3-1 解決
「くそっ!! 離せ!!」
「ふざけんじゃねぇ!!」
「おとなしくしろっ!!」
今は夕日が沈むという時。俺が食材(山菜)を集め終えてログハウスに戻ると、警官たちと捕まった二人組がいた。
ザマァ。そんなことを思いながら、俺はそいつらを見送った。
ログハウスに入って、夕飯なにつくろうかな?と集めた食材を眺めながら考えていると、ケイタイが鳴った。
「・・・・・・・・・白鷺からだ。今度は何の用だ?」
俺は本人の前でしか『美夏さん』と呼ばない。年上なのに呼び捨てはどうかと思ったが、一人なので気にしない。
「もしもし」
『あ、八神君ですか? 今は大丈夫ですか?』
「ん? 別に問題ないぞ」夕飯が遅れるだけだ。
『そうなんですか。では訊きたいことがあるのですけど、よろしいでしょうか?』
「なんだ?」
『今どこに居るのですか?』
「どこって………」
さてどうすっか。俺は遅刻することになっているらしいのでが、最終手段としては欠席にするらしい。一応俺も合宿場所にいるのだが、監視役なのでいないと同じ扱いとなる。
まだ移動中と答えようか、他の答えにしようか悩んでいると、
『今どこなんですか? 教えてくれませんか?』
白鷺が急かしてきた。
こうなったら正攻法だな。そう思って俺は、
「まだ移動中」
と答えた。すると、
『そうなんですか。では、いつ頃こちらに来るのですか?』
と訊かれた。俺は面倒になったので、
「知らん」
『え!? それって…』
と言った後で、白鷺が最後まで言わないうちに電話を切った。
なんであいつがこんなこと訊いてくるんだ? と疑問に思いながら、あいつら今頃どんな夕食食べてんのかなぁとかも思いながら、俺は自分の夕飯をつくることにした。
一方、電話を切られた白鷺の方は。
「まだ移動中だそうですよ?」
「そうですか? 僕は、つとむがこの近くにいるような気がしたんですけどね」
まだ部屋で話し合っていた。
事の発端は、先程の警官たちの態度と学園長の態度がおかしかったことからだ。
警官の態度があまりにも真剣過ぎたからだ。まるで、これから捕り物をするのに似た雰囲気でもあった。
そこで二人は、事の詳細を教えてもらい真剣な理由を知った。警官たちが去った後に、旅館で最初に出会ったのが、学園長だった。
学園長は、演技には見え無いくらい心配そうな顔をしていた。
それを見て二人は、『ここに警官を呼んだのは学園長だが、本当の報告者は別にいる』という結論に至った。
それを誰だか考えるために白鷺の部屋に来ていたのだが………、
「つとむが怪しいんだけどなぁ~。でも、まだ移動中って言ってるし。でもそれが嘘だって可能性があるしな~」
「どうして本宮さんは、八神君が報告した人だって断定するのですか?」
どうにも煮詰まっていた。
「だって、そう考えた方がしっくりくるんですもん」
これに対して白鷺は、「子供の言うことに似ていますね」と思った。顔には出さないが。
そう思われたと思っていないいつきは、なおも言う。
「昔もよくこういうのに巻き込まれましたからね。強盗だとか、ひったくりだとか。さすがに誘拐の現行犯はないかな? でも銀行強盗はあったなぁ。そうそう、連続通り魔の現行犯にも遭遇したな~」
これを聴いた白鷺は、あの乱闘でのつとむの異様なまでの落ち着きを払った様子に、ようやく納得がいった。それと同時に、彼がどんな人生を歩んで来たのか興味を持った。
「それらに遭遇したのはいつですか?」
その問いに、いつきはためらいもなく答えた。
「確か、一番古いのが三歳の頃らしいですよ? 両親を探すために歩いていたら、ヤクザ間の抗争に巻き込まれたのが最初だとか。次がひったくりですね。五歳くらいに遭遇して、最初にもらった表彰状がそれらしいです」
それを聴いた白鷺は、つとむのこれまでの人生をこれ以上聴くと気が変になりそうだと思う半面、もっと彼の事を知りたいと思っていた。
ただ、その気持ちに気付いたいつきはそれ以上言わなかった。
「もうこれ以上は言いませんよ」
「ひどいじゃないですか。私は先輩なんですから、教えてくれたっていいじゃないですか」
「いくら先輩だろうと、ライバルにこれ以上は言えませんし、つとむは自分の過去で同情されるのが嫌いですからもう言いません」
先輩を理由に訊こうとしたら、まともな理由が提示されたので、それ以上は言えなくなった。
「そういえば白鷺さん」
ふと思い出したかのように、いつきは白鷺の名を呼んだ。
「なんです?」
「もうすぐ僕は夕飯なんですけど。行っていいですか?」
「そうでしたか。構いませんよ」
それを聴いたいつきは、部屋から去った。残された白鷺は、
「八神君、今頃どうしているのでしょうか? それを考えると、なんだか胸が苦しくなります。これが恋なんでしょうね。ふふっ」
と、呟いていた。




