1-5 休み時間
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「会長。昼休みに食堂で起きた騒動の事ですが」
「早いですね。それで、何が起こったのですか?」
「は。どうにも一年の親衛隊が過剰な行動に出たみたいで」
「それは穏やかじゃありませんね。ですが、その時は丁度昼休みのころだったんですよね? どうして報告が上がってこなかったのでしょう?」
「それは」
「それはですね、同じ一年がその騒動を収めたらしいんですよ。その上、みんなを勇気づける言葉を言っていたそうですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。訊いたところによりますと、その一年は暴力に頼らず、言葉だけで収めたそうです。それに、自分たちの目標を思い出させる言葉を言っていたとか」
「それはそれは…ふふっ。で、誰なんですか、その人は?」
「それが」
「実は、我々でも調べられないんですよ」
「あら? どうしてですか?」
「おそらく、学園側が何らかの理由で情報の封鎖をしているのでしょう。どうしますか?」
「じゃぁ、しばらくは様子見ということで。いいですね?」
『分かりました』
「ふふっ。たのしみですね。どんな人なのでしょう?」
会長と呼ばれた生徒は、楽しそうに笑っていた。
キ~ン、コ~ン、カ~ンコーン!
「ふわぁ~。やっと授業がひとつ終わったぜ」
俺は、欠伸をしながら起きた。すると、
「君は良い神経をしているね。僕だって寝たいと思っているのに」
前からいつきの声がした。
「だったら、寝ればいいじゃんか」
「そうしたいけどね、僕だっていろいろと体面があるんだ。君みたいに外見が不良みたいじゃないからね」
「大変だな」
「ねぎらいという言葉なのか、同情という言葉なのか、判別しにくいね。しかし、 まだ授業は二つあるわけだが、それを全部寝るのかい?」
「当たり前だろ?誰かさんのせいで、思いっきり先まで勉強しちまったからな」
「あれは、君が『受験勉強したいんだが、いらないやつでいいから参考書くれ』と言ってきたんだろ?だから僕は、いらないと思った高校の参考書全教科、三年分を君にあげたんだよ」
「しかし、カバーには『高校受験に必ず勝てる!!』とか書いてあったよな?」
「やってから気付いたんでしょ?どうして返さなかったの?」
「一度貰ったら返しにくいだろ?だからだよ。」
「君は律儀だよね。そして真面目だ。僕があげた本、結局僕に訊きながら、全部終わらせたもんね」
「あれのおかげで、授業が始まって五分くらいで寝れるぜ」
「いや、ノート位は取ろうよ」
そんな何気ない会話をしていたら、急にあたりが騒がしくなった。
「どうしたんだ?一体」
「あれじゃないかな?」
そう言っていつきが指差した方向にいたのは。
身長はパッと見160ぐらい、髪はショートの茶髪、全体的な雰囲気は何処かオドオドしている。顔立ちは、可愛い、の部類に入るんじゃないか?俺は知らんが。体型はとりあえず、どっかのグラビアかと思えるぐらい他の人よりはいいじゃないか? こういうことに関しては俺は知らん。と適当に観察しながら俺は、
「あいつ誰だ?分かるか?いつき」
と訊くと、本日何度目かのため息をいつきが吐きながらこう言った。
「君はこの学校の常識とか、そういうものを調べた方がいいじゃないかい? …彼女が食堂で言っていた、今年の一年生の『アイドル』だよ」
「ふ~ん。名前とかわかるか?」
適当に相槌を打っていたら、
「君は一度、僕に頼らず自分で調べてみてはどうかな?」
声にちょっと怒りが入っていた。正直これはまずいな、何とかしないといけない、と頭を必死に動かしていると、
「あれ?ねぇ、つとむ、彼女がこっちにくるよ?」
「は?」
いつきが言ってきたので顔を上げてみると、確かにこちらに向かって走ってきていた。辺りからは、「なんで光さまが!?」「おい!あいつって、」「一体どういう関係なのかしら?」などと、大変うれしくないひそひそ話が聴こえた。変な噂が流れそうで怖いな、まじで。と思いながら、ふと取り巻きが言っていた一言を思い出した。
「なぁ、いつき。もしかして、あいつが『光さま』か?」
「そうだよ。長谷川光。一年の『アイドル』認定生で、この学校に入る前から色々と仕事をしているみたいだね。スリーサイズは上から、」
「そこまで訊いていない。っていうか、お前のその情報はどこから仕入れているんだ?」
「それは、いくら幼馴染だからと言っても教えられないよ」
「その言葉でなんとなく想像できるから、いい。深くは訊かない」
「それはどうも」
そんな漫才みたいなことをやっていたら、
「あっ、あの、あなたですよね? 昨日、私を助けてくれたの」
いつの間にか目の前まで来て、そんなことを言ってきた。いつきは、その言葉で事情は理解したらしい。俺も理解したが、他の奴らは分からないらしく、頭に疑問符を浮かべている。俺としては、これ以上また何かに巻き込まれるんじゃないかと思い、
「人違いだろ? 俺はあんたとは今日初めて会ったんだぜ?」
思いっきり否定した。