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アイドルッ!  作者: 末吉
第一幕・第四話 ベタな出会いほどよく巻き込まれる
24/205

4-2 事情と提案

さっさと第二幕まで行った方がいいですかね


「着いたぜ。ここだ」

 二人乗りって、体力スッゲェ使うんだな。昨日と同じ状況になりそうだ。と思っていると、

「こ、ここですか・・・・・・・?」

 と、そいつはちょっと怯えながら言った。まぁ、無理もないか。なんせ――

「ああ。そうだ」

「『矢木組』って、どう考えてもヤクザの人たちのところですよね!?」

 そう。俺達の目の前に建っているのは、矢木組と看板が掛けられている門がある家だ。看板に書いてある通り、ヤクザ一家が住んでいるところである。(部下も住んでいます。)ちなみに矢木組は、この町のヤクザを取り仕切っている一角だ。

「え~と、インターフォンは、と・・・・・・」

「し、知り合いなのですか?」

「ここか。久し振りだから忘れてたな。……ああ。昔、ちょっとな」

 ピンポーン!!

『誰だ?』

「俺だよ。さっき電話で話したから、話は通ってるはずなんだが」

『あ、兄貴じゃないですか!! ひさしぶりっす!!』

「分かったから開けてくれ」

『わ、分かりました!!』

 と言うと、門の扉が開いた。その時、

「……あなた、何者なんですか?」

 と後ろのいた女が訊いてきたが、

「ただの高校生だよ」と言って俺ははぐらかした。


「よう、久し振りだな。こんな夜分に悪いな」

『お疲れ様です!!』

「す、すごいですね・・・・・・・・」

 ヤクザの雰囲気にのまれそうになっていたが、大丈夫だったようだ。大した奴だな。

 玄関まで歩いている途中に、

「兄貴! 自転車はどうしましょう?」

「兄貴! その女の人どうしたんですか?」「まさか、さらってきたんすか!?」

 とか言ってきた。

「自転車はいつものとこ。こいつは追われてたから助けただけ。それ以外はないからな」

 全く、変な勘繰りするなってのに。と思いながら歩いていると、玄関に着いた。

「中に入ってもいいんでしょうか?」

「ここはすでに敷地内だ。今更どうこう言ってんじゃねぇ」

 と言いながら、俺はとりあえず電話した奴のところに行くことにした。


「よう、(かしら)。久し振りだな」

「久し振りだな、つとむ。いや、皇帝と呼ぶべきか?」

「普通に呼んでもらって構わない。さて・・・・・・・・・今日はありがとな」

「いいってことよ。しかし・・・・・この女は誰だ?」

 と、頭は俺が連れてきた奴を指差して、訊いてきた。

「俺も知らん」

「ここに来るまでに聴けたんじゃねぇのか?」

「こぐのに必死だった」

「そういや、そういう奴だったな」

 そう言って呆れる頭。追われてるのにそんなこと訊けるか。気を取り直して頭が、

「んで? あんた誰だ? どうして逃げてたんだ?」

 と訊いた。そいつは、ちょっと怯えながらも答えた。

「私は篠宮レミと申します。年は今年で十六です。逃げていた理由はですね――」

「ああ!」

「な、なんですかっ!?」

 こいつ―――篠宮レミ―――の名を聴いた時、俺は驚いた。

 だってそうだろ? まさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なぁ、あんた」

「なんですか?」

「いや……もしかして、スミレ学園の二年に姉がいるだろ?」

「そうですけど……そういえば訊くのを忘れてましたね。あなたの名前はなんですか?」

「公園にいた時に訊けたんだろうが…それは置いておこう。俺の名前は八神つとむだ。年はお前と同じだ。ちなみに、お前の姉と一緒の学校に通っている」

「八神、つとむさんですか。あれ? 姉とは学年が違うのに、どうして知っているのですか?」

「ちと、変なことに巻き込まれただけだ」

「?」

 俺が何を言ってるのか分からない、って顔をしているが、もう無視して話進めるか。

「んで? どうして逃げてたんだ? まさか……パーティに飽きて逃げてたんじゃねぇだろうな?」

 俺がそう訊いたら、そいつ――面倒だから篠宮妹にでもしとくか――がギクッ!! とわかりやすい反応をした。・・・・・・・・・・・図星かよ。

「え!? べ、別に、飽きて逃げたわけじゃありませんよ!!? ただ・・・・・」

「ただ?」

「つまんなくなっただけです!!」

 と胸を張った。・・・・・・あほか、こいつ。(かしら)を見ると、「面倒なことしてくれたじゃねぇか」と若干怒り気味。・・・・・・・・・・俺も悪かったと思ってる。

 でもまぁ、こうなったのも仕方ない。とりあえずは・・・・・・・・・・・・

「こいつ、どうする?」

「俺に振るな。手伝ってはやるが、それ以上はしないぞ」

 分かってるよ、たくっ。こんな奴をどうすれば・・・・・・・・・・・。

 そこで、俺はこいつと似たような境遇の奴を唐突に思い出した。こいつの力を借りるしかないか。・・・・・・・・・・・・・・・借りた後に何要求されるかわかんねぇけど。

 そして俺は、電話した。

 プルルルルルルルルッ!! ピッ!!

『何? こんな時間に?僕眠いんだけど』

「いつきか! それはすまんが、ちと厄介ごとに巻き込まれちまったから助けてくれ!」

『君は本当によく巻き込まれるけど、僕に頼るってのは初めてじゃない? 何があったの?』

「ああ。実はな――」

 ~説明中~

「――という訳なんだ」

『ふーん。それはまた変なことに巻き込まれたね。・・・・・・さて、どうしよっかな~?』

 やっぱそうなるか。分かってはいたんだ。こいつがわざと躊躇うなんてことは。

 ・・・・・・・・・・仕方ない。俺としては使いたくなかった『カード』を使うことにした。

「やってくれたらそうだな・・・・・・・・・お前が暇な日に何処か一緒に行ってもいいぞ」

『本当!!? ・・・・・・・う~ん、それでもどうしようかな~?』

 こいつ・・・・・・・・。俺にまだ何か要求するつもりか!!俺としては最大限の譲歩なんだが、これ以上何を要求するつもりだ!!?

「・・・・・・・・・・・・ちなみに、他に何を要求するつもりだ?」

『う~んそうだね~・・・・・・・・・退学しないこと。それぐらいかな?』

 いつきの要求としてはずいぶん軽いな。もうちょっと重いもんになるかと思ってたんだが。

「それぐらいならいいが」

『え? 退学しないんだよ? これから三年間、君が嫌いなあそこにいることになるんだよ?』

「ま、そうだが、もういいさ。退学するのは諦めたから」

『君が『諦めた』と言うのは珍しいね。どうしたんだい?』

「うっせ。嫌いでもなんでも、あそこ退学したら他の学校に行けるかどうか判らないからな。だったら、あそこを卒業してテレビ関係のところに就職しなきゃいいだけだと思っただけだ」

 実は、そんなことは前々から考えてたことだけどな。とは言わない。なぜなら、最初の頃は、まだ退学したいと本気で考えていたからだ。今日の騒動で、退学するのは無理そうだから前々から考えていた、これでいくしかないと思っただけだ。

 俺の言葉を聴いたいつきは、

『・・・・・・・・嬉しいよ、つとむ。君が退学しないって言ってくれるなんて。僕が巻き込んだのに、君はいつも僕の事を支えてくれるよね。』

「? 何を考えてるのか知らんが・・・・・・・助けてくれるのか?」

『いいよ。助けてあげる。それに、君のその状況を打開する策を教えてあげるよ』

「本当か!!? マジで助かるぜ!!」

 そう俺がお礼を言うと、

『いいさ。僕の方がいつも君に助けてもらっているからね。そのお礼だよ。・・・・ただ、約束は忘れないでね?』

 と言ってきた。言った手前、破棄するつもりはないので、「忘れるかよ。俺が忘れたことがあったか?」といったら、『あるよ。確か・・・・・・・・・・小学二年の頃だったかな?』と返された。

「スマン。ただ、あれに関しては、お前がややこしい所を指定したのが悪いんじゃねぇのか?……とにかく、策を教えてくれ」

『分かったよ。いい、策ってのはね――』

       ~説明中~

『――って感じ。できる?』

「簡単じゃねぇか、んなもん。・・・・・・・・・・・それで行くか」

『了承は取った?』

「今から取る。じゃぁな」

 と言って俺は電話を切った。そして、

(かしら)、篠宮妹、これからやることに説明するぞ。いいか――」

 いつきの策を説明した。説明を聴き終えた頭は、

「いいんじゃねぇか? 俺の部下たちにも手伝わせてやるから、きちんとやれよ?」

 と言ってきた。どうやらこの策に乗り気のようだ。・・・・・ホントにすまねぇな、頭。

 一方篠宮妹は、

「なんでそこまでしてくれるのですか?これは私のわがままなのに。」

 と訊いてきた。なんで、って訊かれてもな・・・・・・・・、

「俺が巻き込まれたものは、ちゃんと解決したいと思っているからだな」

 としか言いようがないだろ。そう言われて驚いたのか、泣きそうな顔をしていた。どうしてこうも女って、泣きそうになるのがはやいんだろうな? そう思いながら、続けて言った。

「そんなになるまで我慢するもんじゃねぇよ。行きたくないなら堂々と言えばいいだけだ。俺の身近な奴は、お前より『自分』を持ってるぞ?」

 その言葉で、篠宮妹は泣いてしまった。悪いことはしてないはずなんだが。

「なんで泣いてんだよ?」

「だ・・・・・だって、い、今まで・・・・・・ヒック・・・・・・・そう言ってくれた・・・・・・・人は、いません・・・・でしたから」

 と泣きながらも言った。余程気持ちを溜め込んでいたのか?こいつ?と思いながらも、泣き止むまで俺達は待った。

 二分後、篠宮妹は泣きやみ、俺達はいつきの策を実行すべく準備していた。この時の時刻は午後十一時二十分。もうこうなったらこの家に泊まるしかない。そう考えて俺は、自宅に電話した。

『はいもしもし、八神ですが』

「茜か?」

『お兄ちゃん!? ちょっと今どこに居るのよ!!? 心配したんだからね!』

「悪いな。今日は訳あって家に帰れないから。そんで、知り合いの奴の家に泊まるから」

『なんで帰ってこれないの!? お願いだから帰ってきてよ!』

「その代わりと言っちゃなんだが、明日一緒に行ってやるよ。ドラマの撮影の見学に、な?」

『うぅ・・・・・・・・・本当だよね? 信じていいんだよね?』

「当たり前だ。明日の朝には帰るからな」

『・・・・・・・・・・・分かったよ。私、信じるからね』

「応」

 と言って電話を切った。さてと、準備の続きでもしないとな。


「兄貴!! 決まってますぜ!!」

「そうか?」

「そうっす!! これならバレません!!」

「そうか」

「これ持ってください!!」

「ああ、それも必要だな」

こんな感じで、俺は準備をしていった。何の準備かって?そりゃぁ、

「これでOKっす!!」

「そうか・・・・・・・・野郎共!!準備はいいか!!」

『ウイッス!!』

「今から俺の事は『若頭』だ!いいな!!?」

『若頭―――――――!!!』

 俺がここの若頭になる準備だ。まぁ、話を順に追っていくとだな・・・・

『つとむがその組の若頭になって、その追っている人達―――SPの人達―――をそこで足止めしておいて、(かしら)とその部下数名は、彼女を乗せて僕の家まで送るって感じ』

「途中でばれるんじゃないのか?」

『それは大丈夫だよ。君たちの場所はもうすぐばれるだろうけど、そこから先はそこに留まっていると思わせればいいから』

 という感じだ。俺としても簡単な方が楽だから、この策は賛成だった。それで、話を戻すと、

「立派な若頭に見えるぜ、つとむ。跡取りとして欲しいくらいだ」

「そんなこと言うんじゃねぇよ、頭。他のやつらの方が適任だろ。・・・そろそろ出発しないと駄目じゃないか?」

「分かってるよ。・・・・・あの子がお前に挨拶したいらしいんだが、どうする?」

「いらね。どうせ明日になったら忘れるだろうから」

「そうか・・・頑張れよ」

「応」

 そう言って、頭は車の方に向かった。

 ・・・・・・さて、俺達はやることをするか。


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