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アイドルッ!  作者: 末吉
第四幕:第一話~夏休み上旬~
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ポスター配り(りぐる市・くれな町編)

一ヶ月更新サボりました申し訳ございません(割と常習犯)。

 図書館でのポスター配りも一悶着(身バレ等)あったが、精神的にはそれほど疲弊せずに終えた。

 で、りぐる市へ向かっている。


 りぐる市のポスターを配る場所は、ほぼほぼスタジアムや体育館。一か所だけ駅になる。


 ならくれな町も駅に配って当然のはずなんだがそこらへんは町長に考えがあるんだろう。俺は理解しないことにしたが。


 のんびり漕いでいる場合じゃないので通常より速いスピードを出しているのが速度違反になっているのかどうかは置いといて、橘巳町でポスターを配った時の印象を思い返す。


 基本的に大人の対応をしてもらったのでどんな印象を持たれているのかなんてわからないが、意外そうな雰囲気があった。浸透しているイメージとは違ったことによる戸惑いがそうさせているんだろうが。


 今回はその改善の為に動いているんだよなと思いながら、ふとりぐる市で起きた爆弾事件を思い出す。

 あの時の被害は確か、スタジアムの中にクレーターが出来てセットがぶっ壊れたぐらいだったんだったか。俺という人的被害を考えないものとすると。翠と光は無傷だったみたいだし(心的外傷は除く)。


 果たして工事は終わったのだろうかと内心で首を傾げていると、りぐる市内に入っていた。

 懐かしい……といえるほど昔ではないが、記憶の片隅に行くほど後が濃かったからもう忘れかけているんだよなぁ。



 まぁ今回その場所行かないけど。





 橘巳町とは打って変わってりぐる市のポスター配りは順調だった。滅茶苦茶腹が減ったし、時間も二時前だったので飯を挟むことに。


「定食屋定食屋……ああヤバイ。普段食べない量食べたくなってきた」


 基本的に食費は抑え目傾向にある俺。自分の財布にダイレクトに響くのだから抑えること自体が普通の選択だし。

 別に食べなくても生活できるが、流石に空腹という本能を我慢という理性で押さえつけるほど修行僧していない。


 何処かに良い店ないかなぁと速度を落として辺りを見渡していると、不意に『大盛無料!』という幟が視界に入ったのでブレーキをかける。


「大盛……か」


 俺の生活は基本自制だ。食事とか、お金とか。だから食事量というのは普通の人と変わらないはず。

 だが大盛りが食えないかと問われると、多分否と答えるだろう。そもそも外食しねぇけど。


 食事に関しても色々とやったなぁと足を止めて感慨に耽っていたが、時間がないのを思い出したのですぐさま自転車を店の前に止めて(駐輪場が近くにないので)店に入った。


「何名さま?」

「一人だ」

「適当に空いてる席に座って!!」


 てきぱきと言われた言葉に従いながら、カウンターの空いてる席に座る。

 まぁ二時近くだからか、席はまばらだ。むしろまだ客がいるのが珍しいんじゃないだろうか。

 水が来る前にメニューを見てみようかなと置いてあるメニュー表をパラパラ捲る。


 何がいいかな……麺類は早めに出るからいいが正直腹にたまる気がしない。かといってご飯類は時間がかかるしなぁ。


 う~んと悩んでいると、「はい水」と水が入ったコップが置かれた。

 さっさと頼むかと割り切った俺は「すいません」と戻ろうとする店員を呼び止める。


「ご注文ですか?」

「はい。カレーライス『大盛』で」

「……『大盛』で良いんですか?」

「? 無料なんですよね?」

「……ええ、まぁ。食べ切れれば」


 なぜか歯切れが悪い。量が多いのかひょっとして。

 なら今の俺にとっては渡りに船だな。あまりにも腹が減っているから。


「わかりました。それで大丈夫です」

「……分かりました。カレーライス『大盛』一つ!」

「「大盛入りましたぁ!!」」


 ? なんで店員のテンションが急に上がったんだ? さっきまで店仕舞いする雰囲気だったというのに。

 何故彼らが張り切ったのだろうかと首を傾げていると、残っていた客の視線を浴びている。

 この視線の集まり方は……好奇心だろうか。彼らはまるで無謀な挑戦者の顔を見ようという感情で視線を向けている気がする。


 ……そこまでやばいのか、ここ。


 ハァと息を吐いてから、気を紛らわすために話題に上がっていた件について思い出す。


 内容というのは俺のバイト先に出店を出さないかという話を持ち掛けたものなんだが。


『なぁマスター。近々うちの町で夏祭りやるんだが、出店出さないか?』

『あ? お前手伝うのかよ?』

『無理』

『なら無理だ』


 これ以上ない簡潔なやり取り。深掘りすると、俺という広告塔兼働き手がいないのに、人が集まる夏祭りで捌き切れないからという。自分で言ってるということは想像したのだろうか。

 まぁそんなわけでマスターは出店をしない。今更だが、俺がこれ以上忙しくなった場合、大丈夫なんだろうかあの店。


 そんな毎度のことを考えていたら「お待たせしました」という声と共に重量感を感じる音が俺の目の前で聞こえたので、視線を向ける。

 思わず俺は呻いた。


「……なんだよ、これ」

「『大盛』です」


 これはもはやパーティ用の料理じゃねぇかなぁ……っていう盛をしているカレーを改めてみる。

 まずご飯が皿の七割を支配している。しかも山盛り。何をどうしたらここまでご飯を盛ろうと思ったんだ? しかも皿が微妙な深皿だし。

 カレールーなんて火山の噴火を表しているかの如くご飯の上にかけられている。深皿の方にも並々に溜まっているのが正直怖い。福神漬けないし。この量をこれだけで食べろと。


 野草のみの生活よりは贅沢だなと思いながら「制限時間ありますか?」と質問する。


「特にありませんけど、目安としては一時間ほどとしています」

「分かりました。あと、福神漬けってありますか?」

「置いときますね」


 言われるまで出さなかったのかという疑いはあるが、まぁ瓶ごと置いたところを見るに味変のためなんだろう。頼んでなんだが、使わないかもしれない。


 これで味が普通だったら後悔しそうだなぁと思いながら、「いただきます」と両手を合わせて食べ始めた。



「あ、ありがとうございましたー……」

「食べれるもんだな、まだ。食い過ぎているのは明らかだが」


 四十分かけてカレーは完食した。ご飯の中に唐揚げ入ってた時は流石にふざけるなと思ったが、普通に食べていたら飽きるであろうそれに別な刺激を与えてくれたので不問にする。

 正直言って今自転車をこぐ行為が地獄に向かうことだというのは自覚している。だが、此処のポスター配りが終わってもくれな町に向かう以上自転車をこがなくてはいけない。


 つぅか店員や客が唖然としていたからな当たり前だが。完食記念に写真撮る羽目になったし。

 まぁ食費が浮いたからそこらは儲けものと考えればいいかと腹ごなしに自転車を押しながら歩き始めた。



 五分歩けば腹も少しは空いてきたのでそのまま自転車に乗って次の場所へ。この時点で二時過ぎたので間に合いそうだなという淡い期待を持った。



 その後も順調に終わり、りぐる市を後にする。



 午後三時前。

 くれな町に到着して真っ先に学園を終わらせた俺は、そのままの流れで駅の方に向かう。バイト先は最後にすることに。


 今まで行ったことがない(と思うが)気がするんだが、どうなんだろうか。

 『桜田商店』へと向かいながら記憶がないことに対して疑わしくなる。が、行ったことがないのは確かなんだろうなと直感が告げる。


 でもなぁと思いながら自転車を走らせていると、駅に到着したので足を止めてバックから渡された資料を取り出して場所を確認しながら移動する。


「ここか……」


 地図を確認しながら歩いて数分。

 看板に書いてある文字と手に持っているポスターを渡す場所の一覧に書いてある文字を見比べて合っていそうだったので、自転車を店の前の邪魔にならないところに止めてドアを開けた。


 見た目普通の一軒家なのだが、扉を開けた途端に空気が変わったのが肌で感じる。

 いつも身を置いているからか判る、普通とは違う空気。

 こんな雰囲気で商売成立してるのかねと思いながら店に一歩踏み入れ――すぐさま足を引っ込めてドアを閉める。


 その結果ガシャン! という音が聞こえた。


「……」


 明らかにトラップが作動した音が響くが、通行人は足を止めたらすぐさま行動を再開する。

 その光景を見渡して日常と化しているんだろうかと邪推していると扉が開いて人が顔を出した。


「見ない顔だが……雰囲気が『あの町』寄りだな。一体何のようだ?」


 厳つい顔立ちをしているが声は若め。無精髭を生やしているところを見るとそれなりに歳を重ねているのだろう。

 相手の第一声を聞きながら観察した結果を脳内に浮かべ「ポスターを配りに来たんだ。電話来てないか? うちの役所から」と確認を促す。


「ああ来てるよ。あの町長から昨日な……ったく、いきなり電話してきて『夏祭りのポスター貼ってくれ』ってな」

「それがこのポスターなんだが……」


 そう言いながらポスターを渡すと、俺の歯切れの悪さが気になったのか「なんだ? 訊きたいことでもあるのか?」と向こうから言ってきたので意を決して確認してみる。


「俺は八神つとむっていうんだが……この店に来たことあるか?」

八神(・・)だぁ? 知らねぇな」

「そうか。変な質問して悪かった」


 つぅことはこの人は俺が生まれる前にはすでにここにいたってことか……なんでだろうか?


 基本的に町にいる奴らは引っ越すということを考えてる気がしない。というのが俺の所感だ。

 なんというか、自分達の能力を被害を考えずに揮えることが大事なんだろう。話聞いたことないから分からんが。


「まぁ貰った以上ポスターは貼っておくが……焼け石に水じゃないか?」

「百も承知だろうよそんなことは」



 あー漸く終われる。(残り一軒)

まだ全然進んでないのは流石にやばいと自覚してはいます

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