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アイドルッ!  作者: 末吉
第四幕:第一話~夏休み上旬~
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密会と報告

やはり更新は一定の日にちが良いんですかね?

 バイトが無事に終わった。三時ごろから女子高生やら女子大学生やらが最近は入ってきてるのでケーキの消費量が尋常じゃなく、一から作るのがしばらく嫌になりそうだ。こんなのがしばらく続くのだろうと考えるだけで頭が痛い。常連客は苦笑いを浮かべていたっけな。


 というか、俺が配膳するたびにその客たちの「やっぱり間近で見ると野性的でかっこいいよねー」「こんなおいしい料理作れるなんて羨ましい」等々が聞こえてくるんだが。「ここまで来たかいがあった」なんてのも。

 行列ができてなかったのが幸いで、今後どうなっていくのか予想ができない。


 ……今やめたらひょっとして店潰れるか?


 そんなことを想像しながら自転車をこいで到着した場所は、矢木組の前。

 時刻は八時半ぐらいだったので、入る前に最終確認でもしようと思い光に電話をかけた。


「…………寝たのか?」


 留守電になったのですぐさま切った俺はあり得そうな可能性を呟いてからインターホンを鳴らす。先月の終わりに来たばかりで懐かしさの欠片もないが、よく考えたら最近ここに来ることで何かが起こってるな。


『んな夜分に何用だ?』

「進捗確認だよ」

『っ、すいませんでした!!』


 その声と同時に開く門。俺は自転車を押しながら勝手に入ることにした。


 入ってから自転車を預け、家の中に入ろうとしたら電話が鳴ったので断って屋根の上で電話に出る。


「もしもし」

『あ、すいませんつとむさん! 先ほどお電話をいただいたのに!!』

「気にするな」

『ちょうどお風呂に入っていたところで……えっと、それで、なんでしょうか?』


 自分で提案したの忘れてるのかとため息をついてから、「勉強を見てやるといったが、スケジュールはそっちに任せただろ。考えたのか?」と訊ねる。

 向こうは狼狽えた。


『うっ! え、えっとですね、9時に駅で集合ですよね……』

「はぁ……まさか俺に1日勉強見てほしいんじゃないだろうな」

『え、あ、だ、ダメですか……?』

「俺も暇じゃないんだよ。せいぜい午後2時ぐらいまでだ。来週の平日いっぱいでいいんだよな?」

『は、はいそれぐらいで……』


 なんで結局俺がまとめてるんだろうと思いながら「聞きたかったのはそれだけだ。来るまでに少しでも頑張れよ勉強」とエールを送ってから電話を切って屋根から降り、屋敷の中に入った。



「来たぜ」

「よぉつとむ。早速だが話を始めようじゃねぇか」


 頭の部屋に案内された俺は胡坐をかいて話しかけ、頭は資料をこっちに投げてから話し始めた。


「まずわかってると思うが、俺達四大は繋がりも見せないような裏方でしか手伝えねぇ。だからお前も俺達の影を見せるんじゃねぇぞ」

「わぁってるよ。これ、役所の発案なんだろ?」

「そうだ。周りの連中もこの町を必要以上に怖がってるからってことでイメージアップを図ろうと企画したんだとよ。でも二日目には結局いつも通りなんだから意味なさそうなんだけどな」

「言ってやんなよ頭。少なくとも初日と二日目で対応がちがけりゃ誰彼構わず暴力を振るわないって分かってもらえるって考えじゃねぇの?」


 そういうことか。なんて頭が納得したので俺は資料を捲りながら考える。


 企画自体はいつも通り町全体でのお祭りだ。ただし、いつもなら一日ですべて完結しているところを今年は二日に分けるというものだった。

 初日で町外から人呼んで屋台を出し、二日目をいつも通りにするというもの。頭からすれば意味がないと思ったのだろうが、町外の人に普通に接することが出来るという印象を持たせる狙いで少しでもイメージ回復をしたいという思いが伝わってくる。


 屋台の場所、および出店者はほぼ決まっている。毎年同じ奴らなので、枠が埋まるのが速い。

 場所代とかは徴収しない。町側で徴収しない代わりに売り上げは自分たちの収支に加えて税金をその分国へ払えという遠回しの命令だ。


 俺は出店内容を確認しながら「これ、俺達と普通の人で分けないと駄目じゃね?」と呟く。


「ん? それは早い段階で上がってた問題点だな。最後の方に改善点まとめてあるからそっち見てくれや」

「了解」


 何度も言うが、この町に住む大体の奴らは身体能力が高い。世界チャンピオンだって真っ青になるやつらがごろごろいる。男女関係なくな。

 なので俺達の町の学校は部活の参加は自由だった。大会なんて参加しない、ただの運動というくくりだったし。

 まぁそんな訳で俺達基準で屋台出そうものならクレームしか生まないのが容易に想像できる。


 さて他には……。


「……外部勢力大丈夫か? これがチャンスだと言わんばかりに抗争しかけてきそうなんだが」

「はっ。俺達に歯向かえる奴らなんていねぇよ。向こうは内部分裂とかで忙しいだろうし」

「……」

「お、そうだ。役場の連中がゲスト二人について急かしてたぜ」

「そんなこと言われてもな。こんなの直接聞いた方が速いだろ向こうが」

「お前な。自分で言っただろ『俺達の町のイメージが最悪』だって。事務所直で行ってみろ。門前払い確定だろ」

「確認しても同じじゃね?」

「バカだな。本人がやる気なら、こっちで絶対に大丈夫ですと言える条件さえ付ければ向こうも即ノーなんて言えないはずだ。へそ曲げられて他の出演キャンセルなんてやられたら、向こうもたまったもんじゃねぇだろ」

「そういうもんかね」


 いまいち納得のいかない理論だったが、言わんとしてることは理解できたので考えることをやめる。そして不意に時間を確認したところ、九時を少し回っていた。


「ちょっと電話する」

「おう」


 その場で俺は美夏に電話をかける。約束通りに。

 向こうもワンコールで出た。


『はいもしもしつとむ君ですね? お待ちしておりました』

「悪いな。今、大丈夫か?」

『はい』


 電話越しからも人の雑音とかが聞こえてないので安心した俺は、「今月の23と24。空いてるか?」と質問する。


『23と24、ですね。少々お待ちください』


 そう言うと電話越しで音楽が流れだす。それを聞きながらスケジュール帳とペンを取り出す。

 暇なので頭にちょっと話をする。


「なぁ頭」

「ん?」

「これ、断られたらどうするんだ?」

「さぁな。そしたらだれか探すんだろ。俺は知らねぇ」

「そうだな」

『お待たせしました』


 向こうからそんな声が聞こえたので「ああ悪い悪い」と悪びれてから結果を促す。


「大丈夫か?」

『申し訳ございません。出来ればお誘いに乗りたかったのですが、その日は既に日本におりません』

「あーそうか」

『はい』


 ……まぁ、そういうこともあるよな。

 申し訳なさそうにしてるのが目に浮かんだので「そこまで深刻にならなくていいぞ。ただの確認だったし」と言っておく。

 すると今度は向こうから『あの、申し訳ございませんが、私をどんなことにお誘いする予定だったのかお聞きしてもよろしいですか?』と言われたので思わず頭とアイコンタクトする。


(言っていいのか?)

(お前次第じゃねぇの?)


 …………。

 俺は必死に今計画内容について整理し、どこまで教えたらいいのかを考える。

 まずすべて教えるのは除外。関わらない人にそこまでの情報は不要だろうし。

 そう考えると向こうが欲しい情報考えた方が良いのか。多分、聞かれた通りの内容だけでいいんだろうがそれでも程度があるからな……。


 俺がそんなことで頭を悩ましていると返事がないことに不安がったのか、向こうから『あの、聞いたらまずいことだったんですか?』と言われたので割り切った俺は説明することにした。


「いや別にそんなことはないが。強いて言うなら一週間前まで他言無用でいてほしいというだけだ」

『分かりました』

「誘いたかったのは俺達の町で行うイベントのゲストだ。だからまぁ、ゲストの知り合いということで確認だけとってたんだ」

『え!? そ、そんな大事な予定だったんですか!?』

「……ん?」


 なんだ? なんで露骨に焦っているんだ? そこまで焦るようなものか?

 意味が分からない焦り方をしてるので「おい大丈夫か?」と心配したところ『うっ、うぅ……そんな……』と普段からは想像がつかないほど弱弱しい声が聞こえた。

 …………? さっきからどうしたんだ? 俺達の町で行うイベント(夏祭り)のゲスト(光含む)として呼ぼうとしただけでそこまでショックを受けるなんて。


 少し考えて予想できた答えをとりあえず口にする。


「なぁ、つかぬこと訊くが、一緒にいられると考えたのか?」

『……』


 いやまぁそうなることは確定事項なんだろうが。資料其処迄見てないから断言できないが、去年までの状況から予測すると可能性は高い気がする。

 おそらく図星なのだろうかと思い黙っていると、『申し訳ございません。はしたない姿をお見せしました』と言われたので「気にせんでいいが」と言ってから「ま、そういう訳だ。せめて一週間前ぐらいまでは他言無用ということで」で電話を切ろうとしたところ、『あ』と何かを思い出したかのような声が聞こえたのでまだ何かあったか? と訝しんでいると『そういえばつとむ君、私の約束を憶えていますか? 本宮さんに邪魔された、あれです』なんて言われた。


 すぐに思い至ったので「家に招待するって話だったよな」と確認する……そういやなんでいつきの奴拒絶反応を示してたんだろ。

 ただ家に行くだけだというのになとぼんやりしていると『はい。それを16にしてもよろしいですか? バイトの稼ぎ時なのかもしれませんが……』と遠慮気味に提案された。

 こちらとしても痛手であることに変わりないが、光の勉強会で予定が狂っているので「別にいいぞ」と了承する。


『本当ですか!?』

「ああ」

『……はい。分かりました。それでは16日にお会いしましょうねつとむ君。それと、イベントのお話は本当に申し訳ございません』

「気にすんなよ。そもそも話するのが遅かったってだけだ。それじゃな」

『はい。お休みなさい』


 電話を切った俺は手帳に予定と結果を書いてから閉じ、頭に「一人はまぁ来てくれそうだ」と報告する。


「じゃぁしょうがねぇ。他に人探してもらうしかないだろ。ちゃんと役所の奴に電話しとけよ」

「二人じゃないとまずいのか?」

「二人いた方が良いんじゃねぇの? 発信源一人じゃ信憑性に欠けるとか」

「そんなものかね……はぁかったるい」

「苦労して成長しろ、若人」


 それから資料を読みながら頭にいくつか質問し、すべてが終わって家に着いたら午後十一時近かった。

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