1-1 始まり
一先ず一幕の改稿が終わったのでこれから投稿していきます。
ここは都心からちょっと離れているたかあき町、の隣のくれな町。この町には私立スミレ学園という、アイドルや俳優など、テレビ関係の人を輩出している学園があるので有名である。その町で、一人の少年が自転車を爆走させていた。
「ふぅ。このくらいなら何が起こっても余裕があるな。できるなら、このままスムーズに行けたらいいぜ」
腕時計を確認しながら呟く俺。なぜ急いでいるのかって?それはな、これからバイトがあるんだよ。遅れたら、時給の関係上確実に減らされる。それだけは避けなければならない。そう思って必死にペダルをこいでいたのだが、
「いいだろ、これから、なぁ?」
「や、やめてください!!」
「いいじゃなぇか、ねぇちゃん。少しだけだからよ」
「は、放してください!!」
と、前方で不良に絡まれている女子を発見。しかも、完全に道をふさいでいるので、右も左も空いているスペースがない。またか、と思いながら俺は、
「邪魔だ」
どしゃぁぁぁぁぁ!!!!
『ぐはっ!!!』
「きゃっ!!」
不良どもを思いっきり轢いた。その反動で自転車の勢いがなくなったが、まだ時間はある。そう思って、俺は立ち止った。
「テ、テメェなにしやがるんだ!!」
「そうだ!! 何の躊躇いもなしにぶつけるんじゃねぇ!!」
「ああ!? うるせぇな。邪魔だ、って言ってんだろうが!? 文句あんのか!?」
そう言いながら振り向く。すると、
「お、お前はっ!!」
「も、もしかして……こ、『皇帝』様ですか?」
「そうだが……恥ずかしいな、その呼び名。ったく、どこまで広がっているんだ、その名は」
俺を見た不良どもが、恐れおののいていた。全く、そんなのこっちじゃ呼ばれたことなかったのに。ため息をつきながら俺は、
「さっさと帰れ、お前ら。この時間帯だと目立つぞ」
今の時刻は六時二十分。俺は一つ目のバイトを終えて、二つ目のバイトへと移動中にこの現場に遭遇した。正直この時間だとギリギリのような気がするが、まぁ、何とかなるだろ。
でも万が一の場合に備えてさっさと行きたいので、
「おい」
『はッ、はい!!』
「さっさと帰れ。いいな」
『りょ、了解しました!!!』
と、軽く睨んだだけで不良たちは逃げ出していった。よし、このままバイト先に行こうかなんて考えて自転車のペダルをこごうとしたら、
「あ、あの、た、助けてくれて、あ、ありがとうございます!」
と絡まれていた女子がお礼を言った。……こいつの恰好を見る限り、おそらくは夕飯の買い物を終えて、帰ろうとしたら絡まれたんだな。と、どうでもいいことを考えながら俺は、
「あっそ。じゃぁな」
と言って、そのまま走り出した。それが意外だったのか、
「え!? ちょっ、ちょっと待ってください!! せ、せめて名前だけでも!!」
後ろの方で叫んでいた。こっちにもいろいろあるんだ、かまってられるか。と、後ろの方で叫んでいた女子に対して、心の中でそう言った。
「お疲れ様でした――!!」
二つ目のバイトを無事に終えて、今日は残すところ帰るだけとなった。しっかしきついな、このバイト。もうこの生活を始めて十日になるが、未だに筋肉痛がくる。日付としては、四月二十二日火曜日。時刻は午後十時を少しまわったところ。また妹が待っているのか、そう思いながら家に帰った。
「ただいまー」
家へと帰る途中、何事も起こらなく無事に着けた。疲れたから風呂入って寝よ。そう考えて俺は二階に行こうとしたら、
「お帰り、お兄ちゃん。今日もまたバイト? そんなにお金が必要なの?」
と、妹がリビングから顔を出して訊いてきた。
こいつの名前は、八神茜。今年で中三になる俺の妹だ。ただ、こいつは俺の本当の妹じゃない。その理由は、俺が小学生になる前に両親が、『これからこの子がお前の妹だ』と言ってきた。その当時俺は、母さんがまだ生んだのかと思ったが、両親に事情を聴いた後俺は、世の中何でもアリなんだなぁと感心した。その事情というのが、『散歩してたら孤児院があってさ、その中を覗いたら、可愛いこの子が寂しそうに遊んでいたから引き取っちゃった。テヘッ♪』だそうだ。これが本当にできるのか、といつきに訊いたら、
『法律上は問題ないよ』
だそうだ。こうして、俺と茜はめでたく兄妹となったわけだ。ちなみに、こいつの過去の事は、俺は何も訊いちゃいねぇし、あいつも言う気がねぇから、今のままでいいと思っている。余談だが、最近こいつは誰に見せたいのか、よくファッション雑誌を見て、オシャレをしている。その度に俺は、こいつに『どうかな?』と訊かれている。なんで俺にいちいち見せに来るのか疑問に思ったが、現状の問題があまりにもでかいため、そのことについては保留にしている。
「ああ。何かと必要なんだよ」
「例えば?」
「昼代だろ、本代だろ、あとは…」
「ええ!? あの本全部自分のバイト代で買ったの!?」
「昔は親からもらった小遣いからだが――――って、ちょっと待て!? お前いつ俺の部屋に入ったんだ!? 鍵をかけてくはずなんだが!?」
「え? お兄ちゃん、たまに鍵かけ忘れるよね?」
「なんだとっ!?」
しまった。特に見られてヤバイものはないが、これからは時間に余裕を持って行動しよう。
……今まで以上に。そう決心した俺は茜に、
「そろそろ二階に行け。そして寝ろ」
早く寝るように言った。すると、
「お兄ちゃんが『お休み』って、言ってくれないと寝ないもん」
あろうことか条件を出してきた。
畜生! なんでそんなこと言わなきゃいけねぇんだ! そう思いながら仕方なく俺は、言われた通りに言った。
「分かったよ。……お休み、茜」
「お休みなさ~い!」
上機嫌になって二階に行った。あれで寝られるのか甚だ不思議だが、気にしてもいられないので、俺も二階に上がって自分の部屋で風呂に入る準備をした。
準備が終わって下に降りると、
「おかえり、つとむ」
「お前、バイトやっているからって遅くないか?どこでやっているんだ?」
両親が、リビングで酒盛りをしていた。一応、両親の紹介をしておくか。親父の名前は八神すすむ。普通のサラリーマンである。ただし、喧嘩はそこらのヤクザどもを圧倒する。俺も何度か勝負したが、たいていはボコボコにされる。昔より衰えた、と本人は言うが、今でこの強さなら昔はどのぐらいだったのかと思う。そして、お袋の八神玲子。お袋は、何かというと俺に家事をやらせる。自分は専業主婦なのになんで俺にやらせるんだと訊いたら、『いつもやっているから』と笑って言いやがった。なので、俺がいる時は問答無用で家事をやらされる。
まぁ、そのおかげで得意になったんだがな。説明としてはこれくらいだが、俺の両親は体質の事は知っている。ついでにいうと、いつきも知っている。そろそろ俺の体質について話そうか。
俺の体質。それは、何事にも巻き込まれてしまう体質だ。例えば、今日起こった不良に絡まれた女の子と遭遇する。こんなことが、毎日のように俺の身に降りかかる。他には、一番古いのでは、ヤクザ間の抗争に巻き込まれたことが挙げられる。その当時俺は、両親とはぐれてしまったために歩き回っていたんだが、その時に丁度抗争が勃発した場所にいてしまったために巻き込まれてしまったという訳だ。それ以降俺は、何かと事件やトラブルに巻き込まれてしまうことが多くなった。その度に全部解決している俺は、いつきに『よく全部解決できてるね。普通なら一つでも解決できただけでもすごいのに』と言われた。それに関しては俺も同感だが、時々、交通事故に巻き込まれるんじゃないかと思ってしまったりする。
……現実にならないように祈るか。
これで大体の説明は終わったな。じゃぁ、さっきの場面に戻るか。
「別に。大したところじゃねぇよ。っていうか、中学二年の時に小遣い停められたときに、『高校に入ったら、バイトでもして小遣いためろ』と言ってきたのはあんたらじゃねぇか」
「そうだったな」
「そうねぇ~」
と、思いっきり他人事のように流す両親。おい。そのおかげで、中二から中三の頃に何にも買えなかったじゃねぇか。そんな恨みを知らずに、
「さっさと寝たらどうだ。明日も早いんだろ?」
「そうよ。寝たら?」
「言われなくとも寝るが、その前に風呂だ。お休み」
『お休み~』
これで普段の一日は終わり。明日も早いことだし、さっさと寝るか。そして俺は、風呂に入った後に、自分の部屋のベッドに突っ伏して寝た。
ではでは