4-3 八日目
反動か知りませんが、短いです。
八日目の朝。
俺はふと爺さんに電話したくてケイタイの電源を入れた。理由は、最終日にやる肝試し(時期外れ)について。
翠はまだ寝ていた。昨日の昼間からずっとだ。余程寝ていなかったのだろう。
電源が入ったので、爺さんに電話することにした。
「もしもし」
『つとむか! 丁度お主に話したいことがあったんじゃ!』
「俺もだ。肝試しって、何するんだ?」
『単にわしらが驚かすだけじゃ。ちなみに、衣装はお主に選ばせるが、それは十三日目の夜にでもしてもらおうか』
「メールで衣装の名前送ればいいだろう。・・・・・で? 何か用か?」
『それもそうか。・・・・・風井翠の記憶が完全に戻ったんじゃろ?』
「ああ」
『で? 様子はどうじゃ?』
「寝てる」
『そうか。実をいうとな、二日目に翠の父親から電話があったのじゃ。何とかはぐらかしたが、多分探しておるようじゃ。まぁ、何とかしてくれ』
「それだけじゃないだろ?」
『うむ。一部の生徒が、お主が来ないことを心配しているのか、どうも探しておるようじゃ。頑張ってばれないようにしてくれ』
「それだけかよ。・・・・ちなみに、肝試しの場所は?」
『お主がいる山じゃ』
要件をすべて聴き終えたと思って肝試しの場所を訊いたら、俺がいる場所だと言ってきた。
「アウト――――!!!」
『どうしたんじゃ!!?』
「どうした、じゃねぇ! どう考えてもばれちまうじゃねぇか! それを何とかしてくれ? 出来るわけねぇだろ!!」
『大丈夫じゃ。お主がいるところはコースではないからな。それじゃのぅ』
「おい!! ・・・・チッ。切りやがった。クソ、面倒だ」
電話が切れたので俺は朝ごはんをつくろうとしたが、昨日かかってきた電話とメールがケイタイにきた。
俺は誰だか予想はついていたが、とりあえず確認することにした。
電話はいつき、美夏、光の順に四回くらいきていた。メールは、美夏に光にいつき、それとどうしてだか茜からきていた。内容は、どこにいるかというものだった。俺はふと返そうか悩んだが、はぐらかそうと思い、返さなかった。
再びケイタイの電源を切って、俺は朝ごはんをつくることにした。ハァ。爺さんに電話したのがまた面倒なことになった気がしたぜ。
朝ごはんをつくっている時、翠は起きた。どうして俺の横にいたのか訊きたかったが、それを訊いても意味がないと思ったので、俺は翠に顔を洗ってもらうようにした。
朝食を食べながら、俺はふと翠に訊いてみた。
「なぁ翠」
「なに?」
「お前、これからどうする?」
すると、翠は食事を止めた。
「えっと・・・」
「記憶が完全に戻ったということは、もうここに居なくても良いだろう。それに、お前は仕事もあるだろう? あと、これは爺さんが言っていたが、お前の親父が捜してるみたいだしよ」
俺は食べながら、爺さんから聴いた話をした。
そしたら、翠は少し黙った。食事も停まっていた。俺は食べながら、言いたいことを少しまとめてみることにした。
そうやってまとめていたら、翠が口を開いた。
「・・・ここに居たい」
俺は訊いた。
「そうか。でも、どうしてだ?」
「言わないと駄目?」
「いや。言いたければ言ってもらっても構わない。俺は本人の意思を確認するだけだ」
「じゃ、いうね」
そう言った後、翠は話した。
「ここに居たい理由は、君にお礼を言いたいから。最初に会った時と、君の言葉の」
「最初にあった時って、俺そんなに話した覚えはないぜ? それに、言葉ってなんだよ?」
「気にしなくて良いよ。あとは・・・・・・せ、」
「せ?」
「何でもない! 最後は何でもないから!」
ん? どうしてそんなに慌ててるんだ? そう思いながら、俺は翠が言いたかった結論を言った。
「つまり、翠は最終日までここに居たいのか?」
「うん!」
俺の結論に、翠は笑顔で答えた。その屈託のなさそうな笑顔は、俺の顔を赤くさせるのに十分だった。
「あ! 赤くなったね!」
「うっさい!」




