表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルッ!  作者: 末吉
第一幕・第五話~事故と地獄は紙一重~
31/205

5-5 かくて彼は信念を

一幕終了までもう少しですね。二幕を多少修正し終えたので、三幕を書き終えようと思います。まだ半分ぐらいなんですよ

 俺が戻ってきたら、揉め事は終わっており、全員で仲良く観ていた。俺はそのまま眺めていたら、俺の視線に気づいたのか、茜が振り返った。

「あ、お兄ちゃん。今までどこ行ってたの?」

「そこら辺を散歩」

 俺の答えに茜は『?』となっていたが、それ以上考えるのをやめたらしく代わりにこう言った。

「今ね、中盤のところでね、光さんも出てるところなんだよ」

 俺はどうでもいいのだが、それを言ったら怒られそうなので、俺はこう言った。

「実際に見てどうだ?」

「うん! とても綺麗な人だった! ……私もあんな風になれるかな?」

 最初の方は嬉しそうに、後の方は切なそうに言った。

「気にすんなって。お前はお前で良い所があるんだからよ。今でも充分だろ」

 と俺が言うと、

「えぇ!! お、お兄ちゃんが、ほ、褒めてくれた!?」

「何故そこで驚く?」

 顔を赤くしながら、茜がこんなことを言った。驚くようなものか?

「だ、だって、いつもはそんなこと言ってくれないじゃん……」

 茜は、うつむきながら喋っているせいか、だんだん声が小さくなっていった。そのせいで、表情が見えない。だが、多分赤くなったままだろう。これをどう対処しようか考えていたら、

「ん? 撮影が終わってるぞ」

「え!?」

 驚いて茜が後ろへ振り返ると、そこには片付けが始まっていたところだった。

「いや~結構よかったな。あのシーンのところとか」

「いや、もっと始めの方っすよ」

「それよりもうちょっと中盤よりの方っす」

 と言いながら俺達の方に寄ってきた飛翔たち。その光景を見た茜は、「しまった」という顔をした。

「さっきまで観れたからいいんじゃないか?」

「普通は最後まで観たいでしょ!? あそこまで観たんだから!」

 どうやら全部観たいと思っていたみたいだ。どうするか考えながら時計を見ると、ちょうど正午だった。腹減ったなぁ~と考えながら空を仰ぐと、

「あっ!!? つとむさんじゃないですか!! やっぱり見に来てくれたんですね!?」

 と声が聴こえた。――これは幻聴これは幻聴これは幻聴、と心の中で呟いていたら更に、

「なんで空を見てるんですか!? 私を無視しないでください!!」

 と言いながら、そいつは俺に近づいて来たみたいだった。これ以上現実逃避は無駄だと思って俺は視線を戻した。そこにいたのは、

「やっぱりあんたか」

「名前を憶えているなら名前で呼んでくれませんか!?」

 長谷川光だった。そいつの恰好は、ヒロイン役の服装だと容易に推測できた。しかし、長谷川がなぜこんなに怒った声を出しているのかは想像できない。面倒だなぁと思っていると、飛翔と茜が、俺に寄ってきてこう訊いた。

「「つとむ(お兄ちゃん)、光さま(さん)と知り合い?」」

 息が合ってんな、お前ら。そう思いながら俺は、

「そうだよ」

 と答えた。その答えを聴いた飛翔たちは、何故か変なテンションになっていた。

 頭大丈夫かお前ら?

 茜はというと、興奮を抑えきれずに長谷川にサインをねだっていた。ねだられた本人は、怒っていたのはどこへやら。笑顔でサインをしていた。それを見た飛翔たちもこぞってサインを要求し、それに長谷川も戸惑いながら、サインをしていった。その途中、俺はここから近い店まで歩き出した。最初にサインをしてもらった茜は、俺の行動を見てすぐに後を追った。


 それを見た長谷川は、「あっ!! せっかく一緒にいられると思ったのに……」と言っていた。


 ご愁傷さま。


 全国展開されているレストランの店内にて。

「お兄ちゃん。みんな放っておいて良かったの?」

「終わったらここに来るんじゃないか? 一番近いんだから」

「だといいけど・・・・・・・・・・」

 と話しながら食べていると、ケイタイが鳴った。発信者は飛翔。周りがうるさそうにしたので、俺は席を立ち、外で話すことにした。

「なんか用か?」

『どこに居るんだ?』

 俺がそのレストランの名前を言うと、

『俺達は人が少ない食堂にいるからよ。食べ終わったらさっきの場所に集合ってことで』

 と言われて、電話が切れた。その後自分の席に戻ると、茜が訊いてきた。

「お兄ちゃん、誰から?」

「飛翔」

「なんて?」

「食べ終わったらさっきの場所へ集合だってよ」

「ふ~ん」

 これで会話は終了。俺は黙々と料理を食べ、茜はそんな俺を楽しそうに眺めていた。

 会計を済ませて店を後にし、再び公園に向かう途中。俺は気になったことを訊いた。

「なぁ」

「なに?」

「俺を見てどこが楽しいんだ?」

「ふぇ!? わ、私、そんな顔してた?」

「してた」

 俺が言い切ると、茜は顔を赤くしながら何も言わなくなった。

 それから、先程まで俺たち(俺はほとんどいなかったが)がいた場所に着いたら、長谷川が一人立っていた。俺が見つけると、長谷川も俺を見つけたのか、俺に走ってきた。

「わざわざ走ってこんでも良かったんじゃないのか?」

「いいじゃないですか。少しでも長く話したいんです」

 なぜって? それを訊くのは野暮だな。

 そう直感した俺は、妹の視線に気付いた。

「どうした?」

「別に」

 訊いたら明後日の方向を向かれた。何か気に障ることがあったのだろうか?

 まぁ考えても埒が明かないので、長谷川にこう言った。

「取りあえず、場所変えないか?」


 歩きながらも俺たち(茜もついてきた)は、会話をしていた。

「ここ最近、ずっとこのドラマの台本読んでたのか?」

「はい。八神君の言葉のおかげでだいぶ自信がつきました。ありがとうございます」

「別に。解決したのは長谷川自身なんだから、お礼を言われる覚えはない」

「そうかもしれませんけど、あのアドバイスが無かったら、私は変わってませんでした」

 そういうもんか~? と呟くと、はい、そうです。と笑顔で返された。

 と、今まで黙っていた茜がいきなり爆発した。

「ちょっとお兄ちゃん!!? どうしてそんな風に普通に話しかけられるの!!?」

「どうしてって、言われてもなぁ……」

「・・・・・・・お兄ちゃん・・・?」

 茜が言った一言に、気になった単語があったのだろうか。長谷川はその単語を呟いた後、こういってきた。

「八神君、もしかしてその子、妹さんですか?」

「もしかしなくてもそうなんだが」

 俺が肯定すると、長谷川は顔を赤くして「私、もしかして勘違いでもしてたんじゃ………」と言っていたのには、さすがにツッコムべきだろうか。

 気分転換、という事で俺達は、公園の入り口近くで話をしていた。

「しっかし、なんでそこまでやる気なんだ?」

 俺は当然の疑問を口にした。さっきから話していると「頑張る」や「みんなに見てもらっているから」とかをよく耳にしたからだ。長谷川はその質問にちょっと驚いたが、真顔でこう言った。

「それはあなたのドラマ嫌いを直すためです!!」

 このセリフを言った時の効果音は、きっとデデーン!! だと思った。本人は「決まった…」と思っていそうだが俺は、そんな理由かよ・・・・と頭が痛くなりそうだった。

 そんな俺を無視して、長谷川はなおもヒートアップした。どんなことを言っていたかというと、なんか突拍子もない感じだったので、もはや聞き流していた。


 だから、だろうか。


 何気なく公園の入り口―――歩道と道路は区分されている―――の方を見たのは。


 その時に見た光景は、横断歩道を走ってくる一人の少女と、それに気付かないトラック。少女の方は途中で気づいてしまったため、道端で立ち止ってしまった。

茜はその少女を助けようと動くが、それより先に―――いつも巻き込まれているから体が普通に動ける―――俺が動いた。

 当然、俺が慌てて動いたのだから長谷川は話を中断し、俺が行く先を見た。その瞬間、長谷川は口に両手をあてて座り込んでしまった。

 俺の目測では、トラックと少女の距離はせいぜい二十メートル。今から走っていくと、俺は確実に怪我をする。いや、怪我だけじゃすまないかもしれない。


 それでも俺は、こう思った。


 見殺しになんてできるか。


 それが俺の本音。水上が俺に訊ねた時に答えた、俺の守りたいと思うもの。


 トラックは俺が飛び出してきたから慌てたのだろう。ブレーキを思いっきり踏む音がして、ハンドルを思いっきりきったみたいだった。

 その間に俺は少女を抱きかかえ、








 そして、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ