4-1 ベタな出会い方
あけおめことよろ
「お疲れさまっしたー!!」
二つ目のバイトを終えて俺は、帰路についた。ただ、今日でこのバイトは終わりだ。
理由? 工事が終わったからだよ。工事のオッチャン達が名残惜しそうに、「次の工事場所決まったら連絡するからな。よかったらまた働いてくれ」と言ってくれた。…これが人情だよな。嬉しくなるぜ。しかし、このバイトが終わったという事は、俺の財布事情が厳しくなるという事につながる。次のバイトが見つかるまでは、喫茶店だけで稼ぐしかないな。と考えながら自転車をこいでいると、交差点から人が飛び出してきた。
「うぉ!!」「きゃっ!!」
キキ―――――――――――――!!!
あっぶねぇじゃねぇか!! ブレーキかけるのが遅かったら事故ってたぞ、今の!! と思いながらぶつかりそうになった人に、
「なんで飛び出してきたんだ!!」
と言いながらそいつを見た。そいつの恰好は、まず普通の人はそんなに着る機会がないであろう高級そうなドレス。どんなやつかって?知らん。次に顔を見てみると、結構端整な顔立ちで髪はややロング。……最近、どうしてこうも美人と出会うのかね? ふと疑問に思ったが、今はそれどころじゃない。なので、そいつの言葉を待ってると、
「いたぞ! あそこだ!!」
と声がした。もしかしてこいつ、追われてる? そう思ったのも束の間、そいつが突然俺に迫ってきて、
「す、すみませんが、助けてくれませんか!?」
と必死にお願いしてきた。それに対し俺は、断ればいいものを、
「いいぜ。後ろに乗れ。とりあえず、あいつらをまくからな。しっかり掴まれ」
と言って引き受けた。どうやら俺は、巻き込まれたらきちんと解決するまでやり通す性分のようだ。
今日は家に帰れるかな? と思っていると、
「は、はい! お願いします!!」
と言って、俺の自転車の後ろの方に乗った。
それを確認してから、
「とばすぞ!!」
と言って、俺は自転車を本気でとばした。
後ろの奴は「キャァ――――――――!!」と言いながら、必死に俺にしがみついていた。後ろに人を乗せるのは初めてだが、結構難しいな、バランスとるの。そう思いながら、ここから近い公園までこいでいった。
「いないだと!!? くそっ! お嬢様はどこにいったんだ!!?」
「さっき、誰かとぶつかったみたいだが……もしかして」
「きっとそいつがお嬢様をさらったのだろうな」
「探せ!!」
と黒服の連中が勘違いしながら探していた。
公園にて。
「あの! 助けてくれて、ありがとうございました!!」
「あ、ああ。別にたいしたことはしていないさ。それより、どうするんだ?」
「そ、そうですね。何処かに匿ってもらえばいいのですけれど……」
そいつは考えながらそう言った。今更だが、こいつ誰だ? 恰好から察するに金持ちの部類だと思うんだが……と考えていたが、
「おい」
「は、はい!」
「どこでもいいんだな? 匿ってもらうなら」
「ええ。それからは何とかしますから」
どうやらこいつは当てがあるらしい。それなら、
「ちょっと待ってろ」
「え?」
俺はケイタイで、ある奴に電話した。
プルルルルルッ!! ピッ!!
『応、どうした? こんな時間に?』
「ああ、ちょっとな。今からお前んとこ行くけど、大丈夫か?」
『そりゃ、急だろ。いくらなんでも。……もしかして、何かあったのか?』
「察しがよくて助かるぜ。事情はそっちに着いてから話す。実は俺もよく解ってないからな」
『わぁったよ。部下もいるから早く来い。尾行されるんじゃねぇぞ』
「分かった」
と言って電話を切った。さてと、
「行くぞ。乗れ」
「え? あの、どこに行くんですか?」
俺がいきなり乗れ、と言ったのに驚いたのか、そいつは不思議がっていた。それを無視して、
「匿ってもらえる場所だ。さっさと乗らないと、捕まるぞ?」
と言ったら、そいつは驚きながらも、後ろに乗ってくれた。
「またとばすからな。しっかり掴まっとけよ」
「はい!!」
それを合図に、俺は再び自転車をこぎ出した。どうでもいいことだが、しがみつく、という行為は胸が当たることを意味している。それに気付かないのは、必死だったからなのだろうか。
「おかしい。さっきまでここにいたはずなのに」
「もしや、我々に気づいたのでは?」
「あり得るかもしれん。……しかし、レミお嬢様にも困ったものだ」
「隊長。これからどうしますか?」
「くまなく探せ。ただし、ここは『本宮』の場所だからな。派手に動くな」
『ハッ!!』
「しかし、お嬢様と一緒にいる奴は、一体何が目的なんだ?」




