表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルッ!  作者: 末吉
第一幕・第三話 喧嘩騒動と生徒会
21/205

3-7 早すぎたバイト

パソコン二週間使えなかったのでこちらは更新できませんでした。

「ん? つとむか? やけにはやいな、さぼりか?」

「ちげぇよ。停学になったからさっさと来たんだよ」

「お前が停学? 何やったんだよ、一体?」

「ちと、乱闘騒ぎになってな」

 その一言で、マスターは事情を理解したようだ。「ま、詳しいことは訊かねぇからよ。バイトするんだったら着替えてくれ」と言ってくれた。助かるね。

 それから、俺は着替えていつも通り仕事を始めた。マスター曰く、「停学なんだから、営業開始からいつもの時間までやれよ」。俺としてはそのつもりだったが、「連絡してくれれば行く」とだけ言っといた。

 で、働いてみて思ったことだが、いつもの時間とは違い、人が少ない。そりゃそうか。今の時刻は午後二時をちょいまわったばかり。この時間帯だと本当に暇な奴らしか来ない。それか、締め切りに追われてる奴らぐらいか。

「暇だ」

 そうつぶやいたら、マスターに殴られた。

「ぼやいてないで、働いたらどうだ?」

「俺が普段してる仕事なら終わったぜ。他にないのか?」

「ん? そうだな・・・・・・・・・・・ない」

「ないのかよっ!!!」

「仕事があるまでは本でも読んでろ。レジの前でな」

 と言って、スタスタと行ってしまった。要するに、マスターも暇なんだな。

 その後しばらくして午後三時になって、ようやく俺が来るときの常連が来た。

「いらっしゃい」

「八神君じゃないか。いつより早いけど、もしかしてようやくサボリかい?」

「ちげぇよ。停学くらったから直できたんだよ」

「ということは、いつもより早く来ても八神の料理が食えるんだな」

「嬉しいね~」

 そんなに俺の料理は美味いのだろうか? 時折不思議に思うが、食ったやつらが「おいしい」というので、美味しいのではないかと思っている。これをいつきが知ったら間違いなく、「君はいろんなところが無自覚だよね」と言われるんだろうな。ふぅ。

「注文は?」

「俺、ミートスパ」

「じゃぁ、私はイチゴパフェと、カフェオレかな」

「俺はハヤシライス、粉チーズ付き」

「マスター!!」

「分かってるよ! カフェオレは出しとくから、他のやつつくれ!!」

「了解!!」

 と言って、俺は料理を作ることにした。

 さっきまでが嘘のようだな。と今本気で思った。

 二十分後、

「はいよ。ミートスパ、イチゴパフェ、ハヤシライスの粉チーズ付き」

「相変わらずうまそうだな~」

「ホントだよね~」

「ああ」

 出した料理を見て、それぞれに感想を言っていた。

 そういえば、

「今日、来れないんじゃなかったのか?」

「ああ。本当は来れなかったんだけどね……」

 俺が訊いたら、常連の一人が何故か落ち込んでいた。何かあったのか?

「それがね~、美鶴が予約間違っちゃったみたいでね~」

「明日になってしまったんだ」

「ふ~ん。で、何の予約だったんだ?」

「旅行だよ。俺達三人で行くんだ」

「それはいいじゃねぇか。どこに行く予定なんだ?」

「九州のほうだな」

「その話聞いてたら、俺も早く旅してぇなぁ、って思っちまったぜ」

「八神君はどこに行くつもりだい?」

「俺は……まだ決めてないな。ただ、日本全国を旅したいとは思ってるぜ」

「一人で?」

「ああ」

「ま、頑張れ」

「分かってるよ」

 そんな風に談笑していると、

「お前ら、俺の賄飯食べるんじゃなかったのか?」

「「「あ」」」

 マスターの一言で、客の方の動きが止まった。……忘れてたんだな。

「そ、それじゃ、丁度八神君の料理もあるわけだし、マスターの賄飯出してよ」

「そうだね。よろしく、マスター」

「お願いする」

 客の一人が機転を利かせて、俺とマスターの料理対決になった。これ、誰が得するんだ?

「忘れてたんだな? ・・・・・・まぁいいか。お前らに本当の実力を見せてやる」

 と言って、マスターが調理室に行った。

「と、いう訳で、ちょっとの間、八神君の料理は食べられなくなっちゃった」

「でもマスター、どんな料理作ってくるのかな~?」

「楽しみだな」

 と話していること十数分、マスターがいつもの賄飯を持ってきた。

「ほらよ。これが俺の実力だ」

「なっ!? マジかよ!!? いつも出してる料理とは全く違うじゃねぇか!!」

「え!? これが本当に、マスターがつくった料理!!?」

「信じられん……」

 信じられないだろうが、これがマスターの本気。いつも出してる料理は、何故かおいしくないのだが、賄飯だと物凄くおいしくなる。これはいつきも知らない情報だ。

 前に理由を訊いたが、

『レシピ通りにつくってるはずなのに、何故か不評が来るんだよなぁ』

 と言っていた。いや、理由になってないから。

 その賄飯を客の一人が食べてみると、

「――うまい」

 と言った。

「確かにおいしそうだけど……」

 と言いながら二人目も食べてみると、

「――おいしい」

 と驚いていた。三人目に至っては、何も言わずに黙々と食べていた。うまいよな、それ。

 数分で三人は食べ終えて、それぞれ感想を言った。

「まさか本当においしかったとはね。最初はただの謙遜だと思ったよ」

「な? 嘘じゃねぇだろ?」

「そうだね~。これは八神君とどちらが美味しいのかな~?」

「どっちもおいしいから、判断がつかないな」

「そうだな! じゃ、引き分けだな!!」

 結局、料理対決は引き分けになったらしい。俺としては、マスターの方が上だと思うのだが、マスターもその判定には満足しているみたいだ。

 その後、俺がつくった料理も食べ、会計時に『賄飯・三百四十円』が追加され、その常連の人たちはちょっと後悔したみたいだった。

 意外と抜かりないよな、うちのマスター。

 そして、俺が普段来てる時間帯になった。だから、いつもの客が来ている。ま、それは俺としては、ありがたいんだがな。何故って?いつもと変わらない日常。それは平穏の時間と変わらないと、俺は感じているからだ。ああー、あいつらと関わらないとこれほど平和に感じられるのか。と思いながら料理を作っていると、

カランコローン!!

「いらっしゃい……久し振りだな」

 また客が来た。この時間帯でもそんなに客が来ないのがこの店なんだが、今日は客が多いな。作り終えた料理を運びながら、俺はそう思った。

「ほれ。できたぞ」

「お~。やっぱり八神君の料理はおいしそうだね~、いつも」

「そうか」

 と客と話をしていると、ふと誰かの視線を感じた。しかも複数。誰だと思って辺りを見渡すと、見つけてはいけない奴らを見つけてしまった。もしかして…さっき来た客はこいつらか? そう思いながら、どうやってカウンター席を通らずに調理室に行こうか? と考えていると、マスターに捕まった。

「おい八神。こっち来て相手しろ。そっちの方は何とかしてやるから」

「はぁ!? ザケんじゃねぇ! どう考えても地雷じゃねぇか! わざわざ踏みに行くかよ!」

「クビにするぞ」

「……わぁったよ。たくっ、無事でいたいところだぜ」

「任せたかんな~」

 ……ハァ。もうどうにでもなれ(二度目)。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ