4-4 伝える
二幕目をただ今改稿中です。
「まぁ、座りな。そこから自己紹介といこうじゃないか」
案内した部屋の自分の席に座った頭は言った。それに従って隊長の代わりに受け答えしていた女性は座ってから自己紹介した。
「私の名前は、如月瑠唯。そして、先程あなたのところの若頭と闘っていたのが水上清です。我々はレミお嬢様をお守りするSPの部隊で、水上さんは私達の隊長です」
「そうか。ありがとよ。んで、早速本題に入りたいんだが……」
「レミお嬢様はどこに居るのですか!?」
本題という言葉で彼女たちの目的であるレミの居場所について聞こうとする瑠唯。
それに対し、頭は煙草に火をつけて咥えてからのんびりと言った。
「そう慌てなさんな。場所はちゃんと話す。ただその前に、あいつの気持ちにも気付いてやれば良かったんじゃねぇか? と、俺は思うんだが」
「は?」
どういう事だとその場にいるSP達が訊こうとしたら、
『兄貴!! まだ怪我が治ってないのに無茶しないでください!!』
『どうせ顔だけだろ? いうだけ言ったら寝るからよ、行かせろ』
『あ、兄貴!!?』
ガラッ!! とつとむが扉を開けて乱入してきた。
さすがの頭もこれには驚いたらしく、つとむに訊いた。
「おい。大丈夫なのか? お前」
「はっ。これぐらいで心配してんじゃねぇよ。大体、顔の殴り合いだったから顔以外は酷くねぇよ」
頭の心配を鼻で笑うつとむ。その姿を見た瑠唯は、歯ぎしりをし、座りながらも構えつつ言った。
「お前は・・・・!!」
が、つとむはそちらを気にせず頭に視線を向けて頼んだ。
「・・・・・・頭、俺に言わせてくれ。それを言ったら素直に寝るから」
それを聞いた頭は目をつむって思案したが、たばこの煙を吐くようにため息をついてから言った。
「……わぁったよ。さっさと言って寝ろ。どうせここで泊まるんだろ?」
それを受けてつとむは「ありがとよ」と言ってから、瑠唯の方へ向いて質問した。
「さて、一つ訊きたいんだが、あいつ―――お前らが追っていた奴はどんな理由で逃げてたと思う?」
それに対し、瑠唯は即答した。
「お嬢様はパーティの途中でお逃げになったのだ。理由なんか知るか」
「そんなんでSPなんてやってんじゃねぇよ」
「なんだとっ!!?」
断言されて声を荒げる瑠唯。対し、つとむは冷静に返した。
「あいつが逃げた理由はな、単純に飽きたからだ」
「そんなくだらない理由で逃げたのか!!?」
「くだらなくねぇよ。いいか?あいつはお前らに泣き言言わずに、その気持ちをずっと隠してたんだぞ? それに気づかないSPが守るって? はっ。笑い話にはちょうどいいぜ」
「貴様!! 私達を愚弄するつもりか!!」
「お前らは所詮、あいつの親父に雇われてるから、っていう気持ちであいつの事を守ってるだけだろ? そんなんじゃ、ほんとに厄介なことに巻き込まれた時に、お前らは守れないぞ」
「…………」
つとむが言った言葉が、SP達の心に刺さっていった。その誰もが喋らなくなった時、
「私は」
「隊長!!」
水上が上半身を起こして言った。
「少なくとも私は、お嬢様を命にかけても守りたいと思っているさ。命令されなくとも、ね。……そういう君はどうなんだい?守りたいものがいるのかい?」
その問いにつとむは、
「……『自分の気持ち』と、『友達』だ。……言いたいことは言ったぜ、頭。俺は寝る」
一応答え、その後に自分が寝ていたところで寝た。それを引き継ぎ、
「という感じだ。あんたらがこれからどうするかは、自分たちで決めろってこった。・・・・さてと、本題の場所についてだが、あいつは今本宮の家にいるぞ。今頃大人しく寝てるんじゃねぇのか?」
頭が本題の場所について言った。その場所を聴いたSPたちは、驚いた。
「まさかそんな場所だったとは。・・・・・・・ここに来ていたんだろ?」
「ああ。最初はな。その後に、つとむが本宮に連絡したら、連れて来いって言われたそうだ。あんたらの足止めをしながらな」
「つとむって、さっきの若頭だろ? どうしてあんな子が本宮と知り合いなんだい?」
「あいつは俺の子供じゃねぇぞ。本当の名前は、八神つとむって言うんだ。家は……これ以上はダメだな。悪いが、あいつの住所やらはこの町じゃ極秘扱いになってるからよ。むやみに話せないんだ」
「そうなのか。・・・・・・・・・・どうしてだか知りたいが、今はそれどころではないな」
「俺も眠いからな。お前らもここで寝ていけ」
「いいのかい?」
「構わねぇさ。どうせ、部屋は余ってんだからよ」
笑いながら頭はそういうと、自分の寝室に行った。それを見届けた後、
「では私達も寝るとしよう」
「隊長。あの少年の事、調べますか?」
「それは明日からやればいいさ。いや、もう日付が変わっているから今日からだね」
「分かりました」
という会話をした後に、SPたちも寝た。
一方、無事にいつきが住んでいる家にたどり着いたレミは、
「すみません。私のわがままのせいで・・・・・・・・」
「だからそれはいいって。あ、君の家には一応連絡はしといたから」
「どうでしたか?」
「怒ってはいたけど、心配していたよ。流石にこれには驚いたみたいだ」
「そうですか。……それにしても、これだけ広いのに人がほとんどいませんね。どうしてですか?」
「それは簡単だよ。父さんがそんなに人を雇わないからさ。それに、二人暮らしだとこれぐらいで丁度いいし」
その丁度いいが、まさか三階建てでその部屋一つ一つが広く、さらには庭が広いとは、誰も想像できないだろう。
「そういえば、八神さんとはどういったご関係で?」
「つとむ? ・・・・・・・ああ。僕と幼馴染なんだよ。昔は家がお隣だったから。ここに引っ越しても、学校とか一緒に通ってたよ」
「そうなんですか。・・・・・・・・あの方は素敵ですね。とっても強くてカッコイイです」
ウットリと話すレミを見て、いつきはこう思った。
(まったく、君はいつもいつも誰かを惚れさせるね。それが君の良い所だろうけど、もうちょっと節度というか、配慮というか、とにかくそういうものをして欲しいものだよ)
一通りつとむに心の中で恨み言を言い終えた時、
「いつき様。お電話が」
「あ。うん。分かったよ」
メイドが電話を持ってきた。レミは部屋に戻っており、ここにいるのはいつきだけである。
「はいもしもし、本宮ですが」
『あ。いつきさん?』
「その声は、茜ちゃんかい?」
『はいそうです。いつも兄がお世話になってます』
「こちらこそ。・・・・・・それで、何の用だい?」
『お兄ちゃん、いつきさんの家に泊まっていますか?』
「いや、泊まってないよ。客なら泊まっているけど」
『そうなんですか? ……う~ん、どこに泊まってるんだろ?』
「明日になれば帰ってくるでしょ。心配するのも分かるけど、寝た方がいいよ」
『そうですね。夜分遅くに失礼しました』
と言って電話が切れた。
「茜ちゃんは、つとむと違って礼儀正しいね。・・・・・さてと、そろそろ僕も寝ようかな」
そう言いながら、いつきは自室に戻っていった。その後、つとむの電話での言葉で、小一時間ぐらい寝れなかったのは、何とも言い難いことである。




