もしも2
第二弾
~もしも八神つとむと白鷺美夏が幼馴染だったら~
学校のない休日。バイトも特にないのでのんびりしようかと思いリビングで過ごしていると、ピンポーンと控えめにインターホンが鳴った。
今この家にいるのは俺一人。親父は会社、お袋は買い物、茜は友達と一緒に買い物へ行ったから。
今いい気分なんだがなと思いながらソファから起きた俺は、髪を掻きながら玄関へ向かうことにした。
「おはようございます、つとむ君」
「……ああ、美夏さんか。どうしたんだ?」
玄関先にいたのは隣の豪邸に住む年上の幼馴染みである白鷺美夏。子供の頃一緒に遊んでいたが、今ではこうして挨拶するぐらいになった。まぁ何も知らないあの頃とは違うということだな。
……割りと毎日挨拶に来てるが。
こんな時間に用だろうかと考えながら立っていると、彼女が「遊びにいきますよ?」と提案……
「じゃない!? いつ決まったんだ?」
「私の中で、ついさっきですね」
そう言って微笑む美夏さん。
もうこれ以上何をいっても無駄だと長い付き合いで知っている俺は、溜め息をついて「少し待っててくれ」と言い、自分の部屋に向かった。
「相変わらずオシャレに興味はないのですね」
「そんな金あるなら別なところに回す。美夏さんみたいに体裁を気にする家庭でもないからな」
「私はあの家じゃなくてもファッションには気を遣いますよ?」
「それもそうか……で? どこへ行くっていうんだ?」
「のんびりお買い物へ行きましょう」
「ああそう」
金あったかな…と財布の中身を思い返しながら鍵を閉めて家を出る。どうせ行く先は彼女しか知らないので任せるしかない。
普通にそのまま歩き出すと、「自転車は使わないのですか?」と訊いてきたので足を止めて答える。
「追いつけやしないだろ? それに、二人乗りは犯罪だ」
「なら一緒に歩きましょうつとむ君」
想像できたセリフと同時にゆっくりと、だがいつの間にか隣に来ていた。
しかし驚くことではないので「了解美夏さん」というと口元に彼女が人差し指を押し付けて言った。
「美夏、でいいですよ。昔みたいに美夏お姉ちゃんでもいいですけど」
「……分かったよ美夏」
「はい♪」
何がうれしかったのかは若干想像つくがどうでもよかったので、上機嫌な彼女と一緒に買い物へ向かうことにした。
「ここで買い物しましょう」
「…………デカい百貨店だな」
駅まで歩いて電車に乗り、運ばれること一時間。
目的の駅に着いたらしく降りたので一緒に降り、そのままついていくように歩いて着いた先が――俺が呟いた感想通り、十階はあるんじゃないかと思われる高さの百貨店だった。
どことなく高級感が伝わるその店の前に呆然と立ち尽くしていると、「早く行きますよ」と手をつかんできたので我に返り、そのまま店に入ることになった。
「で、何を買うんだ?」
「洋服や下着、あとは……本や料理に使う材料ですね」
「ふーん……帰っていいか?」
「ダメです。つとむ君、自身の服装に興味がないですから」
「ボロボロになるんだから一々着飾る必要ない」
「そうでしたね……まぁ折角ですし、選んでいただきましょう」
「へいへい」
ここまで来て逃げるなんてダサいので、俺は腹を括って手をつないだまま服を買いにむかうことにした。
「どうです? 似合いますか?」
「……ああ。似合ってる」
「本気でそう思ってます?」
「自分で似合うと思ってるから試着してるんだろ? 周りの一般的反応を見れば理解できるだろ」
五階の服屋(一着四万ぐらい)で自分で選んだ服を試着しそれを見せてくるのでそう言うと、頬を膨らませて「そういうのを聞きたいわけじゃありません」と怒られた。
「私が聞きたいのはつとむ君がどう思うかです」
「……」
何故かは知らないが強く言われたので、ふむともう一度彼女を着ている服を見てから少し考えて感想を述べた。
「まぁ欲を言うならもう少し薄い色の方が良いんじゃないか? それだったら」
「そうですか。ありがとうございます」
そう言うとカーテンを閉めたので俺は欠伸を漏らしながら背を向けて今何時だったかと考えた。
――それはやはり起こるべくして起こったというべきなのだろうか。
俺の体質……巻き込まれ体質のせいで。
「強盗だ!! お……」
「うるさい」
入口で銃を構えた男に皆まで言わせず顎を打ち抜いて天井に打ち上げ、残りの散開しようとしていた集団の中に蹴りを入れて乱闘(一方的)に持ち込む。
決着は僅か10秒。練度がとにかく低いお陰で早く終わった。
帰る頃で助かった。面倒な二度手間にならず。
そう思いながら全員を一ヶ所に集めていると、「見事な手際です」と美夏が拍手して近くに来た。
「まだ危ないぞ」
「大丈夫ですよ。訓練は終わりましたから」
「……ん?」
訓練……だと? ってことは、俺嵌められた?
「嵌めていませんよつとむ君。ただの、偶然です♪」
……なんだろうか。この……言いくるめられた感。ずっと手のひらで踊らされていた感。
なんだか一気に脱力したな……と思いながら偉そうな人と話している美夏を見ていると、彼女がこちらを見てウィンクした。
……なんとなく負けた気がしたので、俺は髪を乱暴にかきあげて視線をスルーした。
散々な一日だったな。
「私は楽しかったですよ?」
「ああそう」
「――でしたら、なんて」
「「納得いきませんよ!?」」
「あら?」
「幼馴染ポジションは僕ですからね! そればっかりはもしもでも譲りません!」
「それに、買い物に連れて行くなんて羨ましいシチュエーション! 私が最初にしたかったです!!」
「早い者勝ちですよ、ふふっ」
「……なんだろな。巻き込まれたの俺なのに蚊帳の外という…」
「あら一般。なにを落ち込んでるのかしら?」
「……ああ篠宮姉か。今ちょっと閑話の話で盛り上がってな」
「閑話? 何でもアリですわね」
「ざっくりというとそうなる」
「あなたが私に負けるという話なら良く想像しますわ」
「……なんだろうな。現実におこらなそうなその話」
「! う、うるさいですわ!! そういうあなたにはあるんですの!?」
「あ、ねぇけど?」
「そうなんですの?」
「それで現実が変わるわけないだろ。考えたって無駄」
「それは一理ありますわね……」
「ということだ。作者も今回はここらで終わらせたいんだろ」
「まぁあのように喧嘩をすればそう思いますわね……」
「と、いうわけで閑話はここまでになると思う。次は三月の上旬ぐらいだな」
「それではまた会いましょうか」
色々ありましてそうなります




