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アイドルッ!  作者: 末吉
第一幕・第四話 ベタな出会いほどよく巻き込まれる
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4-3 作戦決行

久し振りに感想をいただきました。一幕終了まで残りわずかになりましたね。

「ここか……」

「どうしますか? 隊長」

「・・・・・しかし、なぜこんなところに逃げたのだろうか?」

「分かりません。しかし、」

「分かってる。・・・・・・まずは正面突破だな。全員、玄関に集合させろ」

「分かりました」

「ようやく見つけましたよ。レミお嬢様」

 そう言って男は、『矢木組』と看板がある門の正面に立った。


「大丈夫でしょうか?」

「心配はいらねぇよ。あいつらだってヤワじゃねぇんだからな」

 車の中で、(かしら)とレミはそんな会話をしていた。

「それに、心配するならお前さんを追ってきた奴らにするべきだな」

「? どうしてですか?」

「つとむだよ。あいつはこの町、いや、周辺の他の町でもか?では最強の部類なんだよ。というか、あいつと喧嘩したら勝てる奴はいないな。少なくとも、本宮のSPたちとあいつの親父以外では負けないな」

「そ、そうなんですか?」

「ああ。俺らがあいつと会ったのはあいつが小三の頃だったが、その時にそいつが俺達の喧嘩に巻き込まれてよ、」

「え!? 大変じゃないですか!?」

「そうだと思うだろ? だけどな、あいつは俺達の事情も知らずにそのまま、手当たり次第に人をブッ飛ばしまくったんだよな。それから俺達は、喧嘩していたことも忘れてあいつに立ち向かったんだが、」

「返り討ちにあったんですか?」

「そうさ。小三のガキ一人に全滅させられたよ。その時にそいつは『こんなクダンネェ喧嘩するんだったら、ちったぁ町の不良ども大人しくさせろや』と言って立ち去って行ったんだ」

「随分キザッぽいですね…」

「そうだろ? だけどな、この町では不良もヤクザも強い奴の元につくってのが、暗黙の了解なんだよ。だから、そいつを調べてみたんだが驚いたぜ。まだ小三のはずなのに、この町の半分近くのグループが、あいつに負けてたんだ」

「・・・・・・・・・・・・あの人は何者ですか?」

「さぁな。・・・・・・・・ところで、話は変わるがあんた、つとむに一目惚れしたんじゃないか? 出発する前にあいつの事、熱っぽい目で見てただろ?」

「!!? な、なに言ってるのですかっ!!? そ、そそそ、そんなことありません!!」

「ふ~ん。ま、いっか。どうせもう会えないだろうからな」

「え?」

 どういう意味だか訊こうとしたら、

(かしら)。着きました」

「分かった。・・・・・・・さてと、降りろよ、嬢ちゃん」

「は、はい」

「インターフォンを鳴らして、自分の名前とつとむの名前を出せばいいだけだ。じゃぁな」

 そう言って車を出そうとしたら、

「あ、あの。この度は本当にすみませんでした。そして、ありがとうございました」

 と言ってお辞儀をするレミが。

「これに懲りたらもうこんな真似すんじゃねぇぞ・・・・・と言いたいところだが、無理して溜め込むんじゃねぇよ」

 それを見た頭がそう言った後、車は走りだした。

 残されたレミは、言われたとおりにインターフォンを鳴らして、家に入れてもらった。




 さて、時を戻して車が矢木組を出発して数分後。残った俺たちは、いつ来られても良い様に準備していた。

 その途中で、ピンポーン!! とインターフォンが鳴った。それを聴いて俺はまず、部下数名を玄関(の様な門)に行かせ、相手の動向を他の奴らに見張らせた。

「あんたら、なにもんだ?この町では見かけねぇ顔だが」

「ここに一組の男女が来なかったか?片方はドレス姿なんだが」

「知らねぇよ。ここには誰も来てねぇぜ。人違いじゃねぇのか? アァ!?」

「本当かね?」

「んな奴ら知らねぇよ。っていうかよ、もし知ってたらどうするつもりだよ?」

「ふむ。この家を捜索する」

「ふざけんじゃねぇ!! なんでお前らに勝手に荒らされなきゃいけねぇンだ!!」

「そうだ!! ここは俺達の家だ!!」

「隊長。この者たちをどうしましょうか?」

「やんのかおめぇら? 上等じゃねぇか!」「こんな奴らに荒らされてたまるかよ!」

「……仕方ない。君たちを倒して勝手に上がるとするか」

 と言って、双方ともにやろうとした時に、

『やめろ、馬鹿ども!!!』

 と言いながら、俺は門まで歩いて行った。その時に、俺と一緒にいた奴らもついてきた。俺の登場に驚いたのか黒服の一人が、

「君は?」

 と訊いてきた。

「俺は矢木組若頭の矢木勉(つとむ)だ。あんたらがどこの誰だかしんねぇが、うちの組に何の用だ?」

 とっさに思いつかなかったので、自分の名前を使った。正直、他になかったのかと思う。

「そうか。・・・・・・ところで、君のお父さんはどこにいる? 話をしたいんだが」

「悪いが、(かしら)は今、他の組達との話し合いに行っている。だから、この場は若頭である俺が話を取り仕切ろう。…それで? 何の用だ?」

「いや、何、ちょっとした人探しだ。この娘が男と一緒にここに来たらしいんだが・・・・・知らんかね?」

 そう言うと、目の前の先程から話をしている男は俺に写真を見せてきた。それを見てみると、あいつの制服姿が写っていた。どこの学校だ、ここは? と思ったが、顔には出さずにこう答えた。

「知らねぇな。俺はあんたらがここに来たからって起こされたんだ。お前らが無断で侵入しようとしている、と言われてな」

 そう言ったら、そいつを含め、黒服の奴らはやや驚いたみたいだが、

「ここに来たって言う情報があるんだ。悪いが、無断でもなんでも、調べさせてもらうよ」

 と言って入ろうとした。なので俺は、

   バン!!

「勝手に入るんじゃねぇ、って言ってるだろ? 入っていいのはな、俺か頭が許可した奴らだけなんだよ」

 銃を黒服の奴らの足元をめがけて撃ってから、こう言った。……久し振りに撃ったな、銃なんて。と思いながら次の反応を待っていると、

「・・・・・・ヤル気かい?」

 と、さっきから話してる奴が訊いてきた。

 決まってるぜ、そんなことはよ。

「ヤル気だぜ。ただし、お前らがこの敷地内に入った時にな。分かったか、野郎共!!」

『ウィッス!!』

「そうか。入らなかったら攻撃はしないんだな。・・・・・分かった。行け」

『ハッ!!』

 俺の脅しが功をなさなかったようで(もしくは慣れている可能性があるな)、黒服の何人かが敷地内に入ってきた。・・・・・堂々と入ってきたな、この野郎。

警告したのになと思いながら、そいつらが踏み込んできた瞬間に俺は、

   バキッ!! ドシュッ!! ドシャァァァ!!!

『ぐわぁぁぁ!!!』

「入るなって言ってんだろ。むやみにやらすんじゃねぇよ」

 木刀でそいつらを吹っ飛ばした。飛ばされたやつらは車道で仰向けになったまま、気絶したらしい。・・・・・・・・怪我はしてないな。

 その光景を見たそいつは、

「なるほど。君は言うだけあって強いようだな。どれ、私が直接相手してやろう」

 と言って踏み込んできた。だが俺は攻撃せず、他の奴らを挑発した。

「へっ! 他の奴らはどうするんだ?」

 入ってきたこいつは結構強い。観た感じでわかる。だから他の奴を先に倒す気でいたのだが・・・・・・・、

「いや、私だけでいい。君たちはそこにいなさい」

 そいつが他の奴らを留まらせた。

 チィ。ふざけやがって。あんまりやりたくないんだけどよ。そう思いながら、俺も組の奴らに声をかける。

「お前ら、俺がこいつの相手するからな。手、出すなよ」

『わ、若頭!?』

「いいな。絶対だぞ!!」

『りょ、了解!!』

 そんな光景を見たその男は、首を傾げて聞いてきた。

「いいのかい? 君だけで?」

「ああ。足手まといはいらないんだろ?」

「君もそういう考えなんだね。いいだろう。君のさっきの実力を評して一対一(サシ)で勝負しよう」

「武器は?」

「君はどうする? 私は使わないがね」

「じゃぁ俺も使わない。拳で勝負だ」

「決着はどうする?」

「そうだな・・・・・・・・・・背中が地面に着いたら負け。これでどうだ?」

「いいね。そうしようか」

 そう言いながらも、俺達はそれぞれの間合いを取っていた。その周りで、『若頭ぁ! 勝ってくださいねー!』『隊長!! 頑張ってください!!』と俺たちを応援していた。手を出すなと言った手前こう思うのは無粋だろうが、のんきだな。

 ま、こっちはこっちで始めるか。

「さてと、」「勝負だ」

 そう言って互いに一歩で距離を詰め、あっちは振りかぶった右を、こちらも振りかぶった右で相手の顔面を殴りかかる。

 この殴り合いは引き分け。クロスカウンターのように左頬に打ち込み、俺達はぐらりとのけ反る。

 が、それも一秒ぐらい。足腰で踏ん張った俺たちは、互いに倒そうと闘志むき出しの状態でもう一度殴りかかろうとする。

 俺はもう一度顔面を。あちら側は……がら空きになった俺のボディを。

 とっさに俺は腹の方に左手を移動させて受け止める体制を作りながら右をそのまま振りぬく。が、そのせいであちらに対してダメージはなく、またこちらも左手のクッションがあったおかげで痛みはない。

 一旦距離を置いた俺は、これ、ただ単に殴り合いだよな? と思ったが、気にする必要はないし、気にしてたら負ける。こいつ、隊長と呼ばれてるだけあって、強い。いつきのSPと同じくらいの強さだろう。殴られながら分析した結果がこれだったため、この勝負は負けたくないという気持ちで一杯だった。

 何故かって? いつきのSPに散々やられたことを思い出したからだよ。向こうを見ると、そいつも負けたくないという目をしていた。

 ……いいぜ。勝負を続けようじゃないか。そう思いながら、俺達はまた殴り合いをした。


 どのくらい経ったのだろうか。隊長と呼ばれてる男とつとむの殴り合いが始まってから。

 二人を見ると、両方とも肩で息をしていて、立っているのが不思議なくらいのレベルだった。

「ゼェ、ゼェ。・・・・・・・そろそろ・・・・・・・・ぶっ倒れ・・・・・・・・やがれ」

「ハァ、ハァ、ハァ。・・・・・・君こそ・・・・・・・倒れたま……え」

 そう言いながら、一歩、また一歩と、互いに近づいて行った。そして、

「・・・・・・・・オウリャァ!!」「・・・・・・・ウォォォォォ!!」

 と叫びながら、互いの顔を力の限りのストレートで殴った。

 勝負はそれでついた。

「……参った。私の負けだ」

 と言いながら、背中からドサリ、と隊長は倒れていった。ヤクザ側からは歓声が上がり、黒服の方は隊長に駆け寄っていった。その時に、つとむも限界だったのであろう。こちらもまたドサリ、と背中から倒れていった。ヤクザ達もつとむに駆け寄っていった。それと同時に、(かしら)が帰ってきた。

「なんだ、この状況は?」

「頭! つとむの奴、やりましたぜっ!!」

 頭の問いに部下がつとむたちのいる方向を指した。それを見て頭は感心した。

「ほぅ。俺が帰ってくる間にやったのか。やっぱ強ぇな。しかし……こいつらとどう話し合うつもりだ?」

 が、後半の問いかけに部下たちは目的を思い出した。

 それを見た頭は何やってるんだお前らとため息をつきながら思い、指示を出した。

「仕方ねぇ。ちと話して来るから、お前らつとむを家に運んどけ」

『了解っす!!』

 頭が言ったとおり、部下たちはつとむを運んで行った。そして黒服の方に近づいた。

「!? 誰だ!?」

「ここの組長だ。『頭』って呼ばれてるけどな。あんたらに話したいことがあるからそいつ共々家に来い。手当ぐらいはやってやる」

「……いいのか?」

「そう警戒すんな。俺に対して殺気がなければ、家にいても殺されはしねぇよ。それと、あんたらの探し人の居所について話そう」

「お嬢様は一体どこに居る!!?」

「それを話すから、家に来いって言ってんだよ。ついてこないと置いてくぞ」

 そう言うと(かしら)は家へと歩いて行った。黒服の人たちは、警戒しながらも後をついていった。


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