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アイドルッ!  作者: 末吉
第四話~八日目から十三日の出来事(及び風井翠の回想)~
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4-1 風井翠の回想

始まります。

 これは、私がまだ十歳の頃。というか、十歳の誕生日の時。

 親が大々的に私の誕生日会を催した。来るのはみんなお金を持っている人達。

 私はその時浮かれていた。だって、私のためにこんなに人が来てくれるんだから。

 でも、ある人と出会ったことで、私の考え方が変わった。多分、あの人に遭わなかったら私は、今も同じような感じだっただろう。

 彼―――――八神つとむと。


 誕生日会と銘打った大規模なパーティは、とてもうれしかった。だって、こんなにたくさんの人が祝ってくれると思えたから。

 現に、私のところに有名な人がたくさん来ていた。みんなお父さんの知り合いだって言っていた。

 その時にその人達の息子も紹介された。私は、何気なく挨拶するだけだった。それと、少し話をするだけだった。

 私は、父さんに連れられながらいろんな人と挨拶した。そこで自分たちの子供の自慢話をしてる間、私はその子供と話をしていた。会話自体は楽しかった。

 そんな時、父さんの下に部屋の警護をしていたSPがきて、「本宮さまがお越しになりました。どうやら、お連れ様もいるようです」と言ってまた戻っていった。


 本宮、という名前を聴いた時、私は驚いた。お金持ちと言うか、日本中のすべてを取り仕切っていると言っても過言では無い本宮家。そんな人が、私の誕生日会に来るとは思わなかったのだ。

 父さんはすぐにその人との話をやめ、本宮へ向かった。私もついていった。名前は知っているけど会ったことが一度もなく、今日が初めて。だから、興味があった。

 本宮がいる場所はすぐに分かった。人だかりが沢山出来ている所がそうだと、考えて判ったからだ。

 父さんと私は人混みをかき分け、空間が出来ている場所へ出た。そこには、案の定本宮家の人がいた。

 服装は上下黒のスーツ。年下に見えるのに、貫録と言うか雰囲気は、ここに集まっていた人の誰よりも大人びていた。

 顔は、中性的。男にも見えるし、女にも見える。ただ、美形であることには間違いなかった。

 後ろにSPが二人しかいなくて、サングラスをかけていて表情が見えない。私は、天下の本宮家のSPの人数が少ないことを不思議に思った。

 そうやって観察していたら、先にあっちの方が挨拶をしてきた。

「どうも。僕の父、本宮(しゅう)()が別な用で急遽これなくなったので、代わりに来ました。本宮いつきと言います。本日は娘さんの誕生日おめでとうございます」

 年下に見えるのに、実に堂々とした挨拶だったことに私は驚いた。挨拶の仕方が完璧だったという事実が、彼が本宮だという証拠なんだと、私は思った。

 父さんは本宮いつき君の挨拶にキョトンとしたけど、咳払いしてから返した。

「こちらこそどうも。娘の誕生日に来ていただき誠にありがたいです」

 それを聴いたいつき君が、「そう言えば父からプレゼントを預かっていました。・・・持ってきて」と言ったと同時に、後ろにいたSPとは別のSPが一人でプレゼントを持ってきてくれた。それは小さい箱だったけど、中はなんと真珠のネックレスだった(終わった後に開けた)。

 父さんと私はお礼を言い、それから少し話をした。その時に父さんは「そういえば、お連れの人がいらっしゃるみたいですが、その方はどちらへ?」と訊いたら、いつき君は「多分、ベランダにいると思いますよ。今頃空でも眺めているんじゃないでしょうか?」と答えた。ただその後に、「会わない方がいいですけど」と小声で言ったのを、私は聞き逃さなかった。

 いつき君と別れた後、父さんは「一人で行動してくれ。私は色々と話をする人がいるから」と言ったので、私と父さんは別れた。


 一人になった私はこれからどうするか悩んでいたら、いつき君に会うまでに話をしていた子たちが「おい! 今ベランダで甲斐の奴がやってるらしいぜ!」「相手はあれだろ? ここに庶民の服で来てる奴だろ? どうやって侵入できたんだろうな!」「観に行こうぜ!」と話しながら走っていたので、その人がどんな人か興味を持った私は、彼らと同じでベランダへ向かった。


 そのベランダへ行ったら、人だかりが沢山出来ていた。どうやら、先程からそれは始まっていたみたいだ。

 私は、人だかりはかき分けてベランダへ向かった。その時にこんな声が聴こえた。

「どうしたんだお前。さっきからずっとそのままじゃないか。何かしたくてここに入り込んだんじゃないのか?」

 誰かに話しかけている感じがした。私はすぐに話しかけられている人が庶民の服を着ている人だと分かった。

 しかし、相手側は無視しているのか答えなかった。それがまずかったのだろう。

 甲斐、と呼ばれた人は反応しなかった人に対して、とうとう怒ったみたいだった。

「テメェ! さっきから黙ってばっかじゃねぇか!! どうして何も言わないんだよ!? 俺の事おちょくってんのか!!」

 そう怒鳴ってもその人には効果が無いみたいで、何も言わなかった。

 その態度に頭に来たのだろう(実際見ている人達は、ひそひそと黙っている方の悪口を言っていた)、甲斐と呼ばれた子はその人に殴りかかろうとした。丁度その時に私は人混みから脱出して現場に出てきたので、すぐさま「なにしているんですか?」と声をかけた。

 その時になって、どういう状況か正確に把握できた。

 甲斐って子が殴りかかろうとしているのは知っていた。けど、さっきから黙っている子はどういう人だか分からなかった。

 その人は、夏だからか服装は半袖半ズボン。しかも普通の服屋さんで売っているらしいもの。

 だから庶民だなんだと言っていたのかと、今更納得する私。

 その子は、ベランダに座ったまま甲斐と呼ばれた子に背を向けていた。だから、どういう表情をしているのか分からなかった。

 私の声が聴こえたのか、甲斐って子は殴るのをやめ私の方へ寄ってきた。

 殴られそうになった子は、振り向きもせずベランダからの景色を眺めていた。


約一週間ぶりの更新です。

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