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アイドルッ!  作者: 末吉
第一幕・第三話 喧嘩騒動と生徒会
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3-5 生徒会

更新日にアクセス数がすごいことになってました。すでに一万を超えていましたが。

 また時はさかのぼり、三十人を全滅させた後。戦っている途中で木刀を使い出した俺にとって、残っていた十数人は取るに足らない相手だった。襲ってくる相手を木刀一振りしただけで、その相手は気絶。それを繰り返す単調な作業になってきたために、俺は欠伸をしだした。

「ふぁ~あ。ん? 終わったのか。やっぱり弱かったな。そうそう、怪我はおそらく大したもんじゃねぇから」

 と言ってこの木刀をどうするかと考えていたが、ふと、これを使って退学できるんじゃないのかと思いついた。そして、

「よし。これやれば確実に退学になるだろうな。というわけで、オウリャッ!!!!」

  ビュン!! パリ―――――――――ン!!!!!!!!

『だ、大丈夫ですかっ!? 学園長!!』

「よしっ! 大成功!! さてと、これからどうするか…ん? 誰だ?」

 木刀は投げ終え、これからどうしようかと考え始めようとしたら、誰かがこっちに向かってきた。そいつ―――恐らくと言うか、間違いなく女子だろう――が俺の前まで走ってきてこう言った。

「生徒会だ! 大人しくしろ!!」

「いや。もう終わったし。この状況を見ればわかるだろ?」

「くっ! 一足遅かったか!!」

 それ以前に、来ること自体遅かったような気がするんだが。そう思ったが、ふとこいつが初めに言った一言が気になった。

「お前、生徒会って言わなかったか?」

「ああ。確かに言ったぞ! 私は生徒会書記で二年の岡部未来だ!」

「そうか。なら、こいつらをどうにかしてくれ。どうせ、軽い怪我だから心配はいらないが」

「それもやらないといけないが、今はお前を倒す!!」

「ハァ!? いきなり何言ってんだ? お前?」

「なぜなら、私は騒動の鎮圧を任されているからだ!!」

 ここでそいつは偉そうにした。

 ……。

「あっそ。言っておくが原因は俺じゃなく、そこにのびているそいつだ」

「何!?」

「ただ、今は起きないんじゃないか?」

「それだったら、誰のせいでこうなったのか分からないじゃないか!!」

 俺に言われてもな。そいつに対してだけは、私怨を込めて他の奴より強く殴ったからな。一時間すれば起きるんじゃないか? そう計算していたら、

「原因がどうであれ、お前はこいつらをやったことには違いないだろ?」

 と、口調が多少冷静になった。何かスイッチが入ったのか? 今ので?

「最初に襲ってきたのはそいつらだが。俺は全部、正当防衛だぞ?」

「それでも、他に方法があったはずだ」

「方法、ねぇ。話し合いは無理だろ? なんせ、あいつらが襲ってきたんだから」

「もっと穏便におさめる方法があったのではないのか?」

「知らん」

 その一言に、そいつは黙った。その時に、俺はそいつの雰囲気が変わったことに気付き、戦闘態勢を取った。

「おっかねぇじゃねぇか。なんだ? やる気か?」

「なるほど。貴様はデキるみたいだな。なら本気で行かせてもらおう!!」

 そう言ってそいつは、俺との距離を一気に縮めた。へぇ、なかなかやるじゃないか。と思いながら、そいつが次々に繰り出す攻撃を、かなり余裕を持ちながら避けていった。

 ……このぐらいなら当たる気はしないな、まだ。俺の親父、もしくはいつきのSPの攻撃だったら紙一重か、かすりそうだ。

 そういや、最近親父と手合わせしてないな。今度やってくれるかな? そう思いながら避けていると、だんだん疲れてきたのか、

「な、何故一発も当らないんだ…そ、それに、どうしてお前は攻撃しないんだ!!」

 と質問してきた。え? それ言わないと駄目なのか? そう思いながら言おうとしたら、校舎の方から人がくるのが見えた。俺が何も言わないのがチャンスと見たんだろうが、俺の表情が気になったのか、そいつは後ろを振り返った。そして、

「か、会長!? な、何故来たのですか!? 私はてっきり待っているのだとばかり」

 と言った。会長? もしかしなくてもそれって、生徒会の会長だよな? それは誰の事だろう? と思って、こちらに来る生徒を見てみた。そしたら、見覚えのある奴だった。

「あら? それは当然の事じゃありませんか? 私も生徒会の一人なんですから」

「お、お前、あの時の……!!」

「覚えてくれていましたか。私としては嬉しいことです」

「まさか、あんたが会長か? 白鷺さん」

「名前まで憶えてくれましたか。八神君は記憶力がいいみたいですね」

 くそっ! そういうことかよ。うちの学園の制服着た、見慣れない奴だと思ったら生徒会の会長か。…しかし、あいつも俺については知らなかったみたいだな。

「まさか、あなたがこの学園にいるとは思いませんでしたよ」

「俺は何年生かと考えていたぜ。制服を着ていたからな」

「でも、この制服結構好きですよ? 私は」

「会長!! この男とは知り合いなのですか!!?」

 会話していたら、岡部が割り込んできた。なぜだろう、俺としては助かったような気がする。

 岡部の質問に対して、

「まぁ、知り合いといえば、知り合いですよね?」

「俺に振るな」

 白鷺は俺に振ってきた。というかよ、

「会長~、そんなのんきに話していないで、さっさと仕事しましょうよ~」

「そうですよ、会長。話すことはいつでもできますから、その前に仕事をしましょう」

 この二人の話くらい聴いたらどうだ? と、俺は思ったが、

「そういえば、あなたがつくったチーズケーキ、とてもおいしかったですよ。作り方を教えてくれませんか?」

 話は脱線していく一方だった。

 とてもじゃないが、話を修正できる気がしない。そう思った俺は、

「会長!! 逃げちゃいましたよ!!」

「というより、教室に戻ってるような気がしますね~」

「会長。あなたが話かけている少年はあっちに行ってしまいましたが」

「あら?」

 無視して自分の教室に向かった。あんな奴ら相手にするだけ無駄だな。そう思いながら、自分の席に置いてあった荷物を、手早くまとめていった。その時、

「あれ? 帰るの?」

 いつきが笑顔で訊いてきた。長年の付き合いだから分かるが、こいつがこんな顔をする時は、大抵、俺に何か良くないものが降りかかる。思えば、SPとの喧嘩だって、一週間以内に山からの脱出だってこんな笑顔だった。今回は何が起きるのかとビクビクしながら、

「帰らねぇよ。ちと、学園長室に行くだけだ」

 正直に言った。するといつきが、

「退学する気だよね?」

 声のトーンを普段より低くして言った。そういや、こいつにはよく喋っていたな。退学したい―、とか。まぁ、それに関しては、

「する気ではあるが、こればっかりは学園側の判断だからな。何であろうが素直に受けるさ。もっとも、退学だったら俺としては儲けもんだな」

 と言った。そうなんだよな~。こればっかりは学園側の判断じゃないと無理なんだよな~。とか思いながら、俺は荷物をまとめ終え、学園長室に向かった。(ちなみに、生徒会のメンバーは、俺の事より白鷺に手を焼いていた)

「邪魔するぜ」

 と言いながら俺は、自分で割った窓ガラスのところから学園長室に入っていった。

「おい、君!! なんだその態度は!!」

 俺が窓から入ってきたのには、ツッコまないのか?

「わぁったよ。ところで、爺さんは? まさかさっきので逝っちまったんじゃねぇだろうな?」

 とりあえず俺はジジイの生死を訊いた。直撃しないよう調整したつもりだが。

 ……窓ガラスの破片がない。もう掃除したのかよ。と掃除の速さに驚いていると、

「お主、自分で外しておいてよく言えるのぅ」

 学え……爺さんの声が、ソファから聞こえた。

「まぁ、そうだがよ。んで? ここまで騒ぎを大きくしたんだ、当然、その分の処罰が下るんだろうな?」

 っていうか、あまりにも軽かったら暴動が起きるぞ。

「ふむ。それなんじゃが、まだ迷っておってのぅ」

「早くしたらどうだ?」

「あ。言うのを忘れていたが、主が三十人倒した後は録画されておるからの」

「そうか。別に暴れてないからいいんだが」

 実際は生徒会の奴が暴れていただけだ。

「学園長。この者の処分をどうするおつもりで?」

 と秘書っぽい人が催促してきた。俺としても早くして欲しいんだが。と、そんなことをやっていると、

  コンコン!!

 ドアをノックする音がして、

「失礼しますよ」「失礼します」「失礼しま~す。」「失礼する」

 生徒会のメンバーが学園長室に入ってきた。

「ふ~む……おや? 白鷺君ではないか。今日は何用じゃ?」

「今日はですね、そこの八神君に用があるんですよ」

 入って早々、爺さんと白鷺が会話していた。…白鷺を俺の方を指しながら。

 まぁ、あながち間違っちゃいないな。

「彼かね? 残念じゃが、この騒動の処遇を考えている最中じゃから、その用というのは意味がなくなるぞ?」

「そうなんですか? ですが、この騒動を仕掛けたのは彼じゃありませんよ?」

「そうなのか?」

 白鷺の奴、余計なこと言ったな。確かに、仕掛けたのは俺ではない。ただ、騒ぎを大きくしたのは俺だ。それを判らせないために、俺は全員を気絶、もしくは失神させたんだが……なぜばれた? と疑問に思っていると、

「クラスの人に訊いたんですよ。丁度、知り合いもいましたから」

 と答えをばらした。それにしても、知り合いだと? うちのクラスにこいつの知り合いなんていたのか? と思っていると、気付いた。生徒会四人の後ろに、よく見ると二人ほど人がいることを。白鷺が、そいつらに「入っていいですよ?」と言うと、その二人は入ってきた。

 まさかその知り合いって……

「いつき!? お前かよ!!? …それと、なぜ長谷川がいるんだ?」

「私に対しては冷たくありませんか!!? …私がそもそもの原因なんですから」

「いやぁ~、まさかここに白鷺さんがいるとは思っていなくてね。しかも三年の『アイドル』で、生徒会長だったなんて。全く、まさか三年までは関わらないだろう、と思っていたから調べなかったのがあだになるなんてね」

 そう、まさかのいつきであった。ちなみに、長谷川も来ていたが、今の俺にとってどうでもよかった。この状況をみて俺は、白鷺の『知り合い』の意味を悟った。 つまり、

「白鷺さんも金持ちだってわけか」

「本宮君と一緒にいるからでしょね、私の素性を知っても驚かないのは」

「そういう事にしとくか。…それで、こいつらから何を聴いたんだ?」

「この騒動のはじまりについて、ですね」

「ほぅ。処遇については悩んでおったから、その話を聴いて考えるとするか」

「なら、お話ししますね?」

 そういうと白鷺はこの騒動の始まりから順に説明していった。いつきと長谷川から訊いた話だろうから、それらの情報は全て否定できなかった。

「――――というわけです。つまり、八神君は仕方なくこの騒動を片付けるために、こういう行動に出たんですよ」

 白鷺はそう締めた。その言葉で生徒会全員は納得し、学園長たちも納得したみたいだ。ただし、

「それは分かったが、学園長室の窓ガラスを割ったという行為の説明はできないぞ?」

 秘書っぽい人が言った。そう。俺は、それとは関係なく窓ガラスを割っている。しかも、学園長室の。元々はさらに退学処分の決断を強めるためにやったものだが、今じゃ処分を受けるための保険となっていた。

 ま、処分さえ受ければ俺に関わる奴はいなくなるからいいか。

 しかし、それは甘かった。

「それは本宮君が言っていましたけど。学園長。あなた、彼にドラマの出演について言っていたそうですね?」

 この白鷺の声は、本当にこいつの声なのかと疑いたくなるほどの、平坦で、冷たい声だった。

「……」

「それなら、彼がこのような行動に至っても、おかしくはないでしょう?」

 これは完全に屁理屈だ。しかも、これにはぽっかりと空いた『穴』がある。そう思ったが、ひょっとすると俺がドラマ嫌いなことを知っているからわざと空けたのかと思い直した。

 すると学園長が、

「彼が、ドラマが嫌いだってことを知っているのかね?」

 と白鷺に訊いた。いつき、俺、長谷川、白鷺は驚かなかったが、他の生徒会の奴らは驚いた。

「ついさっき知りましたけどね。……嫌がっているのに薦めようとしたから、それに対する報復行為じゃないでしょうか?」

「ふむ。そうともとれるのぅ。となると、儂にも責任があることになるわい。さて、どうしたものか……」

 と、爺さんが自分にも非があることをあっさり認め、これからどうするか考え始めた。このやりとりを聴いて疑問に感じたことを、俺は白鷺に訊いてみた。

「しっかし、なんでここまでするんだ?」

「あら。可愛い後輩の頼み事ですから、これぐらいやりますよ。それに、まだレシピを訊いていませんからね」

「結局それなのか……」とうなだれていると、

「ねぇ、つとむ。なんで白鷺さんと知り合いなの? 僕と一緒にいる時は会ったことないよね?」といつきが訊いてきた。

「ああ。昨日、店に来たんだよ。誰かは知らんが、他の奴も一緒だったよな?」

「平塚さんですか? あの人は雑誌の記者で、昨日取材を受けていたんですよ」

「へぇ~~、つとむってよく、こういう人たちと遭遇するよね~~」

「? どうした、いつき? なんで怒ったような声なんだ?」

「べっ、つに~?」

 ? どうしたんだ? いつきの奴。みると、長谷川もいつきと同じ状態だった。どうしたんだ? 二人とも? と首をかしげていたところで、

「そういえば、お聞きしたいことがあったのですけど、よろしいでしょうか?」

 と白鷺が訊いてきた。俺にだよな?

「訊きたいことって?」

「昨日と一昨日の騒動を収めたのって、あなたですか?」

「ああ。確かにそうだが、収めたわけじゃないぞ?」

「収めたじゃないですか。報告があった時には、もう収まっていたんですから」

 そういうもんなんだろうか? と若干不思議に思ったが、

「決まったぞい」

 その爺さんの声で、それを考えるのをやめた。


どうぞこれからもよろしくお願いします。

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