3-3 乱闘騒ぎ その1
一万PVを超えました。早いものです
午後の一コマ目が終わって、次の授業の準備をしていたら、俺が座っている席の周りに見覚えがあるやつらが来ていた。
「どうした? 何か用か?」
と普通に訊いたのだが、その時のそいつらの雰囲気が少し違い、違和感を持った。
「お前ら、話し合いに来たわけじゃなさそうだな」
「当たり前だ!! 貴様はもう許さん!! 覚悟しろ!!」
そんなやりとりを聴いた他の奴らが、「また、あいつか」「今度は何をやらかしたんだ?」と話していた。こいつらは無視するか。
「んで? なんで俺が覚悟しなきゃいけないんだ?」
「しらばっくれるつもりか!! 光さまを泣かせた罪、その身で後悔させてやる!!」
思いっきり大声で言ったのでクラスの奴らが、「おい、まじかよ」「っていうか、どうして光さまに近づけたのかしら?」と、もうだいぶ噂で広まりそうなほど勢いよくしゃべり始めた。全く、面倒なことになっちまった。そう思いながら、
「いいぜ。お前らがやるっていうなら、オモテ出ろ。お前らを後悔させてやる」
と言って、俺は窓から校庭に出た。ここは一階だから別に怪我はしない。それに、この行動に出たのなら、俺について来るだろうからな。俺の行動を見たそいつらは案の定、
「追うぞ! あいつを後悔させるために!!」
「「「「おおーーーー!!」」」」
と言ってそいつらも窓から出てきた。数を数えてみるとざっと三十人くらいはいた。
…ん? 俺を囲んでたやつらは十人くらいしかいなかったはずだが…何があったんだ? と疑問に思っていると、
「さっきの人が言った一言で、大抵の人が君を倒そうとしてるみたいだよ」
いつきが窓の方から言ってきた。まぁ、あいつが敵側じゃなくてよかったぜ。周囲の状況を確認してから、
「さてお前ら。覚悟はできてるんだろうな? 俺は容赦しないからな」
と言ったら突然「死ねぇー―!!」と言って突撃してきた奴がいたので、
「フン」
バキッッ!!!
一発顔面を殴ったらのびたのか、そのまま気絶した。後二十九人か。とぼんやりとしながら空を見ていたら、
「全員、あいつを倒すぞ!!」
『おお――――――――――!!』
と言って、全員で俺に向かってきた。数で突撃なんて、サル以下だな。と思いながら俺は、迎え撃つことにした。
「会長。校庭で乱闘騒ぎがおこってるようですが、止めに入らないと駄目なのでは?」
「そうですよー。でないと色々と言われますよー。」
「私もそうした方がいいかと」
「皆さんの意見は分かりましたけど、あの状況でどうやって止めに入るのですか?」
「こ、これは・・・・!」「うわ~」「なんだ、これは?」
そこで彼女らが見たのは、突撃してきた奴らを片っ端から倒していく人影だった。
「どうです? これでも行きますか?」
「無理ですね~」
「そうですね」
と二人はやめたが、
「だからどうした! 私は行く!!」
と言って一人は出て行った。それを見届けた三人は、
「どうしますか?」
「私達も行った方がいいと思いますよ~」
「そうですね……でも、あの人の戦ってる姿はとても絵になっていますね」
「そうですね。まるでドラマの乱闘シーンを彷彿とさせる立ち回りです。こんな人がいたのですか」
「これはもはや、“天才”と言ってもいいかもしれませんね~」
「おや? 終わったみたいですよ?」
「どれどれ」「早いですね~」
見ると、ひとりを除いて三十人が倒れていた。その時に立っていた人の顔を見たのか、
「あら? あの人は……」
「どうかしましたか?」
「いきましょう、みなさん」
「どうしたんですか~? いきなり~」
「ふふっ。あの人でしたか……楽しくなりそうです」
と言って、割と早足で教室を出て行った。
「ふむ。やはり儂の目に狂いはなかったのぅ」
学園長室にて。秘書っぽい人と、学園長は校庭を見ていた。
「一人で三十人も……どこの鬼神ですか?」
「あやつの資料を見たんじゃが、これがなかなかすごくてな」
「? いきなり話を変えられると困るのですが……どういった内容で?」
「小学校に上がる前から、警察から表彰状を貰っていたようじゃ」
「なにでもらったのですか?」
資料をパラパラとめくりながら、学園長は言った。
「それが……おお! これじゃ! これ! ふむふむ。もらった理由が『ひったくり犯の逮捕』だそうじゃ」
「しょ、小学生になる前にそんな事件に遭遇していたのですか……」
「その後も『連続通り魔犯の逮捕』『強盗犯の逮捕に貢献』とかでもらってるみたいじゃな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「これで判ることはないかのぅ?」
「随分いろいろな事件に遭遇してるみたいですね」
「そう。本宮の子が言いたかったのは、おそらくそこじゃろう」
「? と、いいますと?」
「あやつがドラマを嫌いな理由。それは実際に事件に遭遇してるからじゃ」
「憶測ではありませんか?」
「そうかもしれんが、これがしっくりとくる理由じゃ」
「そうですね。しかし、この騒動に対する処遇をどうするおつもりで?」
「どうしようかのぅ」
と学園長がつぶやいた瞬間、
パリ――――――――――――――――――ン!!!!!!
と窓ガラスが割れた。…学園長のすぐ横の窓ガラスが。
「だ、大丈夫ですかっ!? 学園長!!」
「大丈夫じゃ。あやつも、儂に直接やる気はなかったみたいじゃからのぅ」
「そういう問題じゃありません!? 誰がやったんですか!!」
「見ていなかったのか? あそこにいるやつじゃ」
「え!?」
と驚いて窓ガラスの方へ駆け寄って校庭を見ると、
「あ、あんなところから投げたんですか……?」
「そうみたいじゃのぅ」
校庭の中心に近いところからここまでは、実に百メートルくらいはある。そこからどのくらいの速さで投げたのかと想像すると、秘書っぽい人は顔を青ざめた。
「あ、ありえない。い、一体、どうやったらここまで投げられるんだ」
「投げられたものを見てみるといい」
学園長の言葉で投げられたものを見た。すると、
「木刀? ……まさか、」
「木刀を投げてここまで来ること自体驚きじゃが、あのスピードにも驚くじゃろ?」
「で? どうするんですか? これは退学ものですよ? しかも、前代未聞です」
「じゃが、彼を手放すのは大変惜しいのぅ。ひょっとすると、大変な損害になるかもしれん」
「早く決めた方がいいですよ。…と、おや? 久し振りに生徒会が動いたみたいですよ?」
「録画しておいてくれ。儂は処分について考える」
「分かりました」
と言って、学園長は彼らの処分について考え始めた。




