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アイドルッ!  作者: 末吉
三幕・第八話~最後の練習と本番~
165/205

8-3 火曜日午前

活動報告にも書きましたが応募してみました。初期に応募した時は一次も通らなかったのですがね

 で、二日目。十四日。

 巻きで撮影してスケジュール通りに撮れたらしいので、今回から俺も本格的に出演することになった。

 緊張はしていない。なんたって補習回避がかかっているのだ。緊張していたら元も子もないのだから。

 と、言う話を他の奴らに言うのだが「逆に失敗できないって緊張するだろ……」と口をそろえて言われるので「考え方の違いだな」と言っておいた。

 ちなみにだが、河川敷で修行するシーンすらもキャストが俺になった。

 寝耳に水だが、如月からの直接提案であり、また「ヒロインがあなたの妹設定なら正体隠して修行させた方が良いでしょ?」という委員長の言葉のせいで決まってしまった。というか、すでに決まっていた。知らないのは俺だけだった。

 あぶれた生徒はという質問をしたところ「あぶれたのは師匠役だからその人には不良をやってもらうわ」とのことらしい。

 そしてなんで教えてくれなかったんだと聞くと、「本宮さんが教えてると思った」と全員が言っており、いつきは「君なら自分でアドリブの設定入れた時点でそれも考慮してると思った」と言いやがった。

 つまり、俺のことを高く持ちすぎたせいで俺だけが知らない状況になった……のだ。

 が、時間は巻き戻るわけでもないので、こうなったらアドリブ全開でやってやると共演するキャスト無視の自分本位演技をしようと決めた。


 で、現在俺は廃工場で一人電話をしていた。周りにいるのは撮影してる奴等だけ。

「……あ? なんでお前があんなやつのこと好いたのか知らねぇし、興味もねぇ。そんでもってそれを俺に頼むのはお門違いじゃねぇのかよ」

『そんなこと言わないでよお兄ちゃん』

「元な、元。今じゃ赤の他人だろうが」

『血がつながっていれば兄妹たり得るでしょ?』

「……はぁ。なんだってお前の恋のために動かなきゃならねぇんだ」

『お兄ちゃんがトップなのはわかってるから』

「……こんなこと知られて振られても俺は関知しないぞ」

『大丈夫!』

 そういって電話が切られたので、俺はしばらく持っていた携帯電話を見つめてから息を吐き身近に転がっていたドラム缶を踵落としで壊してから工場の奥の方へ消えた。


「……だ、大丈夫ですよ! はい!!」

「そうか」

 少しして問題ないと言われたので戻ってきたところ、撮影班の全員が怯えていた。

 まぁドラム缶を人間が壊すなんて到底無理だからなぁと思いながら、「さっさと合流しようぜ」と提案した。

 手加減? ありゃストレス発散のためだからしてない。


 現在俺達は三つの場所で撮っている。俺のいる廃工場、如月とその両親役のいる家のセット、そして俺と電話をしていたいつきのいる家のセット。普通にとっていては間に合わないだろうということで、並行できるシーンを並行して撮影する方法を使うらしい。

 ただしこれは撮影側の編集技術がないとできないとのことなので、よほど自信があるのだろう。

 で、現在俺は時間を見てから撮影スケジュールを確認している。

 俺が次に向かう場所は……っと。

「台本の流れ的に俺は師匠役か……となると場所は……河川敷? おい待てよ。これマジでここでやんのかよ? ってことは師匠かなり胡散臭くなるぞこれ……いいのか?」

 ほぼ半信半疑。台本では確かに河川敷で修行していたシーンはあるが、一度道場に通してからじゃないのだろうか。

 なんて思いながら台本を慌てて確認したところ、どうも俺は道場で鍛えるのとは別口らしい。

 ざっと台本を読んだ俺は大体片づけを終えていた撮影班の連中に「悪い、先に河川敷の方へ行ってくるわ!」と言って自転車で撮影場所へ向かった。

「え!?」

 とか言われたが、元々俺だけ現地集合で委員長に電話つないで特別に出席確認したんだ。移動手段が自転車だし。

 今にも降りそうな曇天の中、俺は構わず自転車を走らせた。


二十分ぐらいで撮影場所についた。着いたんだが……

「急ぐ必要あったのかこれ……どう考えても俺の撮影夕方だろ」

 焦りのあまり時間の確認を忘れたようで、到着してからもう一度確認したところなんと夕方。その間俺のシーンはない。

 もう少し落ち着いて行動しないとなぁと思いながらスケジュールを見て今なら誰に電話すればいいのか確認し、とりあえずいつきに電話する。

『もしもしつとむ? そっちは?』

「終わって次の場所きちまった。今から学校戻った方が良いのか?」

『どうだろ? ここからは如月君が一人、道場で鍛えてもらうシーンの撮影があるから僕は行かなくちゃいけないけど。委員長に聞いてみたら?』

「電話番号知らん」

『だろうね……しょうがないから僕が電話して聞いてみるよ。返事はメールでね』

「ありがとな」

 そういって電話を切った俺は自転車に鍵をかけて坂になっている部分に腰を下ろして待つ。

 こうして河川の景色を眺めていると、なんというか、夏休みのことを思い出す。

 思い出したくないが、ここから見える景色がそれを呼び起こさせるのだからしょうがない。

 そのまま眺めていると、携帯電話が鳴った。いつきからのメールが来たんだろう。

 メールの内容を確認してみると、『学校に戻って良いらしいよ』とのこと。

 ただ現在時刻が昼になろうとしているので『コンビニ寄ってから学校戻るわ』と返信して俺は自転車をこぎだした。


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