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アイドルッ!  作者: 末吉
第二幕・第三話~初日夜から七日目までの出来事
56/205

3-6 二日目ダイジェスト

区切る場所を考えていたら面倒だったのでまとめて投稿。過去で恐らく一番長いかと思います

 ランニングを終えた一年生と生徒会の面々は、旅館で昼食を食べていた。もちろん、二、三年生も。


 昼食を食べた後の今日の予定は、一年生がテレビに出ている二年生以上の話を聴いて、この世界の常識を学ばせるという、一種の講演会をやることになっている。つとむだったら、絶対にサボりそうだが。


 さて、昼食は学年毎ではなく全体で食べることになっている。どうしてこうも食事のパターンがバラバラなんだと言われるが、昼食くらいは仲の良い先輩たちと話すのもよいとの考えらしい。

 いつきの場合、知っている人のほとんどが前から知っていた人だが、その輪に入る気は本人にはないらしく一人で食べていた。いつもはつとむがいるのだが、遅れてるとかなんだかで未だに来ていない。というか、来ないかもしれないというのが先生達の言い分である。


 だが、いつきはこう思っていた。


 この近くにつとむは既に居て、僕たちの事を見ているのではないかと。


 その理由は、本人は知らないだろうけど、遅刻しても最長で一時間半くらいしか遅れていないことをいつきは知っているからだ。

 小学生の時に遠足で遅刻した時、いつき達が着いた三十分後につとむが着いた。どうやってここまで来たのかつとむに訊いたら、喧嘩してたやつらに乗せてもらって此処の近くまで来た、と言ってたのを今でも憶えていた。

(まったく、今回の君はどういう立場になっているのか知らないけど、僕だって心配はするんだからね。・・・・・・でも、嫌われてるんだっけ)

 そう思いながら、どうやってつとむを探すか考えながら昼食を食べていた。


 そんな風に一人で落ち込んだりしているいつきとは対照的に、光は友達と楽しく昼食を食べていた。ただ、時折上の空になったりして食事が止まっていたりしたが。

 彼女もまた、こんなことを考えていた。

(つとむ君、今どこに居るのでしょうか? 講演会をサボって探したいのですが・・・・・・。でもそんなことしたら、つとむ君が嫌がるでしょうね)

 そんな彼女たちを尻目に、学園長は一人で部屋にこもっていた。単純にこもっているのではなく、テレビを見ながらであるが。

「ふ~む。あやつらどこに行ったのじゃろうか? ……声が無いのは欠点じゃが、あったらあったでいろいろ言われるからのぅ」

 そう言いながら、誰もいない部屋の映像を一人で眺めていた。昼食はみなより一足早く食べているため、いらぬ心配である。


 と、ここで学園長の電話が鳴った。


 特に暇なため(つとむが家にいないため)、学園長は誰からか確認もせず電話に出た。

「はいもしもし」

『鯨井か。久し振りだな』

「お主は・・・・・風井じゃったか?」

『今、俺の事忘れてなかったか?……まぁ、そんなことはどうでもいい。お前今、いつもの合宿場にいるんだろ?』

「そうじゃが・・・・・どうかしたのか、それが?」

『ああ。娘の翠が帰ってこねぇんだ。久し振りに休みが取れたから山に行ってくる、とか言ったきりな』

「それと儂がここにいるのとどう関係があるんじゃ?」

『翠が行った山ってのが、お前がいつも合宿の時に使っている旅館の近くなんだよ』

「ふむ。ということは、儂があの娘と会ったことを期待して、電話をかけてきたんじゃな?」

『そうだ』

 その言葉に学園長は、つとむが保護した少女の正体を悟ったが、

「・・・・・・・残念じゃが、遭ってはおらぬ。儂はほとんど旅館に居るのでな」

 嘘をつくことにした。

『・・・そうか。すまなかった。私も探したいが、生憎仕事があるのでな。では』

 学園長の言葉を聴いた風井は、素直に引き下がって電話を切ってくれた。

 電話が切れた後、学園長はポツリとこう呟いた。

「・・・・・・どこかで見覚えがあると思ったら、風井の娘じゃったか。これはこれで面白そうではあるがのぅ。……しかし、つとむの奴遅いのぅ。一体何をしておるんじゃろうか?」


 テレビをに映る無人のログハウス内を見ながら。


 一方、つとむ&翠ペア(山で生活することになった二人、という意味で。)はその頃、

「これ、食べれるんですかね?」

「あ?……無理だ。それは食えない。食ったら一週間くらいは腹痛に襲われるぞ」

「え。そうなんですか・・・?」

「確か」


 昼食の食糧を探していた。

 元々一人で二週間近く過ごすつもりでいたので食料はあるのだが、二人に増えた事で食料の持ちが半分になるとつとむが考えたので、二人で食料を探すことにしたのだが。

「なぁ翠」

「なんですか?」

 俺は頑張って探している翠を見ながら、

「食料なら俺が捜しておくから、お前はログハウスに戻ってたらどうだ?」

と言った。正直、俺はいつきのせいで(おかげで)山に生えてる植物の食べれる食べれない位は分かっている。

 その言葉にみどりはムッとしながら、

「嫌です。八神さんの近くにいた方が安全だと分かったから離れません」

 と自己主張した。


 ヤレヤレ、と思いながら食料を探していたが、呼び方にふと疑問を感じたので、俺は翠に訊いた。

「なぁ翠」

「今度はなんですか?」

「どうしてお前は、俺のことさんづけで呼ぶんだ?俺より年上だろ?」

 その言葉翠は若干悩んでから、

「そういうあなたは私にタメ口ですよね。どうしてなんですか?」

 と逆に質問してきた。それに俺は、正直に答えた。

「ああ。地元で年上相手に喧嘩することが多くてな。その時の口調がそのままなんだ。でも、直したら俺じゃない気がするから、俺は直す気が無い」

 その答えにみどりは若干怯えながらも、

「そ、そうですね。八神さんが敬語を使う姿なんて想像が出来ません」

 正直に言ってきた。その姿は、俺も想像ができねぇな。

 そう思って翠を見たら、あいつも丁度同じことを考えていたみたいだった。俺と視線が合うと、俺達は同時に吹き出して笑いだした。

「そ、想像したら、あまりにも可笑しかったです」

「そうだろ! でもな、こう見えても一応は敬語使うんだぜ?」

「う、嘘!?」

 と、いうやりとりをひとしきりして、俺達は昼食の材料探しをしていった。


「結構見つかりましたね」

「さっさとログハウスに戻って飯つくろうぜ」

 そう言いながら、俺達はログハウスに向かっていた。その時、俺のケイタイが鳴った。

「電話がきてるみたいですね?」

「誰からだ?」

 そう言いながらディスプレイを見ると、『発信者:いつき』の文字が。

 今朝の態度がおかしかったが大丈夫か、あいつ? なんて思いながら、俺は電話に出ることにした。

「もしもし?」

『ハロ~、つとむ。単刀直入に訊きたいけど、君は今どこに居るの?』

 本当に単刀直入だなと思いながら、俺ははぐらかすことにした。

「あ~、まだそっちには着きそうに無い。道に迷ったから」

『ふ~ん? そうなの?・・・・・・・・・・そっか。それじゃね』

 そう言って、いつきは電話を切った。何がしたかったんだろうか?

 少し悩んだが、俺は考えても仕方がないと思い直して翠と一緒にログハウスに戻った。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・何だろう、嫌な予感しかしないんだが。



 電話を切った後。いつきは廊下で一人考えていた。

(電話から聴こえたのは、木々が揺れる音。ということは、山にでもいるのかな? それだったら道に迷ったっていうのにも納得がいくけど・・・・・・・・)

「だとすると、学園長は誰からあのことを知ったのか、ってことになるんだよなぁ。それに、昨日の夜にいたあの子・・・・・・・・。何か関係があるのかな?」

「何が関係あるんですか?」

「!?」

 無意識に呟いたことを聴かれたことにいつきは驚いて声の主を見た。そこにいたのは、

「どうかしたんですか?」

「あ、長谷川さんか。どうかしたの?」

 長谷川光だった。光は、いつきが驚いているのに不思議で首を傾げていたが、すぐさま答えた。

「どうしたのって、もうすぐ講演会が始まるんですよ。行かないんですか?」

 いつきは一瞬悩んだが、

「行くよ。つとむのように遅刻はごめんだからね」

 と言って、光と一緒に会場へと向かった。それでも、つとむがどこに居るのか考えたままで。


 そんなやりとりをしていることを知らない白鷺美夏は、講演会の控室にいる篠宮レミを見かけたので話しかけてみた。

「こんにちは、篠宮さん。なにやら考え事のようですが、ひょっとして新しいドラマの撮影の事ですか?」

 そう言われたレミは顔を上げ声の主を探し、美夏をだと分かるとちょっとだけ嫌な顔をしてからこう言った。

「残念ながら仕事の事ではありませんの」

 それを聴いた美夏は頬に手を当てながら、

「そうなんですか。ならば、何に悩んでいるのですか?」

 と訊いた。レミは一瞬ためらったが、言わなくてもそのうち喋ってしまいそうだと思い、話すことにした。

「…一年の事ですわ」

「一年、ですか・・・? 何か問題がありますか?」

 それに対してレミは、分かっていそうなのにどうして言わせるのか分からなかったが、おとなしく乗ることにした。

「あるに決まっているじゃありませんか。あの八神つとむのことですわ。私にたてつくような発言や言動にも問題はありますが、あまりにも年上をないがしろにし過ぎですの。芸能界では年功序列が当たり前なのに、あの男はそれを無視どころかやろうともしませんのよ。それでは学校の名に傷がつきますわ」

 それに対して美夏は、笑いながら言った。

「随分と八神君の事で心配なさるのですね」

「当たり前ですわ! あの男のせいで今後学校の名に傷がついたら、元も子もないんですから!」

 そう言うと、美夏はクスクスと笑いながら、

「大丈夫ですよ。八神君はタレントになりたくないそうですから。これから大分おとなしくなるのではないですか?」

 と言った。それを聴いたレミは驚いたが、すぐに何か思い直したように言ってきた。

「・・・だからあのような態度ですって? だったらなおさら悪いですわ! 他の生徒に迷惑ではありませんか!! 即刻退学にすべきではありませんか!」

 しかし言った本人にも、退学など不可能だという事は分かっていた。それがこの学校の特異点だと、知っているからだ。

 それから何も言わなくなったレミを見て、美夏はこれでリラックスが出来たでしょうと思い、その場から離れた。



 こうして講演会が始まった時、つとむと翠はログハウスに戻って昼食を食べていた。

「おいしいですね、これ」

「そりゃ良かった。久し振りに山菜とかで料理したからな。若干味付けの程度を忘れたような気がしたんだ」

「そんな事ありませんよ。とてもおいしいです」

「そうか」

 俺がそう言ったら、沈黙が場を支配した。俺はそれでもよかったのだが、翠の方が嫌らしく、「あ、えっと、その」と何か言おうとしているが話題が出てこない、という状況に陥っていた。何か言いたいことでもあったのだろうか?


 そうしている間に俺は食べ終え、流し台のところに使った食器を置いた。

 それを見た翠は若干ガッカリした感じだったみたいだが、すぐさま何かを思い直したらしく、急いで料理を食べ終え、流し台に食器を置きに来た。

 さて洗うか、なんて思って腕まくりをしたら、翠が何かを決心した感じで言ってきた。

「あ、あの! 私も手伝っても良いですか?」

「ん? 手伝うって、食器を洗う事をか?」

「はい!」

 そう言った時の翠の表情は、まるで願いを通じた子供のような顔だった。要するに、嬉しそうな顔だったという事だ。

 その顔にちょっと驚きながら、俺は翠と一緒に食器の片付けをしていった。

 片付けが終わった後、俺は寝ることにした。なぜなら、夜に起きて監視をしなくてはならないからだ。その旨を翠に伝えたら、「じゃ、私も一緒に監視役やります。」と言い出した。

 俺は遠慮したが翠の決意が固かったので、了承することにした。


 それで寝ることになったのだが、これでまた問題が発生した。


 それは、俺が翠から離れて寝るというと、何故か翠が自分から寝袋を俺の方へ引っ張って隣で寝ようとする。その度に俺は離れるが、それでも翠はついて来る。

 結局これも俺の方が折れて、翠が隣で寝ることになった。


 さて、寝るといったはいいが、どうにも寝られない。原因はおそらく、翠が隣にいるからだろう。寝袋でスヤスヤと寝ている翠の顔には、どこか信頼・安心している感じと、嬉しそうな表情が混ざっていた。その顔を見たら、なんだか恥ずかしくなった。

 翠の方が年上なんだけどなぁ、なんて思いながら、俺は目をつぶった。


 ケイタイのアラームが鳴ったので、俺は起きた。隣を見たら、翠はまだ寝ていた。

 俺は起きようとしたんだが、何故か起きれなかった。原因は、何処かを掴まれている感じがしたからだ。

 どこだ? と首を傾げながら見渡すと、俺の腹の方の服を翠がつかんでいた。ひょっとして寂しかったのだろうか?

 俺はどうしようか考えたが、すぐさま起こすことにした。

「おい翠起きろ」

 そう言いながら、俺は翠を揺すった。しばらくすると翠が「うっ、うぅ……」と言いながら目を覚ましてくれた。

 辺りを見渡し、俺の服を掴んでいるのに気付いた翠は、慌てて離してからこう言った。

「あ。お、おはようございます」

 ただし、起きたばかりだというのに頬が若干赤かったが。

 俺は苦笑しながら挨拶することにした。

「こんばんは、の方が正しいんだけどな。さて、今八時か。夕食食べてから、旅館を眺めるとしようぜ」

「はい!」

 いい返事だと思いながら、俺達は夕食の準備をし始めた。


 ……ところで、今更だがあいつらにバレてないよな?


 そして夕食をつくる時、一つ問題が発生した。

 夕食の分の山菜を採ってきていないという事だ。

 それはつまり、一人が食べられないという事である。昼食時に節約すればよかったと思ったが、それなら明日から考慮するか、と思い直した。

 で、夕食をどうするか翠に訊いてみたら「私、大丈夫です。お腹空いてませんから」と言っていた。

 しかし、年上に対してそれはいただけなかったので、妥協案として俺が持ってきたやつを半分にするという旨を伝えた。それに翠は納得してくれたらしく、「つとむさんと同じもの食べられるんですか!」と嬉しそうに言っていた。何処かに嬉しがる要素はあったのか?

 それで何とか夕食を乗り切って、俺達は外に出た。俺は大丈夫だったが、翠は寒そうにしていた。五月だと言っても山だからなぁと思いながら、「戻ったらどうだ?」と訊いたら首を横に振られて、俺に体を寄せてきた。

 女子特有の感じにドキッとしながら、俺はとりあえず双眼鏡で旅館の方を覗いてみた。

「異常はありましたか?」

「いや。これと言っては特に……あ」

 翠に訊かれた時、俺は発見してしまった。正直、いつの時代も馬鹿なことするやつが居るんだなと思った。

「どうしたんですか?」

 俺の言葉に何か感じ取ったのか、翠が訊いてきた。なので、

「双眼鏡でほかのところ確認してくれ。俺はとりあえず電話する」

 直接的には答えないで指示するだけにした。それと同時に、爺さんに電話した。

「爺さんか?」

『どうかしたのか? よもや、今日の監視を忘れていたとか言うのではないだろうな?』

「そうじゃねぇよ。女子風呂の近くで不審な男を見つけた。数は四、五人」

『そうか』

 その声を聴いた俺は電話を切った。それから、翠に話しかけてみた。

「他の所の様子はどうだ?」

 双眼鏡を外してから翠は答えた。

「特に異常はありません」

 その答えを聴いた俺は、今のところ平和だなぁと思った。


最後の方は……皆さんよくネタにしますよね。って、あれつとむひょっとして覗いてる……?










 そんな訳ありませんヨ?

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