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アイドルッ!  作者: 末吉
第四幕:第二話~夏休み中旬~
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白鷺家へ

一ヶ月更新忘れたのは……ストックが思いのほか作れなかったからです

 あの後ポスター配りは滞りなく終わり、その日にバイト代を貰えた俺は、魚屋のおっちゃんに朝巻き込まれた交通事故(未遂)の詳細について話を聞いてから家に戻って夕飯の支度をした。


 あの事故に見せかけた殺人未遂は、どうやら組織ものらしい。警察は手掛かりを殆ど掴んでいないらしく、保護された人の身元位しか確認できていないのだとか。

 で、保護された奴の身元が割と大物だったとか。翠といい、犯罪に巻き込まれるリスクでもあるんかね、有名人に。


 まぁ巻き込まれ体質の俺が言えることじゃないが。


 どうしてこんなことになったのかということに関しては、単純に目撃者を消すため。恐らく殺しの現場か取引の現場を見られたんだろう。詳しくは向こうも話さなかったことから察するに、俺を関わらせる必要のないと判断して。


 そんな話だったので、俺はもう切り替えることにして現在。



「ああ面倒だな」

「何ため息ついてるのよ色男。遅刻が許されないならさっさと行ったら?」

「誰が色男だお袋。つぅか起きるの早くね? まだ六時(・・・・)だぞ?」

「そういうあんたこそ。この時間帯に割とマシな格好して玄関で靴ひも結んでるじゃない。昨日言ってた『約束』でしょ? 見送りに来たのよ。わざわざ茜に言わないってことは、そういうこと(・・・・・・)でしょう?」

「……」


 図星だったので黙る。


 現在七月十六日(土曜日)。午前六時。

 俺は美夏と先日電話して約束した、彼女の家へ行くための待ち合わせ場所へ向かうための準備をしていた。


 ……正直なんでこんな早くに行動する必要があるのか想像できないんだが。


 移動に時間がかかるんだったら普段どうやって学校に来ているんだろうかと疑問に思うぐらいに早い。いつきでもこの時間帯から誘いに来たことなんてないぞ。

 集合時間と場所を言われたのも水曜日だったからなぁと思いながら家を出た俺は、待ち合わせ場所として指定されたスミレ学園までいつも通り自転車で向かうことにした。


 なお、朝食は食べていない。そして集合時間は七時である。



 六時五十分。

 何もないことに安堵するなんていう感性は誰もがもって当たり前なんだろうが、俺の場合はのちに来る事件に警戒する。素直に喜べばいいのだが、そんなことを言えない人生を歩んできたからな。

 当たり前の事だが校門は締まっている。駐輪場は学園内にあるので自転車を停める場所は存在しない。


 まぁ自転車を担いで塀を飛び越えれば問題ないんだが、セキュリティの面があるからな。不用意に行動できない。


 分かってたのなら徒歩で来れば良いと思うだろうが、自転車より疲れるからやらない。

 というより、身体能力が逸脱している自覚があるがそれを積極的に披露する気がない。ただでさえ前回のテレビでやらかしたんだ。これ以上噂になると流石にやばい(・・・)


「今回はお早いですね、つとむ君♪」

「……おはようございます、白鷺さん」


 自分の事情を再確認しながら自転車を停めたところ、嬉しそうな声で彼女から挨拶してきたのでとりあえず敬語で話す。


 その結果彼女は顔を膨らませてそっぽを向いた。


 ……他人行儀が駄目なのか? これ。

 思わずそう結論付けたくなる態度にげんなりしていると、「お嬢様。そろそろ出発しませんか?」と運転席から声が掛けられた。

 その女性は多分、前回迎えに来たメイドだろう。名前は知らんけど。

 ただ、運転席で待っていることをみるに時間は一刻をあらそうんじゃないだろうか。


 だったらこんなことで時間とられちゃいけない気がしてきた俺が何か言おうとする前に、向こうが息を吐いてから「それではご案内しますつとむ君。車に乗ってもらえますか?」と促してきた。



 自転車は学校の駐輪場に止めた。美夏が守衛さんに話を通したらしい。

 一個人で学校に影響力があるのは生徒会会長だけなのだろうかと思いながら、美夏の隣に座っている。一体どこの家まで連れていかれるんだろうかと少しばかり不安になる。


「いつも通りでいいですからね、つとむ君」

「……それは流石に額面通りに受け取れませんよ」

「大丈夫ですよ。いつきちゃんの時と同じで」


 いや、そこまで言われたら流石に怖いんだが……。そこまで念を押されたなら無理に敬語にする必要もない、か?

 そこらの考えはどうにも理解できないなぁと思いながらも息を吐いてから「親がいた時にこの口調は流石にまずくないか?」と質問する。


「大丈夫だと思いますよ? あの時の番組を見た時の家族の反応が、なんだか懐かしさを醸していましたから」

「なるほど……」


 まぁ、柊哉さん世代なら懐かしいだろうなぁと思いながら頷きながら呟くと「ご存じだったんですか?」と訊かれたので「いや、予想」と答える。


「親父がいつきの親父に会ったのが高校生の頃だっていうから、その頃からパーティとかに参加してれば分かるんじゃねぇかなって思ってよ」

「つとむ君のお父さんってパーティとかに参加していたんですか?」

「ボディーガード代わりだったんじゃねぇかな、多分」


 なんか子供の頃そんな話してた覚えがあるし、間違いなく過剰戦力なボディーガードだが。

 詳しく聞いてないから訊いたら武勇伝みたいに聞かせてくれるんだろうかと疑問に思っていると、「高速に乗ります」と運転席から聞こえた。


 ……高速? 家って普通、普段住んでいる場所じゃないのか? 高速乗ってまであの学校に通うとなると相当変なことしてるんだが?

 遠距離通勤や通学に対して本人がいいなら何も言うことはないが、案内される側としてはふざけるなじゃないだろうか。友達なくすぞ、多分。


 そういや腹減ったなぁと思いながら「俺は今回どこの家に連れていかれるんだ?」と今更質問したところ、「内緒です♪」と笑顔で返してきた。


 ……俺、無事に帰れるんだろうか。




 学校から車に乗って高速込みで三時間。夕方に帰ることを考えると三時ごろに帰らないとダメなんだがそこらは考えられているんだろうか。


「到着しました」

「ありがとうございます、レシカさん」

「……」


 お礼を言えばいいのか悩んだので沈黙していると、ドアが開いたので降りる。


「広いな……」


 門に入ってからも車がしばらく走っていたし、窓ガラス越しに見える景色も奥行きが凄く感じられたので、相当に広い。いつきの家よりも広いし、ひょっとするとスミレ学園並みの広さを誇っているんじゃないだろうか。

 移動だけで相当時間かかるんじゃないかこれなんて思いながら玄関に背を向けてみる。


 見渡してみたらほぼほぼ庭だった。建物はいくつか見えるが、大部分を占めるのが舗装された道路以外を彩る植物たち。

 俺はいつから敷地内に入っていたんだと思っていると、半袖の裾を引っ張られたのでそっちに視線を戻す。


 美夏が真剣な表情をしていた。


「あまりじろじろ見ない方が良いですよ。ここ、私の実家(・・・・)ですので」

「そうか……ちょっと待て」


 サラッと言われた事実に俺は訊き間違いかと思い確認する。


「美夏の実家なのか、此処」

「はいそうです」


 いきなり実家か~……流石にお嬢様の考えることは分からん。

 とりあえず確認する。


「なんで実家?」

「実は……今日という日以外に家にいる日がなかったので……」


 しどろもどろで説明して来る彼女の言に嘘っぽさを感じながら、玄関先に人の気配を感じたので自然と警戒態勢に入る。

 美夏は俺のその姿で何かを察したらしく、今までの雰囲気ががらりと変わった。


 三人、だな。扉越しにいるの。なんか一人隠れているみたいだが。

 何するつもりなんだかと思っていると、此処まで連れて来てくれたメイドさんが「そろそろ扉を開けてもよろしいでしょうか?」と空気を読んで訊いてきたので「よろしくお願いします」と美夏が頷き扉が開いた。

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