2-1 出発
三日連続2000PV越え……もはや恐怖しか感じません。読んで下さるのはありがたいのですが
五月七日。
「行ってくる」
「いってらっしゃい」「頑張れよ~」「え~行っちゃうの~?」
俺が行ってくる、と言うと、家族からこんな言葉が返ってきた。
最初はお袋、次が親父、最後が茜だ。
家族の説明でもするか。誰から説明したものか……無難に親父からだな。
俺の親父の名前は八神すすむ。どこにでもいる普通の会社員。のはずなんだが、めちゃくちゃ喧嘩が強い。とにかく強い。これでも昔より弱くなったんだ、と言うが信じられるか。俺だってそれなりに強いと思っているんだが、親父とやると十分も持たない。とにかく強過ぎる。
次に、その妻の八神玲子。専業主婦。昔の事は本人に訊いてないから分からないが、この町の出身だとか。訊こうとすると、お袋が慌ててどこか行くので訊けずじまいである。町の奴らに訊こうとすると、「悪いことは言わねぇ。そこだけは触れない方がいい」と言って拒否される。何かあったのだろうか?
最後に、八神茜。俺の妹である。義理だが。俺は、こいつが昔どんなことに遭遇したか知らないし、知る必要はないと思っている。
最近というか俺が事故に遭った後から、茜は前より俺に甘えてきてる気がする。 別に構ってなかったからいいんだが、それにしたって異常じゃないか?と思ったりする。
例えば、
『お兄ちゃん、一緒にテレビ見ようよ!』
とか、
『お兄ちゃん、一緒にここに行こう!』
とか等々。
俺は時折不思議に思うんだが、別にいいかと思ったりしている(たまに厳しくしたりしているが)。
今の時刻は午前六時。集合時間が俺だけ七時なので(他の奴らは五時くらい)、俺一人ってどういうこと? と思っている(学園長と一緒なのだが、あえてカウントしていない。)。
俺は自転車をこいで(荷物は昨日学園長に渡してある)、学園に向かった。その時俺はすっかり忘れていた。
俺は遠足とかに必ず遅れることを。
「ふぅ。もう少しで予定通りに着くな。……ん?」
もう少しで学校が見えるというところで、俺はなんか声がしたような気がした。 そこで俺は立ち止って辺りを見渡すと、ある光景が目に映った。
「…………なんで、」
それは、俺が昔から巻き込まれてきた光景だった。
「オメェら喧嘩なんかしてんだぁぁぁぁ!!!」
俺の声が聴こえたのか、そいつらは全員動きを止めた。そして声がした方に向き、驚いた。
「「「「「「「皇帝!!?」」」」」」」
そこにいた奴らは、俺が一度喧嘩した奴らばっかりだった(このあたりの不良たちとはほとんど喧嘩している)。俺は自転車を押して喧嘩していた方へ歩いていった。
その光景があまりにも堂々としていた風に錯覚したのだろうか(本人には悪いが、実際そう見える)。喧嘩していた奴らは、腰が抜けた奴もいれば身動きが取れない奴もいた。
俺はある程度まで(と言っても不良たちの目と鼻の先だが)近づき、喧嘩していた奴らに訊いてみた。
「お前ら、なんで朝っぱらから喧嘩してんだよ?」
すると、不良の一人がこう言った。
「こ、これは、その、あいつらが悪いんす!」
それに対し、あいつら、と言われた方は怒りながらこう言った。
「テメェらの方がワリィじゃねぇか! そっちからぶつかっといて謝らねぇからだろうが!」
なるほど。原因は分かった。これはどう考えても・・・・・・・・
「お前らが悪いんじゃねぇのか?」
「あっちにだって非はあります!」
俺は謝らない方が悪いと思ったんだが、ぶつかられたやつにも非があるようだ。なので、俺はその話を聴いた。
「あいつら、俺達が避けたのにわざとぶつかってきたんすよ!」
「そうなのか?」
「え、あ、いや」
俺が訊くと、ぶつかられたやつらは答えに窮していた。どうやらわざとぶつかったらしい。
……ハァ。朝から面倒だなと思いつつ、俺は決定(という仲裁案)を下した。
「お前ら、この件は不問だ。喧嘩してねぇで学校いくなり、家帰るなりしろ」
「「「「「「「ハイ!!」」」」」」」
俺はその決定を下した後、自転車をこいで学校に行くことにした。時計をみなかったのは、油断だった、と言えるだろう。
学校に着いて(自転車はいつもの場所に置いた)、集合場所に行ったら誰もいなかった。慌てて時計を見ると、時刻は七時十分。集合時間に十分も遅れていた。その時俺は思い出した。
俺は、遠足などの集合時間に一度も間に合った事は無い。
なぜなら、俺がその日いつもより早く登校すると、必ずと言っていいほど何かが起きて、俺が巻き込まれる(通常でも同じ)。だから、俺は必ずと言っていいほど遅れて行き(最悪行かない)、先生に怒られ、他の奴らから変な目で見られる。俺はいつも対策をしているのだが、それが全く意味をなさない。
このまま家に帰ろうかな~、と思っていると、集合場所に車が来た。それと同時に、まるで図ったかのように電話が鳴った。発信者を見てみると、登録した覚えがない番号だった。俺は訝しげに電話に出た。
「もしもし」
『儂じゃが。お主、集合時間に遅れたな?』
「自慢じゃないが、学校行事に最初から行った事は無い」
『本当に自慢にならんのぅ。まぁいい。今、お主の目の前に車が来てるじゃろ?』
「ああ」
っていうか、その車から黒服の人たちができたんだが。
『それに乗ってくれ。スマンがちと手違いがあってな、もともとお主を待っていれんかった。せめての詫びじゃ』
「そうか。なぁ爺さん。一つ言いたいことがある」
『なんじゃ?』
「おい! お前が指示したのって連――」
行じゃないのか!? と言おうとしたら、黒服の奴から鳩尾にパンチされ、俺は意識を失った。
「朱雀さま。とりあえず、ターゲットを眠らせました」
『そのケイタイを切ってから旅館まで運んでくれ』
「はっ」
と言ってつとむのケイタイの電源を切ってから、つとむを担いで車の中に入れ、出発した。




