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アイドルッ!  作者: 末吉
第一幕・第三話 喧嘩騒動と生徒会
22/205

3-8 珍客万来

更新しなかった分と思ってください

「やぁつとむ。今日は大分稼げるんじゃないかい?」

「やっぱりお前か。それで? なんでジジイの所に居たメンバーがここに居るんだ?」

「へ!? え、えっとですね・・・・・・・」

「それはですね、学校が終わった後に生徒会のメンバーでここに来る予定だったのですが、その時に本宮君と長谷川さんがここに来る話をしていたので、なら皆さんで行きましょうと言う話でまとまって、今に至るわけです」

「丁寧な解説をありがとう。でも、結局は全員がここに来ることになってたじゃねぇか」

「あら?」

「そうなりますね」

「そうですね~」

「本当ですね」

 本当にこいつは抜けてるんじゃねぇか? そう思わずにはいられないのだが。

 と、そんな話をしていたら、

「そういえばさ、さっき僕達のこと『地雷』って言ってなかった?」

 いつきが低い声でそう言った。こいつは地獄耳か? と一瞬思ったが、ここはあんまり広くはないため、俺の声は普通に聞こえる。

 こうなったら腹くくるか。俺はそう思い、正直に言った。

「言ったよ。悪かったな、それは。だけどな、お前も分かってるだろ? 俺は、あの学校は嫌いなんだ。そんなところの奴とはできるだけ、関わりたくないんだ」

 ここで俺は一区切りした。長谷川はうつむいて表情は見えないが、おそらく泣きそうになっているのだろう。白鷺は何やら思案顔だった。他の生徒会の奴らは「あいつ、やっぱり殴ってやる!!」「落ち着いてよ~岡ちゃん~」「ここは店内ですよ。落ち着いてください」とやっていた。

 なんかスマン。

 残ったいつきはというと、いつもの表情ではなく真剣な顔で俺の話を聴いていた。こいつはこんな顔も出来るのかと思っていたら、

「そこまでハッキリ言うという事は、やっぱり君はあそこにいるのが嫌いなんだね?」

「ああそうだな。俺は嫌いだ。だがな、」

 と、いつきの質問に肯定してからこう言った。

「だがな、俺は一生懸命に役者とかになろうと頑張ってる奴は良いと思うぜ」

 これは俺の正直な思いだ。頑張る奴はすごいと思う。

 カウンター席の奴らを見てみると、長谷川は頬を染めているし、いつきは「君はいつも正直な思いを口にするよね。反応に困るんだけどな」と言ってるし、白鷺は「ふふっ。八神君は正直ですね」と言ってるし、生徒会のメンバーは「カッコイイですね~」「そうですね」「フン! あれはどうせ演技ではないのか!?」と言っていた。…っておいコラ、最後の奴。疑いすぎだろ。そう思いつつ、

「さてと、長話はここまでだ。なんにする?」

 注文を取ることにした。こんな話、さっさと終わらせないと他のバイト行けなくなるからな。

「じゃぁ僕はいつものね」「私はこの、ショートケーキで」「それでは私は、昨日と同じチーズケーキで」「私はイチゴパフェで~」「私はイチゴのタルトで」「私はチーズケーキだ!」一斉に注文してきた。分かった、分かった。

「モンブランひとつ、ショートひとつ、チーズ二つ、パフェひとつ、タルトひとつな」

 と言って、俺は調理室に向かった。こりゃ多いかな?


 つとむが調理室に入った後、

「それにしても、どうして八神君はバイトをしているのですか?」

「うちの学校はバイトを許可していますが、やるバイトは普通、各学科に関係のアルバイトをしていますよ。ですが、」

「八神君はその関係ではなく、普通の学生がやるバイトをやっていますね。申請はされていませんが」

「え? あれって、申請しなきゃダメだったの?」

「ここを紹介したのはあなたですか?」

「そうだよ。つとむがどうしても、って言うから」

 いつきがはにかんでいうと、

「その話を聴くと~、八神君と君は~、昔からの知り合いのような気がするんですが~?」

 生徒会のメンバーの一人がこう訊いてきた。

「そうだよ。僕とつとむは幼馴染なんだよ」

 と嬉しそうに話すいつき。

「ところで、どうして八神君はここでバイトしてるのですか?」

 そこで長谷川が話を戻した。

「ああ、それ? それは簡単だよ。単に小遣い稼ぎのためだよ。親が小遣いをくれないらしいからね」

「え?」

「そうなんですか?」

「うん。だって」

 と話をしようとしたら、

「そこまでだ。ほらよ、注文の品だ」

 つとむがそれを遮った。

「まったく、気付いたら俺の身の上話になってたじゃねぇか。しかも、なんでいつきが話してるんだよ?」

「あはは。最初の話題が君だったから、ね」

「あっそ。まぁいい。さっさと食べろ」

「「「「「「いただきま~す」」」」」」

 そう言って、いつき達は食べ始めた。


「おいし~。やっぱり、つとむの料理はいつ食べてもおいしいね~」

「そうか」こいつはいつもそんなことを言う。・・・・・・嬉しいが。

「お、美味しいですっ!! 八神君!」

「お、おう。ありがとな」顔が近い。引くぞ。

「このレシピ教えてくれませんか?」

「頑張ってつくってくれ」教えてたまるか。

「おいしいです~」

「意外においしいですね」

「意外とはなんだ、意外とは」よく言われるが。

「・・・・・・・おいしい」

「そりゃどうも」信じてなかったんだな?

 それから、少し話をしていたが、

「あ。やべっ!」

「どうしたんですか?」

「マスター! 俺上がるから! またな!」

「明日はどうするんだ!?」

「多分、無理!!」

 と言って俺は更衣室に駆け込んだ。後ろの方でマスターが、「マジでかっ!!」と言っていたが、気にしなかった。

 急いで着替え終え、マスターからバイト代を貰い、店を出た。ふぅ。一つ目と二つ目のバイトの間の時間がきついんだよなぁ~。ま、こうなってもいいと言っちまったからな。愚痴言わないでこぐか。そう思って、二つ目のバイトへ向かった。

何事も無ければいいと祈りつつ。


「どうしてあんなに急いでいたのでしょうか?」

「ちっ。つとむの野郎、時間を理由に逃げたな」

 長谷川が、なぜ八神は急いでいたのか、と疑問に思ったが、マスターは逃げたことを恨んでいた。相手が美人と評してもよい人たちと、頭が上がらない人だからである。

 そこでいつきが、

「バイトの掛け持ちをしてるからだよ」

 と言った。それを聞き逃さなかった白鷺が、

「掛け持ち、ですか? どうしてそこまでお金が欲しいのでしょう?」

 と訊いてきた。それに答えたのはもちろん、いつきだった。

「さっき言いかけたことなんだけどね。つとむの家は、まぁ普通の家なんだよね。経済面は」

「「「「「?」」」」」

 いつきが経済面だけを普通と言ったので、他のみんなは『なぜそこだけ?』と思った。

「そこには触れないでおくけどね。とにかく、つとむの両親が『高校生になったら自分でバイトしろ』って中学二年の頃に言われたんだ。確か、その時から小遣い停められてて、遊びに行っても何も買えないで見てるだけだったんだよね。ま、そのおかげか知らないけど、つとむは記憶力もよかったんだよね~」

 いつきが詳細を説明し終えた時に、全員が『割と大変な思いしてるんだなぁ~』と思ったのは言うまでもない。

「さてと、僕もそろそろ帰ろうかな。みんなは?」

「あ、私も帰ります」

「私も帰らないといけません。もうすぐ迎えが来ますので」

「私も帰らないといけないな」「私もですね~」「私もです」

 と全員が帰ることになったのだが、

「会計。金は払って行ってくれ。計三千四百三十円だ」

 マスターが、金を払っていけと言った。

「誰が払おうか?」

「なら、私が払いましょうか?」

「白鷺先輩、いいんですか?」

「構いませんよ。今日も来ようと思っていましたから」

「ありがとうございます、白鷺さん」「ありがとうございます」

「いえいえ。今日はとても楽しい時間を過ごさせていただきましたから、そのお礼です」

「会長、我々の分もすみません」「助かります~」「感謝いたします」

「どういたしまして。では、これでお願いしますね?」

「五千円札か。普通の高校生がポンと出せるような金額じゃないんだが・・・・まぁいい。お釣りの千五百七十円だ」

「ありがとうございます」

 と言って全員が出て行った。それを見届けた後に、

「明日の店、どうすっかな~?」

 とマスターがつぶやいたのは、誰にも聞かれなかった。


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