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アイドルッ!  作者: 末吉
第四幕:第二話~夏休み中旬~
201/205

案内2

二ヶ月何していたに関しては、学習してない結果です。申し訳ございません。

 壁を壊すのを警戒してハンデも兼ねて普通の倍以上の距離を離して俺は投げた。

 そのおかげかどうかは知らんが壁に亀裂が入るとかはなかったので安心し、尚且つ結果は……


「あの距離からでも三連続で最高得点に中てる事が出来る精度があることに驚きですけど……今更ですね」

「いつきもなんだが『段々感覚が麻痺』してくるらしい」

「それは嬉しい事ですね。また少しつとむ君に近づけたので」


 距離感がってことなんだろうか。彼女の発言の意図をそう解釈して「それを嬉しいっていうのは今後どうなんだ?」と呟く。


「どうなんだって、酷くないですか? 私はこれからもつとむ君ともっと一緒に過ごしていきたいと思っているんですから」

「……」


 真顔で、しかも顔を近づけてきてそう言ってきたので、沈黙で彼女の言葉を噛み砕いてから「それで? 次はどこへ行くんだ? 二階はもうないんだろ?」と確認する。


「そうですね。三階も説明終えましたので、これから一階にある施設を説明しましょうか」

「口頭の方が早くて楽なんだがなぁ」

「……私と一緒に行動するのが嫌なんですか?」

「嫌ならこの話を断って俺はバイトしてる」

「あ、待ってくださいつとむ君!」


 あー早く家に帰りたい。



 階段を飛び降りてショートカットした俺は、着地した時に響いた音が少し気になった。

 一階なのだから音の反響はそれほどないはず。下は地面なのだから。

 だというのに少しばかり反響音が聞こえた。これはどういうことだろうか。


 ……美夏が知らない地下室があるのか、ひょっとして?


 そう結論付けたが、俺には関係がないので黙っておくことにして、改めて一階の構造を確認する。

 玄関を中心に左右に分かれている。学校の校舎の構造もこんな感じだろう。ただし、規模が全く違うが。

 というか普通に玄関側窓ガラスと調度品だけなのとんでもないな。設計者は庭の風景を見れるようになんて要望を受けたのか、これは。


 大変だったろうなと感想を持ちながら左右に視線を移すが、長い廊下に溶け込むような扉なので正直どこがどこなのか予想もつかない。


 まぁ食堂が玄関から見て右側にあったのは分かるな。そう思いながら待っていると、「いきなり飛び降りるなんて、心臓に悪いのはやめていただけませんか?」と息を切らしながら階段を降りてきた美夏がそう忠告してきた。


 俺にとっては割と日常的な行動なので思わず肩を竦める。これぐらいで危ないなんて今更過ぎて。

 ひょっとすると調度品の弁償とかを忠告する意味なんだろうかと勘繰りながら「そこまで驚くことじゃないんだがな」と息を吐く。いつきなんてため息をつきながらゆっくり歩いてくるだろう。


「まぁ確かにそうですけど……誰が見ているかわかりませんから」

「そん時は俺が謝ればいいだけだから心配しなくて良いだろ。壊さんように加減してるし」


 そう言うと彼女は何とも微妙な表情を見せた。

 まぁこんだけ言ってて人の家で若干羽目を外してる行動しているのは間違いないんだよなと思いながら「悪かったな。階段の縁を滑り落ちなかっただけでも印象は良いだろうよ」と冗談めかして謝る。


「え、その発想、あったのですか?」

「冗談だよ、冗談」

「冗談に聞こえなかったのですが……」


 いや良識はまだ最低限あるからな俺。それ言ったら墓穴になるから言わないけど。

 返す言葉もないので、話題を終わらすために「さっさとほかの部屋行こうぜ」と彼女に提案した。


「……まぁ、確かにそうですね。気を取り直していきましょうか」

「おう」

「まずはこっちへ行きましょうか」


 そう言って彼女が指を差した方向は、俺らが食堂へ向かった方とは逆側。

 となると食堂側に家族団欒する場所が集まっている感じなんだろうかと推測していると彼女が歩き出したので、その後ろをついていくことにした。



「こちらの方は図書室になっているんです」

「……一階のこっち側全部か?」

「ええ。皆さん思い思いに本を買ってはここに保管していくおかげで、部屋を広くしたら」

「はぁ……売ったりしねぇのは流石だな」

「売る、ですか?」


 売るって選択が頭の中にねぇのか……やっぱり金持ちなんだな。いつきも昔はそうだったし。

 やっぱり世界が違うんだなぁと思いながらも「読まなくなった本を店に売れるんだよ」と簡単に説明する。


「そういえばそんな業界がありましたね。私は行ったことありませんけど」

「だろうな。いつきだって行かないし」

「そうなんですか? つとむ君と一緒なら行くと思っていましたけど」


 予定が合わないのもあるし、そもそも古本屋に行くことがそれほどなかった。

 買う本は新品だし、古本屋は立ち読みの方がもっぱらだったからな。売ることもしなかったし。

 いつきの奴は古本屋の業態を地元じゃなくて会社の方で知ったらしいからな。

 なんて思っていたら扉の前に来たらしい。彼女が止まったので俺も止まる。


「今度古本屋さんに行ってみたいです、つとむ君」

「地元以外場所知らねぇから」

「ならまた案内してくださいね?」


 前回は無理矢理来たし夜だから何も見てないから案内してないんだよなぁと彼女の発言に思いながら、「いつきにでも聞いてみたらどうです?」とはぐらかす。


「……分かってて言ってますね?」

「何がですか?」

「……まぁいいですけど。早く入りましょうか」


 ジト目で見てきたようだが俺は無視して彼女が先に入った図書室に入った。


「本棚多くて狭いな……」

「まぁ部屋はぶち抜けませんから」

「本が床に積みあがってないだけでもすごいけどな、これだけの量があるのに」


 入った部屋の中は一面本棚ばかりだった。読めるスペースを完全に潰した本棚の配置で、何とか人一人歩けるスペースを確保した通路だけ。


 ……って、見える範囲でこれなのにこの部屋全体がこれか?


「ちょっと確認してきていいか?」

「この部屋を、ですか?」

「ああ。気になったからな」

「ええ、大丈夫ですよ」


 美夏の許可が取れたので人の気配が俺たち二人以外いないことを確認してから、軽く移動する。

 一歩で俺たちの反対側へ移動し、そこから壁の端へ本棚を見ながら反復横跳びする。


 ……こりゃマジか。読む場所ねぇじゃん。


 十秒ぐらいで往復して元の場所に戻ってきたら、美夏が目を丸くしていた。

 まぁ驚かれるなと思っていると、「本当に見てきたんですか?」と質問してきた。


「当たり前だろ。見たかったのはこの部屋の構図だからな。ただ移動すれば分かる」

「……そうなんですか。とんでもないですね改めて」

「だろうな」


 俺達なんて他者から見ればそうだな。

 そう言いたかったが、話題を変えないと延々と続きそうなので「そういや本ってどんな種類あるんだ?」と訊いてみる。


「本の種類ですか? そうですね……私は置いていませんけど、私達の歴史だったり御爺様やおばあさまの趣味の本だったり、お知り合いの作家の皆様からの新作だったり……色々です」

「それを全部収納するのに本棚増やしたのか……凄いな」

「そうですね……何か読まれます?」

「いや、いいや。他の部屋案内してくれ」

「分かりました。では部屋を出ましょうか」

「おう」



 図書室を出た俺達は戻りながらあの話をすることになった。


「そういえばつとむ君。ずっと聞きたいことがあったんですけど」

「ん?」

「来週に行われる夏祭りの事です。ゲストって他に誰かいらっしゃるんですか?」


 其の質問に俺は少し考える。

 別に言っても問題はないんだが……情報がいつきにどの段階で漏れるかが予測できないんだよなぁ。

 漏れたら困るのかって? 当たり前だ。当日は非番のSPが祭りを毎年録画しているから当日なら問題ない。ただその前にバレるのはマズイ。俺が主体的に誘っているわけじゃないが。


 合流する可能性あるのがまたなぁと思っていると、彼女から「いつきちゃんに漏れるのを考慮しているんですか?」と訊かれた。


 まぁそう考えるかと納得した俺は「そうだよ」と答えると「そこは安心してください」と自信を持って返された。


「出遭ってもそのことについて触れませんから」

「まぁそれが出来るならいいけどよ」

「心配性ですね」

「始まる前にバレるのが一番ダメージが大きいんだよ俺の……。出演者は光と翠だ」

「まぁ……やはりそうでしたか」


 なんで予想できているんだろうか。

 真顔でそんなことを考えていると、「つとむ君にかかわりのある人の方が忌避感がありませんから」と解説してくれたので納得する。


「夏祭りって何やるんですか?」

「今年は町全体に屋台があるな、ゲストを呼ぶ日は」

「呼ぶ日は?」

「今年はいつもと違うんだ。いつもは景品を賭けたバトルロワイアルに屋台があるだけなんだが、イメージ回復するために二日に分けてる」

「なるほど……ありがとうございます」

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