プロローグ2
では始めましょう
久し振りだな。俺だ。八神つとむだ。
なに? 俺が誰だか分からない? そっちで何とかしろ。
という訳にはいかないので、自己紹介行くか。
俺の名前は八神つとむ。今年で十六になる高校一年生だ。趣味は読書、特技は家事全般。顔は、目つきが親と似つかないほど悪い点を除くと普通。巻き込まれ体質もち。ただ目つきが悪いだけのはずなんだが、見た目が不良っぽく見えるらしい。 正直どうでもいいがな。
「嘘言うのやめなよ。本当は気にしてるんでしょ?」
「うるせぇ。慣れたらどうでもよくなったのは本当だ」
「僕も紹介してくれないかな?君だけってのは、ずるいんじゃない?」
「ずるい、の意味は分からないんだが。まぁいいか」
先程、人の心を読んだがごとく口を出してきた奴の紹介をするか。
こいつの名前は本宮いつき。俺の幼馴染だ。家が金持ち、成績優秀という、誰もが羨む奴である。身長は俺より少し低く、顔立ちは女っぽい・・・・・・・といつもならそう紹介するんだが、中世的な顔立ちである。しかも美形。
なんで俺が直したのかというと、男だとばかり思っていた奴が実は女でした、というドッキリにも似た自己申告があったばかりだからだ。未だに俺はドッキリじゃないかと思っている。
「嘘じゃないからね?」
OK。分かった。さて、いつきの紹介の途中だったな。こいつは何かとつけて俺に色んなことをさせる。これで終わり。
「そんなに僕は、君にやらせてないよ?」
白々しく嘘いうな。それこそ山のようにやらせただろ。
「それは置いといて。学園の紹介は?」
逃げたな。まぁ、俺としてもどこで学園の紹介をしようか悩んでたところだから別にいいが。
俺達が通っている学園は私立スミレ学園。この学校は裏方の大道具から俳優、タレントなどを育てることを目的として創設された学園である。この学校は、一度入学したら退学ができないという、間違って入ったやつに対して非常に厄介なシステムがある。
あと、この学校にはもう一つ面倒なシステムがある。
それが、学年ごとにいる『アイドル』の存在である。
普通の学校なら、アイドルというと結構な人気者をイメージするだろう(実際俺もそう思う)。だが、この学校でアイドルというと、学校で一番推してる生徒の事を言う。そのため、アイドルに選ばれた人達は他の生徒より多くの出演依頼が来る。ちなみに、アイドルに選ばれるのは例外なく女子らしい。そうなると男子って不利じゃないか? と、今更ながらこのシステムに疑問を抱いた(彼の知る由ではないが、男子はそれが無くても出演依頼が多い)。
蛇足だが、そのアイドルに選ばれた三人の紹介をするか。
「蛇足ってなんですか! 蛇足って!」
「流石一般。物分かりが悪いことで」
「いくら私でも怒りますよ?」
いちいち茶々入れんなお前ら。……まったく、ちゃんと紹介すりゃいいんだろ?
最初に自らの扱いに怒っていた奴の名前は、長谷川光。タレント名は『光』。こいつは俺と同じ学年のアイドルである。最初に出会ったころはオドオドしていたが、最近は自信でもついたのか、堂々としている。ただ、何故か俺に相談事を持ちかけてくる(そのせいで親衛隊から目の敵にされている)。
次に、俺の対する悪口を言ってきたのが二年生のアイドル。名前は篠宮ルカ。タレント名は知らん。こいつは篠宮財団の長女で、性格がもう典型的なお嬢様(要はわがまま)。いつきでさえこいつの事が嫌いである。
長女、という事は必然的に次女がいることになる。まぁ紹介しとくか。
篠宮レミ。先程の説明通り、篠宮ルカの妹。ただ、姉とは対照的に性格が穏やかである。
こいつとの出会い方はあまりにもベタだったんだが、我ながら面倒なことに巻き込まれたと思った。そのお礼という名目で、本人が木刀を家に持ってきたときは驚いたが。
最後になったが、三年生のアイドルについて紹介するか。
名前は白鷺美夏。この学園の生徒会長であり、のほほんとした性格の持ち主である。しかも家が金持ち。最近こいつは、俺がバイト先でつくっている料理のレシピを訊いてくる。俺は一般的な料理本をもとにつくっているので、その本の名前を何度も言っているんだが、本人は曰く『私、その本通りにつくりましたけど、あなたみたいに美味しくなかったです。』らしい。実をいうと、ちょっとアレンジを加えているのだが、それを教えるほど俺はお人よしではない。
しかもこの三人、アイドルに選ばれることだけあって全員が美人、綺麗、可愛い、のどれかの容姿をしている。そんな奴らが、俺に何の用だと思えるくらいやってくる。正直うぜぇ。
だって、そのせいで親衛隊に睨まれるわ、ただでさえいつきと一緒にいるせいで男子連中から顰蹙を買っているのにそれがさらに上積みになるわ、で面倒だ。
長々と説明および紹介をしたが、今回の話はまたやたらと面倒なことになる話だ。
停学明けて二日後――――合宿が舞台となる話。正直行かなきゃよかったと思う。
今日から行きます




