹介人だったり、魚屋のオッチャンは情報屋だったり。ちなみに、合宿中に電話をかけた相手はその魚屋である。

 俺は仲良く将棋をやりながら「最近副業の方、どうよ?」「割と儲かってるぜ」と話している二人を無視し、そのまま服屋へ行った。


「いらっ・・・・つとむ! どうしたんだよ! 最近滅多に顔を出さないじゃねぇか!!」

「色々と忙しかったんだよ」

「そうか。・・ところで、お前学校は? フケてきたのか?」

「ちげぇよ。休みなんだよ」

 目的の場所へ来た俺は、店入ってオッチャンと会話をし、適当に見て回ることにした。

 この服屋は商店街の中で二番目に広い敷地面積(一番目はゲーセン)。そして、副業として物理研究者をやっていたりする。普段を見る限り学者なんて想像はつかないが、何年か前に偉い賞を取ったとかで商店街をあげての大セールをやっていたのを見たり、たまに年老いた学者っぽい人が服屋に来たりするので、嘘ではない。(ちなみに、物理は服屋のオッチャンに教わったのでもはや大学レベルの知識を持っていたりするが、本人は気付いていない)

 とりあえず五、六着は無いと駄目だなぁと思いながら物色していたら、「おいつとむ。こっち来い」と手招きしてきたので、どういう用があるのか知らないが行ってみた。

「何か用か?」

「おう。ちょっとそこに立ってろ」

 そう言われて、俺はレジの近くで立ちながら、奥へと消えていったオッチャンを待つことにした。

 三分後。

 オッチャンはメジャーとメモ帳とボールペンを持って現れた。そしてメジャー以外の物をレジの近くへ置き、

「じゃ、採寸するぜ」

 と言って俺の体にメジャーを当てた。

 一体どうしてこんなことをするのか訊きたかったが、表情が真剣だったのでこれが終わったら訊くかと思い、身動ぎせずに立ったまま待った。

 採寸が終わったらしくオッチャンが奥の方へ消えていったので、俺はもともとの目的を達成するために店内を見て回った。

「お~い、つとむ~。ちょっくらこっち来てくれ~」

 目ぼしいものを何着か見つけ(ズボンも含む)、買ってこうかな~と思ったら、奥から出てきたオッチャンが俺の事を呼んできたので、仕方なくさっきの場所へ向かった。

「さっきからなんだ? どうして俺の採寸を取ったりしてるんだ?」

 俺がそう訊くと、何やら奥の方から持ってきたのか、オッチャンはレジの上に紙袋を置いた。

「これは?」

「お前さんのスーツだよ。礼服用とサラリーマン用の二つが入っている」

「頼んだ覚えがないんだが」

「ま、だろうな。こりゃ俺が勝手に作ったものだからな。採寸をやっていなかったから今やっただけ。あ。代金はいらね。昔世話になった礼だし。勝手に作ったものだし」

「・・・・・・ありがたくもらっとくが、使うかどうかわかんねぇぞ?」

「じゃ今着ろよ。どんな姿かみてみたい」

「単純に趣味じゃねぇか。前にもこんなことなかったか?」

「まぁ気にすんなって」

 という訳で、服屋のオッチャンが完全に趣味でつくったスーツを着ることになった。服買いに来ただけなんだがな。


「こんな感じか?」

「おっ。似合ってるじゃん。どこぞのマフィアに属してるかと思っちまった」

「それ、褒めてるのか?」

 試着室でスーツ(礼服)に着替えオッチャンに見せたところ、褒められてるのか分からない言葉が返ってきた。

 しばらく俺を見ていたオッチャンだが、

「やっぱり間違っちゃいなかったぜ! それやるわ!」

 納得したようにそう言って、レジの方へ戻った。

 ってか、スーツはありがたいが着る機会が早々ないんだが。ていうか、元々私服を買いに来たんだが。

 上機嫌で戻っていくオッチャンを呆れながら見た俺は、あんな顔されちゃ断るわけにもいかねぇしどっかで着る機会があるだろうと思い、私服に着替えてからスーツを丁寧に畳んだ。

 それから私服を数着(上下含む)買い、オッチャンが「いつきちゃんとどっか出掛ける時にあのスーツ着てくれ!!」と店を出る前に言ってきたので、「ふざけんじゃねぇ!!」と怒鳴って店を出た。

 それからとくに巻き込まれることなどなく家に戻り、買った服とスーツをタンスに入れ、昼食を食べ、財布の残金が厳しいことに気付いたから通帳と判子を持って銀行へ向かった。

 ・・・・・・素直にATMへ向かえばよかったと後悔することになろうとは、その時の俺は全く思わなかった。



「おとなしくしろっ!!」

「不審な動きをしてみろ! 撃つからな!!」

 自転車で五分(いつきに言わせると普通のやつだと三十分)くらいのところにある支店銀行へ入って順番待ちしていたら、真正面から銀行強盗(数は二人)が銃を俺達に向けながらそう言ってきた。

 一部の従業員は驚きそうになっていたが、俺含めこの町の地元の奴らは平気な顔をしていた。

 あまりにビビらないのに犯人側が怒って天井に銃を向けた時、俺達はすぐさま行動開始。

 まず俺が二人の拳銃を蹴飛ばす。呆気に取られた二人に対し、次に地元の奴らが背後をとり腕関節を決めた。そして地元出身の従業員は縄で拘束。この間わずか四十秒。

 何が起こったのか分からないという顔をしている一部の従業員と犯人達に対し、ここの支店長は言った。

「この町で銀行強盗しようなんて、自首するのと同じだぜ? たかだか二人できやがって。ここも舐められたものだ」

 それから警察を呼んだのかパトカーのサイレンが近くでなり、俺達は普通に先程の様に順番待ちをしていた。

 そして犯人は連行され、その場にいた全員は何事もなかったかのように順番待ちをしていた。

「おいつとむ。また腕上ったんじゃないか? モーションが見えなかったんだが」

「年取って見え辛くなったんじゃねぇのか? 俺は最近喧嘩らしい喧嘩してないから」

「お前に挑もうなんて命知らず、それこそお前の親父か本宮のSPだろ」

「確かにな」



 銀行で金を降ろし、それを財布に入れて家に帰る途中、見知ったやつがナンパされてた。

 まぁ、ナンパされるなんてのはどうでもいい。すげぇどうでもいい。

 ただ、されてる相手ってのがすっげぇ面倒な奴だった。

 どうしようか考えたが、今にもナンパした方がキレそうだったので、迷っている暇などなく向かうことにした。

「どうして分からないのです? あなたたちの脳はサル以下ですわね」

「さっきから言いたい事言わせとけばこのアマァ!」

「あ~、止めといたほうがいいぞ。一応そいつ、いつきと同じで金持ちだから」

「「「こ、皇帝!?」」」

「皇帝・・・? この一般がですの?」

「あんたは少し黙ってろ。・・・・・・・ってわけだ。こいつの事は任せてほしい」

「こ、皇帝がおっしゃるのであれば・・・・・・」

「すまねぇな。今度カチコミ行く時があれば呼んでくれ」

「い、いえ! そ、そんな滅相もございません!! では!」

 そう言ってナンパしていた奴らは去って行き、俺は何故か不機嫌そうなこいつ―――篠宮ルカの方を向いてどうしてこんな所にいるのか訊くことにした。

「で? 何か用か?」

「用なんて特にありませんわ。ただ撮影の合間に町を散策していただけですわ。・・・・そういうあなたはどうしてこのような所に?」

「ここは俺の地元で、銀行からの帰り道なわけだが。・・・・・っておい。撮影だと? この町でか?」

 俺がそう訊くと篠宮はハァッとため息をついてから答えてくれた。

「あなた地元なのに知らなかったんですの? 私が出演するドラマの最新話をここで撮影することを。やっぱり、一般ですわね」

 なるほど。この町で一話撮影か・・・・・・・・・・・・。

「あいつらには自重してもらいたいな、うん」

「あいつらとは?」

「気にするな」

 そう言われても気になるという顔をしていたのが分かったが、俺はそれに答えず「時間大丈夫か?」と訊いた。

 篠宮は腕時計を見て「あら、もうすぐ撮影場所へ戻らないといけませんわ。というわけで、そこの一般。道案内しなさい」と偉そうに言ってきた。

「勝手に戻れ」

 態度にムカついた俺は、そのままそいつから離れた。さっさと家かえろ。

 んで、家に帰った俺を出迎えたのは、お袋と爺さんだった。

「なんでここにいるんだ?」

「こら、学園長さんにその言葉遣いは失礼でしょ? って言ったところで治るわけないのは知ってるけど」

「邪魔しとるぞい」

 それから、お袋から爺さんがどうしてここに来たのか話を聴いた。

 話を聴く限りどうも合宿でのことについての話という事で、お袋には席を外してもらった。

 お袋が席を外したのを確認して、爺さんはお茶を飲んでから言った。

「この度の合宿、ご苦労じゃった」

「別に。それより爺さん。訊きたいことがあるんだが」

「何じゃ?」

「緑川の親父さんの入院費。あれ、どうなった?」

「ああ、あれか。あれは儂があげたわい。どうせ老い先短い老いぼれが持っていても無駄になるだけだからなのぉ。あとは、謝罪の意味をこめてじゃ」

「そりゃ良かった」

 割と気がかりだったことが解決していたので、俺は安堵していた。

「では今度はこちらから訊こうかの」

 俺の安堵した姿を見て、今度は爺さんが訊いてきた。

「お主。あそこで普通に過ごしていたが、カメラに気付かなかったのか?」

 俺は、そういやそんなものあったなぁと思いながら答えた。

「気付いていたに決まってるだろ。だから、『普段の振る舞い』の演技をしていただけだ。確か…テーブルがある方の隅だろ? 上手く隠していたようだが、バレバレだ」

「なんじゃと! ・・・・・・・いや、あり得ぬ話ではないか。お主だったら、それくらい難なくやりそうじゃ。・・・・・・・・・しかし、ということは、お主のレベルが他の生徒より遥かに違い過ぎることになる。何という怪物じゃ・・・・・・・・・」

「人の事とやかく言うなよ。ていうか、怪物ってどういうことだ? 確かにここじゃ今はほぼ負けなしだが、殺し屋と出会ったら、俺死ぬぞ?」

「そういう意味ではないのじゃが・・・・・・・・・・」

 じゃぁどういう意味なんだよと訊きたかったが、俺はぐっと堪え爺さんの言葉を待った。

「ともかくじゃ。お主の才能を見極めることが出来たわけではないが、レベルが一流を凌ぐかも知れないのはわかった。そのようなものを出演させないのは、業界にとってはマイナスになる。というわけじゃが」

「却下。無理。拒否。そこで止めとけ。出演依頼全部拒否ってるんだから」

「お主に名刺を渡したはずじゃが?」

「あれは一応保管している。捨てる気だが」

「それではお主は、この学校を卒業したらどうするのじゃ?」

「大学に行くが?」

 何当たり前のこと訊いてくるんだこの爺さん。なんて思いながら答えたら、「事前に訊いて良かったわい」と頭を抱えそうになりながら呟いていた。どうしたんだよ、一体?

 それからしばらく話をして、爺さんが帰ると言ったので玄関まで見送り、リビングに戻ったらお袋に「買い物行ってきてね」と言われ、買い物袋と買うものが書かれたメモと金を渡され行く羽目になった。


 ま、そんなこったろうと思ったが。


 自転車でスーパーへ向かい、そこで買うものを買い、商店街へ向かった。

 わざわざ商店街へ向かう理由は、そっちの方が安いし近いから。でも卵を買っているので自転車を押さなくちゃいけないことを考えると、二度手間だよなぁと思ったりする。でも行くが。

 自転車を押しながら商店街へ向かっていたら丁度時間だったらしく、中学校から下校する奴らの姿がちらほら見えた。この町には小学校と中学校と高校(一校ずつ)がある。大学はさすがになく、一番近くてムサシ町にある公立大学(割と珍しい)ぐらいだな。

 ま、そんな訳で、この町に住むという事は一校しかない小学校、中学校、高校(いや、高校はどこでもいいのか)に通わなきゃいけない。となると、必然的に同じやつらと学校生活を過ごすという事だ。ある意味退屈するものだ。

 下校している奴らを見ながら商店街へ向かおうとしていたら、

「あ、お兄ちゃん! 買い物の帰り!?」

 友達と一緒にいるはずの茜が俺の姿を見ただけで声をあげながらこっちに来た。おい、大声出すな。他の奴らがキョトンとしてるだろ。

 俺はもう無関係を装って無視することにし、そのまま反応せずに素通りすることにしたが、それを茜が許すはずがなく。

「無視しないでよ!」

 と言いながら近くまで来てしまった。

 たくっ。友達と一緒に帰る予定じゃなかったのかよ。そいつら呆気に取られてるぞ。なんて思いながら、俺は嬉しそうな顔をしながらついて来る茜に言った。

「お前普段あいつらと帰ってるんだろ? どうする気だよ?」

 そしたら茜は何かを思いついたかのように顔を明るくし、さっき一緒にいた奴らに向かってこう言った。

「一緒に帰ろうよ! 大丈夫! お兄ちゃんは優しいから!」

 その言葉を聴いたそいつらはどうしようか悩んだみたいだが、俺が何も反応を示さないのをどう取ったか知らないがついてきた。

 俺、買い物の途中なんだが。なんて思ったが、冷凍食品とかはさっさと持って帰らないといけないかと思い直し、このまま家へ一旦帰ることにした。

 その道中。

「え!? お兄ちゃん買い物の途中だったの!?」

「商店街へ行く途中だったから途中と言えば途中だな。・・・ま、気にするな。冷凍食品とかあるから家に帰ろうと思ったし」

「ご、ごめんね」

 という会話をしていたら、茜の友達その一(確か、悠乃と言っていた気がする)が俺に話しかけてきた。

「あの、茜のお兄さんってどこに通っているんですか?」

 その質問に、俺はどう答えようか逡巡してしまった。しかし、そんなことなどお構いなしに茜が答えてしまった。

「お兄ちゃんは、くれな町にある私立スミレ学園に通ってるんだよ」

 その答えを聴いた茜の他の友達が驚いた。言わなくてよかったんだがな…………。

 それから、怒涛の質問タイムが始まった。仕方なく答えることにした。

「学科はなんですか!?」

「タレント育成学科」

 今更だが、あの学校の学科は三つ。俺達のタレント育成学科、カメラの撮影などについて教える映像学科、衣装・メイク・大道具・小道具と一括りにしてはならないものをまとめた裏方学科(この名前はもはや悪意があるのではないかと思う)。

 で、映像学科だけ専用の校舎が無いらしい。それは単に予算が無いわけではなく、講義をテレビ局の一室を借りてやったり、撮影の練習を俺達の学科でやったりしているからだそうだ。(予算が無いのではないか? と思うだろうが、一番お金がかかっているのが映像学科だったりするらしい)

 話を戻そう。

「だったら光さんと会ったことはありますか!?」

「ああ」

「どんな人でしたか!?」

「どんなって……まぁ最初の方はオドオドしていたようだが、最近は自信でもついたのか生き生きとしているみたいだな」

「じゃぁ、白井美夏さんは!?」

「あいつは……どこか天然っぽいけどな」

「どうやったら入れるんですか!?」

「・・・・・・・・・」

 この質問を受けて、俺は沈黙した。そして、俺の沈黙を受けて茜の友達たちも不意に黙った。

 この質問だけには、俺は答えられない。なぜなら、本来入学する気が無い学校に入っているからだ。しかも、いつきが勝手に送ったのでどういう事が書かれていたのか全く分からない。

 それから少し沈黙が流れたが、俺は一つ訊きたいことを思いついたので訊くことにした。

「訊きたいことがあるんだが、良いか? 実際に俺と会ってみてどうだ?本音で構わないから」

 さっきから凄いはしゃいで訊いてくるものだから、俺がどう思われているのか気になった。

 自慢じゃないが、俺の第一印象は「怖い」か「不良っぽい」の二つしかない。というか、それ以外の感想が無かった。

 怯えられているんだろうなぁと思いながら答えを待っていたら、最初に質問してきた子が最初に答えてくれた。

「噂より怖くないです。むしろ茜ちゃんが言ってる通り、優しい方だと思いました」

 それから他の奴らも同調するように頷いた。

 初めて聴く感想に俺は驚いてから、「そうか。ありがとよ」と言って黙った。

 それから茜とその友達が話しながら歩き、家が近くなったという事で別れることを繰り返したら、茜と二人だけになった。といっても、家がもうすぐだったが。

 家に入りお袋に「商店街で残り買ってくる」と言ってスーパーで買ってきた物を押し付け、家を出て自転車の鍵を開け、急いで商店街へ向かった。


 商店街に着いて買い物をしていたら(自転車は押している)、魚屋のオッチャンが話しかけてきた。

「そういやよ、今日撮影やってるんだぜ、この町で」

「知ってるよ。さっき聞いた」

「なんだ。・・・・・・じゃ、これは知ってるか? もうすぐこの商店街が使われるってこと」

「マジでか?」

「ああ。今四時半くらいだろ? あと二十分もすればテレビ局の奴らが来る。で、ここでドラマのシーン撮影だとさ」

「あんた達は?」

「普通営業」

 そう言ったので、じゃ、その魚。はいよ、七十六円。という会話をして魚屋での買い物を終了した。

 買い物が終わったので帰ろうとしたが(自転車に乗ろうとしたら)、本当にテレビ局の奴らが来た。仕方がないので俺は裏道を通って気付かれないように帰ることにした。



 その日の夜。

 自室で明日の準備をしながらそういや来月テストなんだっけと思っていたら、電話が鳴った。

 着信を見たら「篠宮レミ」と書いてあったので、珍しいなと思いながら電話に出た。

「もしもし」

『よくも無視して帰りましたわね!?』

「なんだ、篠宮さんか。あれはあんたの態度に問題があったんだが。・・・・それを言うために電話してきたのか? だとしたら、暇だな」

『そんな訳ないですわ。あなたに時間をかけるほど、私は暇でないですの』

「さいですか」

『それでも、あなたに会ったら言いたいと思っていたことがあったんですわ』

「さいですか」

『まぁこちらが勝手に言うだけですから真剣に聴く態度が無くても許しますわ。……私は貴方のことを少しだけ認めますわ。色々と話は合宿中に聞きましたし、何よりその行動を知っていますから。……い、言いたいことはそれだけですわ!! それでは!(ピッ)』

「・・・・・褒められたと取っていいんだよな。でも一体どういう心変わりだ?…ま、そんなことはどうでもいいか」

 そう呟いた俺は、そういやレミってメール派だったなぁと思って明日の準備をして、寝た。


 翌日(五月二十四日・火曜日)。

 いつものように教室に入ったら、なぜか俺の事を見てきた。

 その視線の意味が分からずにいつもの席に座ったら、隣に座っていたいつきが話しかけてきた。

「おはよう」

「ああ。……ところで、どうして俺の事を見てくるんだ? 合宿行かなかったからか?」

 俺がそう訊くと、いつきは苦笑しながら「それはないよ」と言ってから黒板近くの掲示板を指差した。

「あそこを見ればわかるよ」

 なにやら意味深な言い方だが、俺は素直に掲示板に向かい、そこに貼ってあるものを見ていった。そして、その一つにテストについての内容があった。


『六月に実施される期末テストの内容


 六月二十日から二十四日の五日間、クラス全員でドラマをつくること。五日以内に完成できなければ、七月一杯はそのクラスを補習とする。

 なお、このクラス、Eクラスの台本は『明日よ輝け!!』とし、配役は台本通りとする。そして台本の配布は、来週の月曜日とする。



 最後に、以下のものは今から校長室へ来るように。


 八神つとむ』 


「ハァ!?」


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