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アイドルッ!  作者: 末吉
第四話~八日目から十三日の出来事(及び風井翠の回想)~
67/205

4-10 十一日

最近お気に入りが増えて嬉しいです。理由が分かりませんが。

 十一日目。

 翠が体調を崩した。まぁ、あんな変則的なスケジュールじゃ、体は壊すわな。

 熱は無く、気怠さがあるらしいので、寝てれば治るだろうと思い寝袋の中に寝かせた。

 寝るまで俺は翠のそばにいて、寝たのを確認してから山菜取りに山に出かけた。

 色々と使えるものを取っていたら、動物の鳴き声がした。

 俺はどうかしたのかと思い、その鳴き声がした方向へ向かった。その間にも、山菜を採っていった。

 着いてみたら、小熊が罠にかかっていた。どうやら、熊を退治するために罠を仕掛けていたらしい。

 こっち側にも被害が出てるからこうやって罠を仕掛けているんだろうなぁと思いながら、俺は周囲に人影が無いことを確認して罠を外した。

 外してみて判ったことだが、どうやらこの罠は大分前に仕掛けて以来忘れられていたらしい。

 その間に草木が成長したため、罠を隠してしまっていた。

 俺は罠から外れた小熊に、「さっさと逃げろ」と言った。

 その小熊は、俺が言ったことが理解できたかどうか知らないがそのまま走り出した。

 俺はそれを見届けずにログハウスへと戻っていった。


 ログハウスに戻った俺は、とりあえず昼食をつくり、食べ、片付けた。

 俺も寝ようと思ったが、翠が気がかりなので寝られず、爺さんに「今日監視しないから」と連絡をして、今日は普通に過ごすことにした。

 久し振りにこんな時間が出来たので、俺は筋トレをすることにした。今じゃたまにやるくらいだが、昔は毎日やっていた。その度に筋肉痛が襲ってきたが、それでも昔は頑張った。そうでもしないと死ぬかもしれないと、分かっていたからだ。

 そう考えるとさっきの小熊も昔の俺と似てるんだなと、筋トレをしながら俺は思った。あいつは今頃親熊の元に戻ったのだろうか、とも。

 一通り終わったのでシャワーを浴びようとしたら、外で物音が聴こえた。

 俺はとっさに身構えてから気配を探った。う~ん。数は四。足音がガサガサと言う音から、おそらく大きい動物だろう。

 俺はまだ音がしているのにもかかわらず外に出た。その時、物音の正体が分かった。

 なんと、初日で遭遇した熊だった。しかも、ついさっき助けた小熊もいた。

 俺の視線に気付いていたらしい熊の親子は、俺を見てからすぐさま俺の隣の方へ視線を向けた。

 一体どういう事かとその視線の方向を見たら、何と果物が置いてあった。きっと、さっき小熊を助けたお礼だろう。

 その証拠に、果物が置いてある辺りに熊の足跡があった。

 俺は果物から熊の方へ視線を戻した。しかし、熊の親子はもう二頭の熊と一緒に何処かへ行ってしまった。

 熊も案外義理堅い奴なんだなと思いながら、

「ありがとよ」

 熊が去って行った方向へお礼を言った。ちゃんと、手を振りながら。

 果物をログハウスに運び込んでから、シャワーを浴び、体を拭いてから外に出て、練習をした。

 練習とは、まぁ喧嘩するときに使う体術の練習のことである。流派は無い。完全に我流。それでも俺があの町でやっていけたのは、親父たちとの喧嘩で我流ながらも洗練されたからだろう。

 一時間くらいやって、俺はログハウスに戻った。それからもう一度シャワーを浴びた。

 シャワーを浴びてから着替え、部屋に戻ると、翠が寝袋から出てきていた。

「大丈夫なのか?」

 俺は、翠の方へ歩きながら訊いてみた。

 翠は俺の方を見て力なく笑いながら「大丈夫」と言った。

 心配だなと思った俺は、翠を椅子に座らせ(その時何故か翠の頬が赤くなった)、俺も隣の椅子に座った。

 俺が隣に座ったことに驚きながら、嬉しそうに翠は俺の方へ椅子を近づかせた。 それを俺は、何も言わずにいた。

 しばらくそうやっていたら、その空気に耐えられなかったのか翠が俺の方を見て言った。

「…今日はどうしたの? いつもより優しいね」

 俺は、翠に視線を向けずにこう言った。

「俺は病人や怪我人には優しいんだよ。見捨てられないからな」

 それから、俺はテーブルに一皿置いた。

「これは・・・・・・・昼食?」

「ああ。最近この時間帯でも寝ていたりするからな。それに対するお礼だ」

 そう言って俺は箸を翠の前に置いた。自分で食べてもらうつもりだったからだ。

 だが。

 翠は箸を見たまま食べようとしなかった。その時に俺は、茜が風邪を引いた時を思い出した。

 あの時、お袋が『料理できたから茜に持って行ってね~』と言って俺に料理を持たせ、茜の部屋に(強制的に)行かされた。

 そして部屋に入って食事を置いた時に言われた一言が確か・・・・・・・。

「ねぇ、つとむ」

なんて思い出していたら、翠が俺の方を見て言ってきた。

 俺はこれから言われるであろう言葉を予想しながら、訊き返した。

「なんだ? 翠」

 翠はうつむきながら頼んできた。

「え、えっとね? た、た食べさせて、ほ、欲しいんだけど・・・・駄目かな?」

 俺は、やはりかと思って溜息をついてから答えた。

「いいぜ」

「え!?」

 まさか了承してくれるとは思わなかったのか、翠は勢いよく顔を上げた。その顔には、驚きの他に嬉しさが混じっていた。

 俺は頷きながら、

「言ったろ? 俺は病人や怪我人には優しいんだ。食事を食べさせるくらいなら、お安い御用だ」

 と、言った。まぁ、茜の時に大分懇願されたし、悪化したら大変だと思ったから、それくらいは普通にやる。男だったら・・・・・・・一応やる。実際、地元で過去二十人くらい風邪の面倒を見た。その全ては、体質によって巻き込まれたものばかりだが。

 俺の言葉に少し考えてから、「…じゃ、じゃぁ、お願いするね?」と、細い声で翠は頼んできた。

 俺は、箸で料理を取り翠の口に近づけた。翠は、目を閉じて口を開けた状態になった。俗にいう「あ~ん」という状況の完成だ。

 これをやると思うんだが、茜と言い、翠と言い、どうして目を閉じるんだ? まぁ、何か理由があるのだろうから、詳しくは考えないが。

 で、そのまま箸を口の中へ入れて口が閉じる前に箸を取り出した。それを何回か繰り返したら、皿にあった料理は無くなった。

「どうだった?・・・・って訊くまでもないか」

 翠に感想を訊こうとしたが、満足そうにしているのを見たら訊く必要が無いと思えた。

 俺はそのまま皿を洗っていたら、翠がいつもの口調で言った。

「ふぃ~。なんか体調がよくなったよ。ありがとうね、つとむ」

「早いな、おい」

「やっぱり、つとむが愛をこめてくれたからかな?」

 片付けた俺に翠はそう言ったので、俺は首を傾げながら「そうか~?」と言った。生憎だが、愛を込めたつもりは全くないんだが。

 それを見た翠は頬を膨らませながら、「そこは嘘でも頷くところだよ」と言ってきた。それでも俺は「いや、込めていないもので頷けないんだが」と言った。

 それからしばらく言い合ったが、俺の方へ電話が来たので一旦やめることになった。

「誰からなの?」

「爺さんから」

「そう」

「(ピッ)もしもし」

『どうしたんじゃ? 今日監視をやらぬとは』

「翠が体調不良になりかけたから。ま、問題が無いと分かったからできる。というわけで、もう寝るわ。じゃ(ピッ)」

 電話を切った後、俺はキッチンの方へ歩いて床に寝そべった。

 それを見た翠はなんだか不満そうな顔をしながら、こう言ってきた。

「今日やらないんじゃないの?」

俺は床に寝転がってからまぶたを閉じて、言った。

「お前がよくなったんだから、心配しなくていいだろ。元々、監視でここにいるわけだから、最後までやる。暇だとしてもな」



 それからちょっとして、つとむは寝た。

 それを不満そうに見ながら近づく翠の顔には、心配そうな表情が少しだけあった。

「つとむ。君はそうやって何もかも一人で背負い込むには、何か理由があるの? それだけの価値があるの? 何でもかんでも一人でやるなんて、私には無理だよ……。君はどうしてそんな平然としていられるの?」

そう言いながら、翠はつとむに覆いかぶさるようにもたれかかった。

 その時、ログハウス内ではすすり泣く声が聴こえたという……。


三幕ですが、まだまだ途中です。筆が止まっているのが本音です。

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