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アイドルッ!  作者: 末吉
第四話~八日目から十三日の出来事(及び風井翠の回想)~
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4-4 気付く側と衣装の話

 その日の夜。

「はぁ。今日も疲れた。あ~もう八日目か~。まったく、つとむの奴はまだ来ないのかな~」

 露天風呂に入りながら、いつきはそんなことを呟いた。ちなみに、覗こうとした男子は二日目に粛清され、もう一度六日目にやろうとしたが同じく粛清された。そのせいか、男子部屋全部に監視の先生がついていた。

 という訳で、安心できる環境になった、らしい・・・・?

 まぁそれはともかく。

 そんなことを呟いたら、いつきの隣に入った光が反応した。

「ですよね! つとむさんが全く来ないのがおかしいです!」

 どうやら、つとむが不在な上遅れて来ると言いながら姿が見えないのが不満らしい。

 いつきはそれに頷きながら、

「そうなんだよね。電話にも出ないし、メールも返事が来ない。人がどれだけ心配してるのか分からないのかな?」

 と言った。

 どことなく怒っている感じがしたので、光は訊いてみた。

「つとむさんと何かあったんですか?」

 余りにも直球過ぎる質問に、いつきは言葉を詰まらせた。

「何の事かな?」

「誤魔化さないでくださいっ。いつきさんはつとむさんの事になると感情的になるじゃないですか」

 光にそう言われたので、いつきはムッとなって反論した。

「そんなことないよ」

「ほら。感情的になってますよ」

 反論した結果、墓穴を掘った形となったいつき。それでむくれたいつきに、光は再度訊いてみた。

「で? 何があったんですか?」

 尚も訊いてくる光に、いつきはため息をついてから合宿前の光が出て行った後の話をした。

 話を聴いた光は、

「それはすみませんでした。でも、幾らなんでもつとむさんがそんなこと言いますか?」

 ふと疑問に思ったことを訊いてみた。

 しかしいつきの態度は冷たく、

「言うよ。つとむはそれくらい平然と言えるんだ。まったく、いつも助けてあげるのは………」

 言いかけたが、ふとそこに引っ掛かるものがあった。

「いつきさん?」

 どうかしたのだろうかと思い名前を呼んだが、

「助ける……つまり頼る……頼らないから……ああ!」

 いつきは何やら思い至ったようで、声をあげながら立ち上がった。

「ど、どうしたんですか!?」

 いきなりの行動で驚いた光は立ち上がったいつきに訊いてみたが、答えが返ってこなかった。

 ただ、いつきはそのあと力なく崩れた。「やっちゃった………」と言いながら。

心配になった光が声をかけようとしたら、他の女子たち(一年)が「光ってお肌綺麗だよね~」「そうそう。どうやって手入れしているの~?」などと言いながら光に集まってきたので、いつきとは離れてしまった。


 いつきは、そのままトボトボと風呂から上がった。



「ヘックシュン!」

「誰か噂でもしてるのかな? いつき君……あ、いつきちゃんか。いつきちゃんあたりだったりして」

 俺が双眼鏡で木のてっぺんから監視していたら、くしゃみをした。それを聴いた俺より下にいる翠が、そんなことを言ってきた。

 どうも、ここにいたいと宣言してからやる気があるようで、俺に『今夜も監視の手伝いするから、絶対に起こしてね! 起こさなかったら、ここにいることばらしてやるから!』と脅迫めいたことを言ってきやがった。

 俺は、いつき以外にもたくさんいるんじゃないかと思ったが、思いつく限りじゃ女子の方が多く、言ったら変なことになりかねないと思い、黙った。

 監視役は基本的に暇だ。異状が見えた時に報告するだけだから。

「今日も平和だな」

「そうだね」

 双眼鏡をのぞきながら、俺達は暇な時間を過ごしていった。


 監視を始めて二時間。翠はダウンしそうになっていた。仕方ないので、翠を抱えて一旦下へ降り、ログハウスの中に入って寝袋の上で翠を寝かせた。

 さて戻るかと思った時に、ケイタイが鳴った。

 どうやらメールのようで、送り主は爺さん。内容を見ると、翠については連絡を入れておいた。最終日まで預かってもらっていいと言っていた、と書かれていた。 更に、肝試しに着る衣装についても書いてあった。それにどうやら翠も驚かす側に参加するらしく、候補として挙げられていたのは、


狼男

ヴァンパイア

マフィアのドン

忍者

黒田坊


だった。

 俺はこれを見た瞬間、大声で怒鳴ってやろうかと思ったが、ばれる危険性があるために何とか堪えた。

 が、心の中では爺さんの事を殺したいと思った。

 だってよ、明らかに妖怪じゃないものが二つ混じってるんだぜ?しかも、俺の特徴を考慮したんだろうが、それにしたってありえないだろ。

 俺は、まさか翠のまでおかしなものじゃないだろうなと思って、続きを見てみた。そこに書いてあったのは、


毛倡妓(けじょうろう)

口裂け女

サキュバス

羽衣狐

座敷童


 だった。

 俺は一瞬笑いそうになったが、翠が起きたらまずいと思って笑いをかみ殺した。

 サ、サキュバスって。いくら役者な上に美人だからって、要求が高いんじゃないのか?

 そう思ってふと考えた。脅かし役の女性って、怖いものあったっけ?

 しばらく考えて出した結論は、メイクとやる人によって怖くなるんじゃね? だった。怖がらせる気があるのなら、本気で怖がらせないと駄目だな。うん。

 結論が出たのでスッキリした俺だったが、監視役を忘れていたので、急いでさっきの場所へ戻った。


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