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アイドルッ!  作者: 末吉
第四幕:第二話~夏休み中旬~
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時代劇

 そのまま日本刀で板を分割しまくって看板にした俺は流れでレイアウトまでやる羽目になり、町長から「帰っていいぞ」と言われたのが昼頃。


 絶食してバイトに向かうと大変なので道中のスーパーでおにぎりを買いながらバイト先へ向かい、相も変わらず常連と俺目当てらしい客がいる喫茶店で閉店時間までバイトした。


 それから七月十九日(火曜日)。


 いつもより早く起きて(午前五時半)家族の朝食を作り家を出た俺は、自転車である場所へ向かった。


「よぉ甲斐。来たぜ」

「悪いな、八神。付き合わせて」

「全くだ。これで金でなかったら帰るからな」

「そんなことにはならないと思うが……」


 ある場所(学園前)に時間通りに到着できたことに安堵しながらあいさつした俺は、そのままの流れで待っていた人物――新妻甲斐が待っていた車に乗り込んだ。



 そもそもの発端は、ポスター配りの時だ。

 夏休みだというのに学校に貼る(そもそも許可取りの時点で)なんて無駄じゃないかと思いながら職員室で先公と話し、用務員にポスターを渡し終えたとき。


 次の場所へ行くかと思いながら廊下を歩いていると、反対側から甲斐が歩いてきた。何やら真剣な表情をしている。

 普段何をしているのか知らないが、珍しい事もあるもんだと思いながら「よぉ。どうしたんだ深刻な表情をして」と挨拶がてら声をかけた。


「……ん。おお、八神か……って、お前が何でここに?」

「地元の手伝いで来ただけだよ。仕事に関しての話をしに来たわけじゃない」

「そうなのか……まぁそうだろうな」

「で、何深刻な顔してるんだ?」


 俺も時間がないので話を戻すと、「ちょっと出演の件でな」と言われたので話を終わらせることに。


「そうか。頑張れよ」

「お前ならそういうだろうな……はぁ」

「悪いが、俺も時間がないんだ。またな」


 さっさとポスターを配り終えたいので会話を終わらせて通り過ぎたところ、「八神、少し待ってくれないか?」と言われたので立ち止まって振り返る。


「何だよ」

「あ〜〜……その、何だ。時代劇に興味はあるか?」

「時代劇……? なんでまた」

「実はな……」


 そう前置きをして、甲斐は現状を語りだした。


「俺はこの夏休み身内の関係上出かけなくてはいけないからその前に仕事を受けたんだが、一緒に参加しようとした奴が緊急の用事が重なってしまってな。職員室にそのことを伝え、どう対応すればいいのか訊きに来たんだ」

「ちなみにいつやるんだ?」

「19日だ」

「だったらその間に人探せばいいだろ」

「そうだな……探すか。だが」


 そう言うと何故かじっと俺を見てきた。


「なんだよ」

「探してダメだったらお前に頼んでいいか? 共演」

「一人でできるか確認してからにしろよ」

「……そうだな」


 ――――っていうことがあってから2日後。無事電話がかかってきた。その結果が今。


「全く。一週間近くあったのに誰も居なかったのかよ」

「悪かったな。俺も友達が居ないんだ」


 ……なんか引っかかる言い方だが、気にしないことにして。

 車の中で自分で作ったおにぎりを頬張りながら、「結局何やるんだ?」と質問する。


「見てないのか……」

「見てないというか、もらってないだろ。今日まであの日から出会ってないんだから」

「それはそうだが、電話で内容は伝えただろうが」

「時代劇のエキストラってだけだから、詳細が分かんねぇんだよ」


 そう言うと彼は「そうだったか?」と首をひねってから説明してくれた。


「俺が受けた仕事は『大将軍吉宗』のエキストラ。出番としては終盤の大立ち回りのやられ役だ」

「やられ役、ねぇ……」


 なんかそういう役ばっかりだな。いや、主役がやりたいというわけではないが。

 思えば敵役ばかりやってる気がするな。外見のせいなのか? やっぱり。

 なんてことを思ったが、時代劇という単語でふと思い浮かんだことがあった。


「『()』のことを知ってる奴がいるんだろうか……」

「? お前、今や時の人だろ。業界で知らないモグリのほうが少ないぞ」


 そんなことを気にした発言ではないのだが、勘違いさせたままでもいいかと思って「そんなものか」とつぶやき、窓の景色を眺める。


 車は高速を走っている。風景が山ばかりになったり畑や田んぼばかりになる。スタジオでやるのかと予想していたが、結構場所が遠いのだろうか。


「どこに向かってるんだ?」

「場所は書いてあっただろ」

「送ってくれるから気にしてなかった」


 まじかよ……って顔をされているが、元来興味のないことに時間を割くことがない人間なのだ。ちらっとその場で確認しても、記憶に残らないことが多い。

 携帯電話に残っているから確認できるからっていうこともあるんだろうか。なんて思いながら今確認する。


「……英島映画村? どこだ?」

「時代劇を撮影するために作られた場所だ。大体の時代劇はここで撮影されているぞ」

「そうなのか。結構遠いのか、ひょっとして」

「そこまでではないぞ……というか、授業でやっただろ」

「あ? あ~……そういえば」


 言われて思い返し、そういえば先公が現在の色々な撮影場所について説明してたことがあったことを思い出す。

 その態度に彼はあきれていた。


「全く……少しはパッと思い出せるようにしないとダメだろ」

「……そうかもな。基本的に支障ないと思っちゃうからすぐに出てこないのかも」

「それで何とかなると思うと痛い目見るんじゃないか?」


 ……それはそうなんだが、そのうちが来る可能性があるのかどうか、だよな。

 今年は拒否できても来年以降があるからなぁ~一回でも出演しないといけないからあるといえばあるのか。真面目に思い出さないとな。美夏にも言われたっけ。


 興味がないものに記憶を使うことに対しての陰鬱感がぬぐえないのはまだ若いからなんだろうかと考えながら、手加減をしなければいけないことを思い出してため息をついた。




 八時半頃に現場に到着した。今更だが服装は学校の制服だ。美夏との時は生放送などの要因で私服(本来はスタイリストに渡される服)だったのだが、時代劇で撮影ということなので。和服は向こうが用意してくれるだろう。メールにも持参とは書いてなかったし。


 サイズは揃っているんだろうかと今更な不安を覚えていると、「まずは監督に挨拶しにいかないとな」と言われたので「そうだな」と無難に返した。


 甲斐について歩いていくこと数分。

 今回の現場であるスタジオの前に到着した。

 控室は通り過ぎた感じ無いのかひとまとめになっているのかのどっちかだが、それは挨拶してからで良いか。


 ……そういや、昼食出るんだろうか。よく見てなかったから気にしてなかったが。

 出なかったらまぁ絶食か。久しぶりの訓練と思えば我慢できるな……自業自得だけど。

 そんな緊張感の欠片のないことを考えていると「中に入るが……静かにな。シーンの撮影中の可能性もあるから」と緊張した面持ちで甲斐が注意してきたので、「分かったよ」と相槌を打って後ろに下がる。


「俺が開けるのか」

「お前が出演を希望したんだから先頭に立ってくれ。それに、下手に触ると壊しかねん」

「……お前が言うと冗談に聞こえないな」


 苦笑しながらそう答えた彼はスタジオの扉をゆっくり開ける。それなりにデカいから音を立てそうなんだが、摩擦を減らしているからか音がそこまで聞こえない。

 人が一人通れるくらいに開けたところ「カット―――!!」と大声が聞こえたので甲斐が反射的に動きを止め、俺は普段通りスタジオに入った。


 入って中を確認してみたら撮影する舞台を囲むように大きいカメラや集音マイク、出番を待つ出演者やマネージャー、小道具などの準備をしている裏方や出演者たちを集めて話をしている人がいた。彼が監督なのだろう。


 さっさと甲斐入って来ないかなと待っていると、「忍者かお前は……」と小声で呟きながら彼が来た。


「別に忍者でなくても頑張ればできるぞ」

「その頑張るにどのぐらい時間かかるんだ」

「人にもよるが……遅くて半年ぐらいか? って、そんな話いいだろ。さっさと挨拶しにいかないと」

「そうだな」


 そして俺たちは監督に挨拶をするために移動した。

ではよいお年を

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