2-5 彼のいない現場
アルファポリスに登録しなおしました。これがどう影響するか分かりません。
時間を大分戻して、つとむが山で記憶喪失の女の子と遭遇していた時。
つとむ以外の生徒が乗っているバスが旅館に到着した。
「う~~ん、のどかでよさそうなところだ。つとむが好きそうなところだね」
と、バスから降りたいつきの第一声。彼女は、この旅館がどういう旅館なのかは充分すぎるほど調べていた。なので、自分の部屋(他の人と相部屋)以外にも、自分が使うであろう施設の位置は全て把握している。
ま、つとむが使う(はずだった)部屋の位置も覚えているのはどういう心理からだろうか?
閑話休題。
いつきは皆と旅館まで歩きながら、
「今回はいつぐらいにつとむは来るのかな?」
と言っていた。その顔は、人の悪い顔だった。
また、長谷川光の場合。
他の女生徒たちと仲良く会話しながら、旅館まで歩いていた。
その時の彼女は、会話には表面的に参加していて頭では別なことを考えていた。
もちろん、つとむの事である。
恋する乙女はどんな時でも好きな人を考えるのかは、永遠の謎だろう。
彼女が考えていたことはというと、
(つとむさん、いつここに到着するんでしょう?早く会いたいです。)
会ったら会ったで話すのもままならないような気がするが、そこは気にしていなかった。
また、白鷺の場合。
彼女は生徒会長の立場にあるので、旅館の女将さんに「これから二週間、お世話になります」と言っていた。
挨拶が終わった後、それぞれの部屋に全員が移動していった。ちなみに、この旅館に来た人数は、各学年三十人六クラスより、五百三十九人(つとむは山)。そこに、学園長含め役者学科の教師全三十四人。計、五百七十三人(黒服たちを含めると五百七十八人だが、実際は四六時中旅館を警備しているので、この数である。)。
旅館は八人一部屋がほとんどで、たまに四人一部屋とかがある。六階建てであり、一階にほとんどの施設があって、二階以降は部屋になっている。その割合は、八人部屋が八から九部屋、四人部屋などが四から五部屋くらいだ。食事は、各学年別々の場所で食べる。
説明が大体終了したので、場面を戻す。
白鷺は、自分に割り当てられた部屋に行き、一息ついていた。
「会長。これからの予定、憶えていますよね?」
「覚えていますよ。昼食を各自で食べてから、移動してホールで練習ですよね?」
「ええ」
ちなみに、彼女の同居人達(?)は生徒会のメンバーである。
と、ここでふと思い出したかのように、生徒会の一人が白鷺にこう言った。
「そういえば~、美夏ちゃんのやつみたよ~」
「あ、そうなんですか」
そしたら、今度は岡部が訊いてきた。なんとなく、個人的な感情込みで。
「その記事を読みましたが最後のアレ、アレってもしかして…!?」
「あら? やっぱりまずかったでしょうか?」
「会長。ああいうのは普通、流すのが適当だと思いますが……」
岡部の質問に対し白鷺は頷き、それに対して先程予定を訊いた人はため息をつきながらツッコミを入れた。
昼食を食べ終え、集合場所(大広間)に向かう途中、白鷺はある光景を目撃した。
その光景とは、黒服の人達が一人の女性をつれている光景だった。
(あら? あの人たちは確か、学園長のSPの人達ですね。ここにいる理由は分かりますが、あの人は一体誰なのでしょう?)
そう思ったが、集合時間に自分が遅れるのは示しがつかないと思い、大広間に向かった。
「朱雀さま。連れてきました」
「うむ。ご苦労じゃ」
鯨井は、SPに対してそうねぎらった。そして、SPの前にいる女性にむかってこう言った。
「お主がみどりじゃな?」
みどりは、頷いた。鯨井は他に訊こうとしたが、SPの一人から「記憶がないそうです」と耳打ちされると、訊くのをやめた。そのかわり、
「ま、この旅館にいる間は主の安全は保障しよう。あやつがここに主を寄越したのは、ここが安全だと分かっておったからじゃしな」
と言った。その言葉に、みどりは目を見開いて驚いた。同時に、八神君ありがとう。と心の中で感謝した。
そして、鯨井は女将と共に、みどりをどうするか考えていたが、本人が「ここで働かせて下さい」と言ったので、しばらくは住み込みで働くこととなった。
女将に連れてかれるみどりを見て、鯨井は考え込んでいた。
「どうかしましたか?」
「いや。大したことではないんじゃ・・・・・・・・」
「?」
なおも疑問に思っているSPをよそに、鯨井はこんなことを考えていた。
(はて…あの娘、どこかで見たことがある気がするのじゃが……どこじゃったか?)
何か大切なことの様な気がする。そう思って考えても答えが出なかったので、考えるのをやめた。そして、山の中で今頃変なことに巻き込まれているであろうつとむに向かって、こう考えていた。
(とりあえず、無事でいてくるかのぅ)




