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アイドルッ!  作者: 末吉
第二幕・第三話~初日夜から七日目までの出来事
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3-4 二日目の朝

 二日目。

 目が覚めた。起きて時計を見ると、午前七時。

 まだ寝れるなぁ、と思いながら俺は起きた。矛盾した行為だと思うだろうが、俺は一度起きると、眠くなるまで寝れない。

「監視って、夜じゃねぇか。いつも通りに起きちまったし、朝食食べてのんびり散策するか」

 そう言いながら調理をしようとしたら、電話が鳴った。

 誰だ、一体? と思いケイタイを見ると、『爺さん』という文字が。

「・・・・・・・・・・・」

 俺は黙って、電話を切った。

 そして朝食を作り始めたら、再び電話が鳴った。俺は手が離せなかったので、無視した。

 朝食を食べていたら、三度目のコール。着信者を見ると、『本宮いつき』。俺はどうするか一瞬悩んだが、電話に出ることにした。無視したら怖いから。

「・・・・・・もしもし」

『おはよう、つとむ。元気?』

「まぁ。そう言うお前は・・・・・・・・・訊かなくていいか」

『相変わらずノッてこないね。それが君なんだろうけど』

「何か用か?」

『う~ん。特には無いよ』

「切るぞ」

 そう言ったら、いつきが慌てて言った。

『え!? まだいいじゃないか! せっかくモーニングコールをしてあげたのに』

「俺はもう朝食を食べているんだが」

『・・・・・相変わらずクールだね。それでこそつとむだ』

 何が言いたいんだろうか? いつきと話しながら俺はそう思った。

「いつもと違って何が言いたいのかさっぱりわからん。どうかしたのか?」

『え? あ、えっとね、その、なんて言うか、急につとむの声が聴きたくなって』

「・・・・・・・・・・は?」

 こいつ、本当にいつきか? 電話を聴きながら俺はそう思った。

『と、とにかく! こんな話してごめんね! じゃ!』

「あっ!おい!………切りやがった。どうしたんだ? 一体」

 今朝のいつきの態度に不信感を持ったが、考えても分からないだろうと思い、朝食を食べることに集中した。

 食べ終わった時に、また電話が鳴った。四度目。俺はちょっとだけイラつきながらも、電話に出ることにした。

「はいもしもし」

『お主、今の自分の声がどんなものか分かっておるか? 儂でも怖いんじゃが』

「なんだ、爺さんか。何の用だ?」

『そのままで話すでない。本気で怖いわ。……いや、そちらにみどりを送ったからしばらくはそこで一緒に暮らしてくれ』

「・・・・・・・・・・・・・・は?」

『もうすでにそこの近くまで来てるはずじゃから、よろしくの』

「いやいやいや! ちょっと待て! なんだそれ!? まだ危険が去ったわけじゃねぇのにこっちに寄越すなよ!」

『問題ないじゃろ。言っておくが、何か思い出した様じゃぞ』

「そうなのか? それはよかったじゃねぇか」

『そうなんじゃが……どうにも怯えてしまってのぅ。任せたぞい!!』

「ちょっと!……切りやがった。マジで来るのかよ・・・・」

 爺さんからの電話を切って、どうしようか考えようとしたら、ドアがノックされる音がした。

 本当に来やがったのかよ……………………。

 そう思いながら、俺はロックを外してドアを開けて外を見た。そしたら、突然俺の腹にタックルする感じで突っ込んできた奴がいた。

 俺は避けずに受け止めた。しばらくそのままでいたら、急にタックルしてきた奴がこう言ってきた。

「す、すみません。すみません!!」

 俺にタックルしてきたのは、なんとみどりだった。しかも、どこか怯えていた。

「落ち着け、みどり。お前を狙っていた奴はもういないんだ。捕まったんだ。だからもう大丈夫だ」

「う、うわぁぁぁん!!」

 俺がおとなしくするよう言ったら、みどりは急に泣き出してそのまま寝てしまった。余程疲れていたのだろうか?

 俺はふと開けっ放しのドアを見てみたが、外には誰もいなかった。ただ足跡は複数あったので、SPの奴らがいたのだろうと推測できた。

 このままでは何かと不味い気がしたので、俺はドアを閉めてからみどりをとりあえず寝袋の上に寝かせ、これからどうするか考えることにした。

 記憶は戻ったらしい。ただ、それがどのくらいだか分かっていない。本人に訊けばある程度のことを話してくれるのだろうが、怯えてしまって話をしてくれなさそうだ。

 う~ん、どうしたものかと考えていると、俺はふと疑問に思った。

 そういえば、記憶喪失の人と出会うの、初めてじゃね?それに、記憶を戻すのなんて実際やったことなくね?

 普段の俺は、過去の経験則で大体の事を切り抜けていた。ただ、今回の出来事が初めてだ。どうしようか本気で悩むこととなった。

 もしこの状況で記憶を失っているのが男だったら、俺は間違いなく記憶が戻るまでぶん殴っていそうだ。

 だが相手は女性。殴るなんて論外。だとしたらどうしようか……。

 しばらく考えてみたけど、俺は考えることをやめて、これからどうにかしていこうと決めた。

 ……いつきには頼らないで。

 とにかく、みどりが起きるまで待つか。そう思って、俺は椅子に座ってみどりが起きるまで待った。


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