5-2 現場へ移動
再投稿して五か月ほど。前回より恐らく速いペースで三百ポイントになりました。四万PVいったのもおそらく早い……と思います
「ただいま」
「お帰り!! お兄ちゃん!!!」
家に帰ったら、茜が俺に走ってきた。これから察するに、余程嬉しいんだろうな。と状況を観察していたら、
「そういえばお兄ちゃん。昨日はどこに泊まってたの?いつきさんに電話したら、来てないって言われたんだけど」
そう茜が言ってきた。
うわぁ~。それについて考えるの忘れてた~。どう説明しようか、と頭を必死に動かしていたら、妹の恰好が気になった。
「なぁ茜。その恰好、どうしたんだ?」
「えへへへ。気付いてくれたんだ。これはね、この日のために買っておいたんだ♪ どう? 似合うかな?」
と回転しながら訊いてくる茜。この日のためって。そうツッコミたかったが、似合うかどうか訊いてきたので、とりあえずもう一度茜の恰好を見た。
フム。全体的に活発そうだな。ワンピースを着てるから余計にそう思える。
とまぁ、俺の中で結論が出たから答えるか。
「よく似合ってるぜ。正直に可愛いと思った」
「お、お兄ちゃんに褒められると、やっぱり嬉しいな♪」
答えたら答えたで、テンションが上がったみたいだ。嬉しそうに踊ってる。
・・・・・・・・さて、この隙に。そう思って、俺は二階に上がって着替えて、財布やら恐らく今日必要になるものを準備した。・・・・・・・いけね。なにも食ってない上に、どこに行くのかすらも分からない。
ま、朝食は家で食べればいいし、どこ行くかは茜に訊けばいいか。そう思って一階へと降りることにした。
「おかえりつとむ」「おかえりなさい」
「ただいま・・・・・・・って飯がねぇ!!」
リビングに行ってみると、朝飯がなかった。というか、俺の分が準備されていたかどうかすら怪しい。
親にそのことを訊いてみると、
「泊まった所で食べてきたんじゃねぇのか? だから母さん、つくってなかったぞ」
そう親父に言われた。畜生、こんなことになるんだったら、あっちで食べてくればよかった。と後悔しても後の祭り。こうなったらコンビニ寄って行くしかねぇなと考えてたところで、親父がこう訊いてきた。
「昨日、学校から連絡があったんだが、お前、停学受けたんだろ? 何やったんだ?」
俺としては、昨日の事に関してはほとんど言う気がないので、こう言った。
「別に。それを言ったって何も変わらないからな。あえて言うなら、悪いことはしてない」
そう言ったら、親父が「やっぱりか」と言って黙った。ま、黙ってくれるんならそれでいいか。と思った。そんなやりとりをした直後に、
「お兄ちゃん! もう行かないと最初から観れないよ!!」
茜がそう言いながらリビングに着た。なので俺は、
「行ってくるわ」
「いってらっしゃい」「なんだと!!? つとむ! お前行かないんじゃなかったのか!?」
行ってくる、と言っただけでこの有り様。いつもと変わらないなと思ったが、両親、特に親父が何やら悲しそうな眼をしていた。
・・・? いつも親父らしくないが、どうしたんだ? そう思ったが、茜が急かしてきたので家を出た。
「あいつ、昨日も大変な目にあったんだな。心配しかできないのも、つらいもんだな」
「そうだけど、心配も私達にとっては愛に変わりはないでしょ?」
「しかし、つとむの奴、本宮さんの正体に気付かないってどういうことだ?」
「それは分からないでしょ。私達だって、気付いたの三年位前でしょ?」
「ま、いいか。いまはそれより自分の息子の身の安全についてだな」
「あの子なら大丈夫よ。なんってったって、昔この町をまとめた英雄の息子なんだから」
「よせやい、母さん。まとめたんじゃなくて、治安をよくしただけだぜ?」
「そういうところも息子が受け継いだわね。唯一例外なのは」
「あの体質だけか。しかし、こればっかりはなぁ・・・・・・・・」
「神のみぞ知るって事ね」
「ああ」
街を茜と一緒に歩いていて(ちゃんと飯は買って食べた。)、どこまで行くのかと俺は訊いた。
「駅まで歩いて、そこから電車でムサシ町まで行って、撮影現場行くんだけど…」
どうかしたのか?
「場所が分からないんだよ。お兄ちゃん、知ってる?」
「知らん。そのドラマのタイトルは?」
「確か『男の戦い!! ~裏最強の恋を巡っての大バトル!~』だったよ」
そういえば、長谷川が見せてきたのもそれだったような……………
考えても埒が明かないので俺は、話題を変えることにした。
「そういえば、好きなアイドルとか居るのか?」
「うえぇぇぇぇ!!!? そ、そんなこと言えないよ!?」
「どうしてだ? テレビに出てる奴で好きな奴訊いてるだけなんだが」
「・・・・・あ。そうなの? てっきりお兄ちゃんも含まれてるのかと思った。で、好きな芸能人だったよね?」
「範囲が大きくなったような気がするが、気にはしない。で? 誰なんだ?」
「お兄ちゃんと同じ学校に通ってると思うけど、『光』っていう人だよ。最近小中高生の間で結構人気なんだよ? 知らないの? って、訊いちゃいけなかったね。ごめん。」
「気にすんなよ。それにしても光、ねぇ・・・・・・・・・・写真とかないのか?」
「あるよ。前にグラビアアイドルやってたみたいだから写真集を出していてね、私つい買っちゃったんだ。・・・・・・・・・はい、これ」
そう言って茜が写真集を渡してくれたが、さっきの説明で俺はもう誰だか目星がついてしまった。
「いい。もう誰だか分かったから」
「本当!!? さっきの話だけでよく分かったね!」
「それにサインしてもらいたいから持ってきたのか。用意がいいな」
「それはそうでしょ! 私達も町の近くで撮影がやるんだよ! 折角だからサインしてもらいたいでしょ!」
そんなもんなのか、と言ったら何を言われるか分からないので俺は黙った。




